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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
4章 葬儀屋である理由
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閑話 モルテとファズマ

本日は閑話三本立て。8時、14時、21時の投稿です。

 深夜、一日の営業が終わった葬儀屋フネーラはこの日も同じ様に終わろうとしていたが、リビングではファズマがモルテに真剣な表情で尋ねていた。

「店長、聞いてもいいですか?」

「ほう、珍しいな」

 突然切り出してきたファズマの言葉にモルテは珍しそうな表情を浮かべた。

「どうしてあの時、俺を警察に突き出さず店に雇ったのですか?」

「またそれか」

 ファズマが聞きたいと言った内容にモルテはもう何度も尋ねられているだけに呆れた様子を浮かべた。

 ここ最近はなかった為に何とも思っていなかったが、改めて尋ねられるとまたかと呟いてしまう。

 何故ファズマが今になって尋ねたかと言うと、ディオスに自分の過去を話したのが切っ掛けである。

 自分の過去を話して改めて何故モルテが盗みで入った自分を警察に出さず店に雇ったのか、赤の他人で当時ゴミ以下とまで言われていたスラム街住人であったのに何故なのか分からないままであったからだ。

 何度もモルテにこの事について尋ねても、『人手が足りなかったからだ』としか言わない。

「前にも言ったが、店の補強と改装に人手が足りなかったかからだ」

 やはり前と同じことを言ったモルテ。

「本当にそれだけですか?」

 そして、いつものやり取りが始まった。

「それだけと言っているであろう」

「本当にそれだけですか?それだけで匿ったんですか?」

「匿ってはいない。私だけでは大変と理解をしていた。だからファズマを雇い入れたのだ」

「それなら大工を雇ったりした方が早く済むと思いますが?」

「ファズマも知っているだろう。ここが既におんぼろになっていたことは。そんな建物をどこが好き好んで改装をする」

 非常に残念な話をするなら、モルテが言ったおんぼろはその通りである。

 モルテが店をもらい新たな店長となった時、あまりにもおんぼろ過ぎる店の外観に言葉を失ったのである。そして、近いうちにアシュミスト内に店を移動することも決めていたのである。

 話は平行線を維持したまま進んだが、ファズマがいつも以上の気迫で聞いてくるのに気がついたモルテはつついた。

「しかし、一体どうしたと言うのだ?そんな真剣に聞いてくるとは」

「店長が本当のことを言わないからです」

「私は正直に話しているが?」

 やはり食い付きが違った。

「それにしても、何故いきなり聞こうと思ったのだ?」

 モルテに言われファズマは一瞬言葉に詰まったが、正直に言った。

「ディオスに話してからどうして店長が俺を助けたのか分からなくなったからです」

「ほう」

 なるほどと思いつつも面白いことを聞いたとモルテは僅かに驚いた表情を浮かべた。

「はい、次は店長です。どうして俺を助けたんですか?」

「ここで話を振るか」

 話を逆手に今度はファズマが尋ねた。

 さすがに予想外であったモルテは何度考えても出る答えは同じ。

「最初に言って起きますが、手が足りなかったとか何となくといった曖昧な答えはなしです」

 ファズマに先回りをされて小さく舌打ちをしたモルテ。

(だから、何度考えようとそれ以外はない)

 いつもの言っていることだけにモルテはどうするかと考え始めた。

 隠すのは出来るが嘘は苦手である。冗談を言ったところでファズマはさらに問いつめこちらが疲れる。

 どうするかと考え、仕方がないと折れた。

「親のいない苦労を知っている。それでは駄目か?」

「え?」

 モルテの言葉にファズマが予想外すぎる回答に驚いた表情を浮かべた。

 モルテが嘘が苦手であることを知っているから嘘ではないことは分かるが、一瞬だけモルテの過去を聞いたような気がした。

「店長、親がいないって……」

 問いつめようとした時、モルテが前ぶりもなくファズマを通りすぎた。

「もうそろそろ寝ろ。明日も早い」

 そう言ってモルテはファズマから逃げるように寝室へと向かった。

 ファズマはモルテが自身を助けた理由、それが同じ境遇であったからなのかと考えてた。


まさかの100話で4章完です。

気がついたら100話だったのでビックリです。

前に活動報告をしたように資料作りをするために次回投稿は8月17日です。

細かい説明は明日の活動報告に載せます。

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