堕ちた死神
話が脱線してしまったがようやく死神達は本題へと本当に入っていった。
「それでモルテ、犯人を見たのか?」
「だからレナードからこれを借りているんだ」
アドルフの言葉にモルテはテーブルに置かれている大量の資料を叩いた。
その資料の多さにマオクラフはレナードに尋ねた。
「父さん、こんなにあったの?」
「モルテがシュミラン以外の死神リストを出してくれと言ったからな」
「シュミラン以外って、まさか国外!?」
「その可能性もあるという訳か」
モルテの希望であるだけ出したというレナードにリーヴィオとレオナルドが驚いた様子を浮かべた。
「念のために私が知る流れも調べたが、その中にはいなかった」
「だっからぁ俺の知る流れの情報をぉよこせってぇ連絡ぅ~したのかぁ~」
「その通りだ。そして思った通りというわけだ」
「思った通り?」
一体何が思った通りなのかと全員が資料を読むことを再開したモルテへと視線を向けた。
「今回の奴はどこかに足をつけている」
「根拠は?」
「私よりも弱いからだ」
「いや、理由としては弱いぞ。それに堕ちた死神相手に弱いと言えるのはモルテくらいだ……」
理由がモルテ基準で完全に引いてしま死神達。
「あの、店長が諦めたってどういうことですか?」
そんな中で何も知らないディオスが尋ねた。
モルテの言葉から犯人はモルテよりも弱いのにモルテが追うのを諦めたと言う。
考えを変えてしまえばモルテはいつでも犯人をどうすることも出来たというわけだ。だが、モルテはそれをしなかった。その理由が何なのかディオスは分からなかったのである。
だから、モルテ以外の死神達は驚いた様子を浮かべるもすぐにモルテが言っていないのだと思い、代表してレナードがこの際現状で起きていることを全て説明しようと始めた。
「結論から言うとだな、情報無しに挑めば殺され可能性があるからだ」
「ちょっと、殺されるって……」
「先ずは話を聞け!」
殺されると聞いて慌てたディオスをアドルフが押さえ込んだ。
死神の存在を知っており、死神と関わりを持つディオスにこの話は重要なのである。
「死神には戦うためにそれぞれ特化した力がある。それを知らなければ世間が誤解している死神みたいに命を差し出すことになる。堕ちた死神は特にだ」
「堕ちた死神?」
「今回の犯人のことだ。人殺しをした死神のことを死神の間では堕ちた死神と言う」
そう説明するレナードだが実際はもっと残酷なもので全てを話していない。ディオスに説明するために堕ちた死神になる過程を飛ばして危険性を話してているだけでどれだけオブラートに包んで言っているのか知っているのはこの中では死神だけである。
「堕ちた死神は危険だ。構わず力を振るうから対応をする為に力を知る必要があるんだ」
「だから店長は追うのを諦めたんですか?」
「そうだ」
堕ちた死神の危険性を理解したディオスを見てレナードはその堕ちた死神と対峙したモルテを見た。
「それで、力は分かったか?」
「ああ。それと、見つけた」
モルテはちょうどいいタイミングと先程見つけた資料の一枚をレナードにも見えるように持ち上げた。
「ジーナ・カルロッテ・ザイン。国籍はパシオン。アマンテの死神だ」
「って、女!?」
その資料に書かれた情報と性別にマオクラフが驚いた声を上げる。
「なっかなかの美人だねぇ~」
「確かに」
「リーヴィオそんなこと言っていいのですか?」
「クラウディアに知られても知らないからな」
「それを言うな!」
堕ちた死神ジーナの写真を見てガイウスの言葉にリーヴィオが同意するも、レオナルドとアドルフの冗談に撃沈してしまう。
「ところでこれ、俺が女装する意味あった?」
「ないとは言わない。狙いが女だからな」
マオクラフのふとした思い出しにアドルフは完全にないとは口には出さなかった。
「モルテ、本当か?」
「間違いない。情報通りこいつは後方支援に特化している。だが、気配を消すのは相当のものだ。襲われた時は気配がただ漏れで話にならんかったが逃げる際に展開を自身の体に纏わせ存在自体を消えたように錯覚させるのは十分なものだ。レナード程ではないがな」
モルテとレナードは写真には目をくれずジーナについて語り合っていた。
「そうなると問題は……」
「誰が相手をするのか。そう言いたいのだろう?」
苦渋の表情を浮かべるもレナードにモルテが先回りをして今後の方針を口にした。




