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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
プロローグ
1/854

真夜中の葬儀屋

「ハァ…ハァ…」

 真夜中の暗闇。三日月が雲に隠れようとしているそんな時に印象の悪そうな一人の男が倉庫街で息を切らして肩を上げていた。

 印象の悪い男の目線の先には別の男がぐったりと仰向けに倒れている。顔にはアザだけでなく出血が至るところにあり服装も乱れている。

 息を切らした男が思いっきり殴り倒したからだ。

 理由なんて何でもいい。とにかくイラついていた印象の悪い男は気分を晴らしたいが為に近くをたまたま歩いていた一人の男に無言で殴る蹴るの暴行を加えた。

 相手がやられていく様は印象の悪い男には清々しいものであり、優越感に浸たるものだった。

「ざまぁ……!」

 印象の悪い男は倒れている男を見下して言った。

 だが、倒れた男はピクリとも動かない。

 無視されたような、ムカつくような感情が急に印象の悪い男の胸に沸き上がる。

 再び踏みつけてやると足を上げた。


「待て!」

 突如、背後から鋭い制止をかけられた声と同時にパアッと印象の悪い男に向けて光が当てられた。

 警察(サツ)かと印象の悪い男がそこに目を向けると美男子一人と子供が一人立っていた。

「悪いがそれ以上傷を付けるのは止めてもらおう」

 美男子が印象の悪い男に向けて不機嫌そうに言い放つ。

「お前ら警察(サツ)だな!」

「警察?笑わせるな」

 印象の悪そうな男の問いに美男子が面白くないという様子で言う。

「師匠~」

 その時、背後から子供の声が聞こえたことに印象の悪い男は驚いて振り返った。

 いつの間にいたのか、子供は灯りが着いたランプの明かりを倒れている男に照らしていた。

「この人まだ生きてるよ~」

「ほぅ」

 子供の言葉に美男子が驚きの声を上げた。

「ここまで殴られ蹴られたというのにまだ生きているとは。奇跡に分類されるな」

 どこか他人事のように言う美男子は子供へと向けて歩き出した。


「てめぇ!」

 呆気に取られていた印象の悪い男は近寄って来る美男子に気づいて我に返ると殴りかかった。

 だが、美男子は印象の悪い男の腕をすり抜けるようにして当たらない様に僅かに顔を反らし、いつの間にか子供の側まで来ていた。

 再び呆気に取られる印象の悪い男。

「まだ間に合うんじゃない?」

「ダメだ。例え医者に運んだとしても現代の医療技術では助からん」

 そう言うと片眼鏡を左目にかけて倒れている男の側にしゃがみこみ、子供からランプを受け取り真剣に男を見始めた。

「顔の骨にヒビ……歯が3本抜けているな……」

「入れ歯が必要?」

「ああ」

「待ておい!」

 のんきに倒れた男の様子を確認する美男子と子供に再び我に返った印象の悪い男が叫んだ。

「うるさい」

 だが、美男子はそれを一掃すると倒れている男の服越しに手を当て状態の確認を続ける。

「黙っていられるかよおい!ガキと一緒にぶっ殺すぞ!」

 印象の悪い男が叫んだ次の瞬間、

「ガッ!?」

 いつの間に側にいたのか、美男子の右拳が印象の悪い男の顔に見事に入った。そのまま印象の悪い男は仰け反りながら倒れた。

「てめぇ……」

 殺してやる。そんな感情が印象の悪い男に浮かんだ。だが、

「私を怒らせるな!」

 知ってか知らずか美男子は見下ろすように冷たい口調で呟いた。

「師匠の言う通りにした方いいよ~」

 美男子の背後に隠れながら子供が援護する。

 しかし、この言葉が印象の悪い男の復讐心を燃やした。

「殺す!」

 印象の悪い男は立ち上がると美男子に向けて拳を振りかざした。

 だが、美男子は意図も簡単に避けると腹に膝蹴りを入れた。

 印象の悪い男の呻き声を無視して喉元を掴むとそのまま横へと倒し込んだ。

「だから言ったのに……」

 一連の流れに子供は印象の悪い男が気の毒そうに呟いた。

「気が変わった。帰るぞ」

「えぇぇぇぇぇ!!」

 印象の悪い男の喉元から手を離して呟いた美男子の言葉に叫んだ。

「切るところを見たいからと連れてきたがこの男はうるさすぎる。気が散る」

「こんな夜遅くまで頑張って起きたのにぃ~?」

「また今度だ」

「師匠~!」

 もう取り合わないぞと言う美男子に子供は駄々をこねるが構ってはくれなかった。


「1つ忠告をしておこう」

 美男子は咳をしている印象の悪い男に投げ掛けた。

「そこの男をこれ以上傷つけるのを止めてもらおう。仕事がらこちらに回ってくるまでに時間がかかり腐敗されるのはよろしくない。もちろん、傷だらけではこちらの仕事が増えてしまうからな。」

 そう言うと美男子は帰るために歩みだした。と思いきや、突然足を止めた。

「そうそう。忠告を聞くなら土産をやろう」

 そう言うと美男子は笑みを浮かべながら振り返った。

「貴様は今夜、死ぬ」

 意味が分からない言葉に印象の悪い男は美男子の表情を見いるようにして固まった。

「師匠、いいの?」

「構わん。どのみち決まっている事だ。少々時間がずれたとしても結果は変わらん」

「待ててめぇ!ふざけんな!」

「ふざけてなどいない。今日、貴様はこの倉庫街で死ぬのだからな」

 態度を崩さない美男子に初めて印象の悪い男は恐怖を感じた。

「てめぇ……何者だ……」

「何者だと?私は……」


 その時、雲に隠れていた三日月が姿を現し微弱な光を放った。その光はランプの明かりと混ざり、初めて印象の悪い男は美男子の容姿を見た。

 裾の長い黒コートを羽織り、赤髪を馬の尻尾のように束ねている。白い肌がいっそうと赤髪を赤く映す。そして、右目に長く垂らした前髪が風になびいた奥には、眼帯が覗いていた。

「葬儀屋だ」

葬儀屋と名乗った美男子は不適な笑みを浮かべた。

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