同行の訳
「待ってファズマ!?どうして俺が!?」
ファズマの言った言葉に驚くディオス。
それもそのはず、死神が営んでいる葬儀屋で従業員として働いているが死神の弟子になったわけではない。あくまで知っている程度である。
「ついて行くなら誰でもいいんだがな」
「だったらファズマが行ったら?」
「ディオお兄ーさんが行かないならあたしが行く!」
「ミクはダメだ」
「何でぇ!」
「こういうことだ」
そう言ってファズマは呆れた表情を浮かべた。
確かに事件が起きている今、夜中にミクを出す訳にはいかない。それは分かった。
「だけど、どうして店長と行く必要があるの?」
まだ肝心なことを聞いていないディオスは尋ねた。
「そりゃ犯人が店長を襲わないようにするためだ」
その理由にディオスは顔を青くした。
「待って!襲わないようにって、追い払うこととか絶対に無理だから!」
「何考えてんだ?んなことする前に店長が何とかしている。俺は店長と、一緒に、行けと言ってんだ」
ディオスの反応にファズマは重要な部分を区切りながら言った。
「店長に襲ってきた死神、どうもおかしいんだ」
「おかしい?」
「そう、俺が来た途端に逃げやがった」
死神が襲ったというだけでも驚いているのにそれがどういうことかとディオスは考え始めた。
「ああなった死神は問答無用で襲ってくるんだがそれをしてこねかった。しかも、店長よりも弱くすぐに殺せる俺を殺さねえでだ」
「何か、とんでもないことを聞いたような……」
どんな死神かは知らないがとにかく危険で、命も危ういことが分かり遠い目をするディオス。
「だから思ったんだ。あれは目撃者がいたら襲わない」
「それって、二人以上ならまず襲われないってこと?」
「そうだな」
ファズマが何故ディオスをモルテと共に行かせようかと知るとディオスは腕を組んだ。
はっきり言ってそれが理由で襲われないのか分からないし怖くも感じる。それに、偶然そうなっただけでこれまた偶然に襲われなかっただけなのではと思う。
「それなら全員で行ったらいいんじゃ?」
そう思って言ったディオスの言葉にミクが目を輝かせた。が、
「ダメだ」
「何でぇ!」
ファズマがダメ出しをし、ミクが反発をした。
「誰かが店番をしないといけないからだ。それは俺とミクでやる」
「ヤダー!」
「だから今夜は頼むぞ」
ミクの反発を無視してディオスに予定を押し付けるファズマ。
「私はいいと一言もいってないが。私は襲ってこられても問題ないが」
「店長がよくても今回は無事に集会に行けるようにレナードさんの指示に従ってください」
「安心しろ。冗談だ」
「冗談でなくてもやれる実力がある時点で冗談じゃ通じません!」
モルテの一言にファズマはたじたじになっていた。
「ねえ、どうしてダメなの?」
一方で、集会に連れて行ってもらえないミクは頬を膨らませてファズマに問いただしていた。
「留守番もしっかりとした仕事だ。嫌なら……」
「分かった……する……留守番するよぉ~!」
話の流れから苦手な人物の名前が言われると思ったミクが折れて店にいることになった。
「よし。それじゃ、今晩は気を付けろよ」
「断れなかった……」
結局、話の流れで死神集会にモルテと共に行くこととなったディオスであるが、死神集会で驚くことになるとは思ってもいなかったのである。




