6.電波少女は、自ら墓穴に突っ込むようです
ユズが、この公爵家でマナー他の勉強を習うようになってなんとか様になってきました。
これは、豆腐王子のプライドを傷つける日が近づけたということですね。
彼女は、『ヒロイン』というだけあってスペックが高いです。
見る見るうちに吸収していきました。
少女マンガでは、一切そういうことをしなかったですから、ここまで良い結果になったのは予想もしていなかったです。
現在では立派に、アイザックのプライドを見事に傷つけるレベルに達しました。
そして、とうとうユズが社交界で豆腐王子とファーストコンタクトを取る日がやって来ました。
この日のために、私にスパルタ教育を施したロッテル夫人にユズが教えを請うてたのです。
ロッテル夫人の教えは完璧で、今ではユズは社交界で人気の令嬢となりました。
彼女が持つ私や高位の貴族令嬢たちとの繋がりも魅力的に映り、特に男爵家や子爵家からの婚約の申し込みが鬱陶しいほど来るみたいです。
何が目当てか分かりやすいので、アーバクロンビー男爵がすべて断ってるそうです。
私は一応、豆腐王子の婚約者なので彼にエスコートされて、会場に入ります。
その際に、豆腐王子はユズのことを引っ切り無しに根掘り葉掘り聞いてきますが、「お会いする時の楽しみが減るのではないのですか?」と言って笑顔で誤魔化しています。
ここで彼女の努力を言ってしまうと、豆腐王子のプライドの傷つけ度が低くなってしまいますからね。
『自尊心傷つけ隊』の隊員としては、そんなことはできません。
思う存分に、ユズに豆腐王子のプライドを傷つけてもらわないと!
そうしないと、彼女の努力が無駄になるかもしれませんし。
それだけは、避けなければいけません。
しかし、この豆腐王子は常識がないのでしょうか?
婚約者に対して、好意が丸分かりな態度で別の女性のことを根掘り葉掘り聞くなんて。
正直なところ、豆腐王子を本気で見限ろうかと思っています。
会場でユズに会うと、豆腐王子は私に対して犬などの愛玩動物を追い払うような仕草をして、追い出そうとしました。
これには、周りの貴族たちが顔を顰め、お母様とお父様は激怒しているようです。
婚約者に対する態度とはいえないですしね。豆腐王子の『常識』は赤子の時からやり直さないといけないほど、大変残念になっているようです。
ちなみに、アイザックはその様子を見て嬉しそうに笑っていました。
私はユズにアイコンタクトを取り、豆腐王子に「失礼します」と言ってこの場を離れました。
これからが、ユズの戦いです。
はじめは豆腐王子は笑顔でユズに接していたのですが、段々と豆腐王子がユズが降る話題についていけなくなり、お顔が険しくなっていきました。
最後には、豆腐王子は真っ赤な顔をして親の敵のようにユズを睨みつけていました。
プライドが傷つけられ、何も言い返すことができないだけで、『親の敵のように睨みつける』だけとは、豆腐王子は、芸風がありませんね。ガッカリです。
王族なのだから、ポーカーフェイスぐらいしろやとも思います。
豆腐王子は、王族なのにポーカーフェイスができない...? できない!? マ ジ で ?
そういえば、思い当たる節が数々ありすぎる。
私の婚約者だからといってフォレスター公爵家が尻拭いし、王族だからといって王家で尻拭いされ。アレっ?、あの豆腐王子って尻拭いばかりさせているじゃないですか?
これじゃ、『豆腐王子』ではなく『尻拭い王子』になってしまう!?
私が思考の海に浸っている間に、ユズがこちらに来ました。
「やったわよ、イザベラ。豆腐王子に目をつけられた時はどうしようかと思ったけど、見事撃退したわ!これで、人生を棺桶に突っ込まなくてよくなったわよ」
「おめでとうございます」
「うん!」
ユズはものすごくいい笑顔で、返事をしました。
その横で、少女マンガの『あなたに恋して、心を奪う』のヒロインとクズな豆腐王子のの出会いのシーンが再現されていました。
私とユズは吃驚です。
ヒロイン以外の少女が何も知らなければ名シーンなとこを再現しているのですから!
残念なことにその少女は美少女ではありません。平凡顔です。
あくまで、平凡な顔の文句を言っているわけではありません。
美少女だから、あのシーンがインパクトがあったんだなと思い知っただけです。
彼女は、ユウコ・エレットリカ伯爵令嬢。
とある日が来るまでは伯爵令嬢としての立ち振る舞いが完璧だったらしいのですが、高熱を出して寝込んだ翌日からはおかしな言動が目立ち、マナーができない令嬢になってしまったらしいです。所謂、『電波少女』になってしまったようです。
少女マンガの世界に転生とは、人によっては残酷な現実ですね。
私とユズにとっては、その恩恵かもしれないので期待したいです。
その後、聞いたところによるとユウコ・エレットリカ伯爵令嬢は『あなたに恋して、心を奪う』のヒロインの行動を再現して、豆腐王子との距離を縮めて行っているようです。
心に何かグサッと刺さるような感じがするのは、気のせいだと思いたい!!!




