豹変
ディオスは目を丸くしていた。
どうして葬儀屋の従業員がここにいるのか。そして、足元に倒れている男達は何なのか。聞きたいことがたくさん出てくる。
「ディオどうしたの?」
ディオスの様子がおかしいと感じてシンシアが扉から顔を出した。
「こんばんは。葬儀屋フネーラのファズマです」
シンシアと顔が合いファズマは自己紹介をした。
「えっ!?葬儀屋ってディオが受けた……」
「はい」
突然の来訪に戸惑うシンシアにファズマは頷いた。
「えっと、どうしてここに?」
「店長から行くようにと言われて来ました」
それを聞いたシンシアにある事が思い浮かんだ。
「もしかして、採否について……」
「店長言ってないのか!?」
目を輝かせて尋ねたシンシアだが、それを聞いたファズマは驚いて頭を抱えた。
どうやら別件らしいく期待が外れてシンシアは肩を落とした。
「それよりも早く逃げた方がいい」
「え?」
「このアパート囲まれてます」
ファズマの言葉の意味が分からずディオスとシンシアは顔を見合わせた。
ファズマは二人の様子に仕方がないと溜め息をついた。
「ここに倒れている借金取りの仲間がディオスさんと妹を誘拐する為に包囲網を敷いているんです」
「どうしてディオとユリが?」
緊張感のないファズマの説明にシンシアはユリシアを抱きしめながら尋ねた。
「返せないなら身体で返せって事です。借金をした場所は違法とされている身売りも平然とやっている。恐らく、ディオスさんと妹を差し出せば借金を半分に減らすと差し出しを要求、もしくは誘拐を企んだ。あ、誘拐の場合は半分にはなりませんが」
ファズマの言葉に恐怖を感じシンシアはユリシアを強く抱きしめ、ユリシアはシンシアが恐怖を感じてか、同じく恐いと思い抱きついた。
ディオスはその話を聞いて意識が遠のくように感じた。
「少し時間はかかりましたが後ろで誰が手を引いているかは分かっています。あとはここから逃げるだけです」
「に、逃げるって包囲網敷かれているって言いましたよね?逃げられるんですか!?」
「そこは三人の頑張り次第です。少なくとも今はここからは逃げないといけない」
ディオスの言葉に突然真剣な表情になるファズマ。そして、廊下の真ん中で三人を庇うように立った。
「増援が近くまで来ている」
直後、階段から複数の貧相の悪い男達が現れた。
男達は目標である母子三人を見つけるが、倒れている仲間も見つけて叫びだした。
「お前ら何しやがった!」
「通行の邪魔をしやがったから軽く捻り潰しただけだ。それに、そんな大声出さなくても聞こえている。もう少し静かにしろ」
叫んだ男達にファズマは今までの真面目な態度と丁寧な口調を一転させた。
ファズマの豹変を見た母子三人は驚いて言葉を失った。
「関係あるか!そこをどけ!」
「どけと言われてどく奴はいないと思うが?」
三下臭のする男達にファズマの目がギラリと光り、笑った。
「なら力ずくだ!」
「走れ!」
叫びながら走ってくる男達にファズマはディオスに叫んだ。
「だけど……」
「足手まといだ!」
躊躇するディオスにファズマは一掃した。今は敬語を使う暇もない。
ディオスは何か言おうとするも口を閉ざし、シンシアの腕を握った。
「行こう!」
(すみません!)
その腕を引っ張り走り出した。心の中でファズマに謝罪をしながら。
ファズマは近づきつつある男達を前にして構えた。
「そこをどけぇぇぇ!!」
男が一人、ファズマに殴りかかった。
「うるさい」
だが、ファズマは呟くと小さな動きで避けると鳩尾に思いっきり拳を叩き込んみ、一瞬にして男の意識を刈った。
「お、おい……」
仲間が倒れるのを見て走っていた男達は足を止めたじろいだ。
「先に手を出して来たのはお前らだ。覚悟くらい出来てんだよな?」
たじろぐ男達にファズマは冷酷な表情を向けた。
「ま、まて、話せば分かる……!俺らはあいつらから……」
「うるせえつってんだろ!」
その言葉を最後に男達はファズマにより完膚なきまで叩きのめされた。




