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22. お花見

真冬にお花見の話…違和感がものすごくて申し訳ありません…。

「思ったより桜が咲いていて良かったね。」

「ここは北向きだもんね。それに散りゆく桜も悪くないよ?子連れだと肌寒いより暖かい方が絶対良いし。」

「それにしても…パパたちはどこにいるんだろうねぇ?」


 4月の2週目の日曜日。桜の開花から2週間経っており、すでに葉桜になっている桜の木もたくさん見かける。けれど、比較的遅くまで桜が咲いているという公園があると聞いてお花見にやってきた。

 メンバーは山内くん、舞ちゃん、彩ちゃん、岡崎くん、ゆかりちゃん、みどりちゃん、貴子と私。春ちゃんは遅れて参加予定。


 早朝から山内くん岡崎くんのパパコンビと貴子がビール片手に場所取りをしてくれているはずなのだが、なかなか見つからない。お花見のピークは先週で、ピークは過ぎているものの、同じ事を考えて場所取りをしている人達は多い。大体の場所を聞いているとはいえ広い公園なので見つけるのは結構難しい。先に舞ちゃん親子、ゆかりちゃん親子と合流していて正解だった。私一人では迷子になっていたに違いない。


「おーい、こっちだよー!!」

「舞、そっちじゃねぇよ、反対だ、反対!」


 そんな時貴子と山内くんの声が聞こえる。そんなに遠くはなさそうだけれどどこだろう?


「あ、パパだ!」

「ほんとだ、みどりのパパもいた!」


 彩ちゃんみどりちゃんがそれぞれのパパを見つけ無事合流。子どもって意外と周りをよく見てるよね。


「あれ?しゅんちゃんはいないの?」

「彩、パパより春太郎がいいのかよ?」

「うん。だってパパにはいつもあえるもん。」

「彩ちゃん、春ちゃんはまだなんだ。でも後からちゃんと来るからね。」

「ほんと?はやくあいたいな~。はやくこないかな~。」


 場所取りをしてくれていた3人に合流するなり彩ちゃんが春ちゃんの事を口にしたので、やたらと残念がる山内くん。


「彩ね、浅井くんに会えるのすごく楽しみにしてたんだよ?この前うちで遊んでもらってすっかりお気に入りなの。」

「みどりもはやくしゅんちゃんにあいたいよ~。」


 春ちゃん、幼女に大人気。モテモテです。山内くん、岡崎くんは非常に面白くなさそうな顔をしているので、舞ちゃん&ゆかりちゃんと3人で笑ってしまった。


「さっき連絡もらって、12時半頃になるから先に始めててだって。」

「じゃあそうしようぜ~。ビールと乾き物だけじゃ味気ないもんな。」

「そうだそうだ、俺ら場所取り頑張ったもんな。」

「こーすけがそれ言う?本当に朝から頑張ったのは私と岡崎くんだよぉ?」


 もうすでにほろ酔いの3人。話を聞けば、場所取りのために貴子と岡崎くんは朝の6時からここに来ていたとか。山内くんだって8時頃には来ていたらしい。

 そんな3人のために、舞ちゃん、ゆかりちゃんと私で持ってきたお弁当を広げる。


「だいたいどれが誰のか分かるよな。」

「そうだよな〜、個性っていうか家のカラーが出るよな。」


 山内くんと岡崎くんが言うように、三者三様のお弁当。

 舞ちゃんのお弁当は彩ちゃんが食べやすいように全体的に一口サイズで作られていて、クマの形のいなり寿司とか、ハート型の卵焼きとか、星型の人参やパプリカ、プチトマトはピックでさくらんぼに見立ててあるし、ウィンナーも凝った飾り切りがされていて見た目がすごく可愛い。

 ゆかりちゃんのお弁当は、岡崎くんとみどりちゃんが大好きだという大量の鶏の唐揚げを中心に、お野菜もたっぷり摂れるように彩りよく詰められたお弁当。みどりちゃんのために小さめに作られたサンドイッチも美味しそう。

 私の持ってきたのは…完全に女子ウケを狙ったおつまみだ…。メニューはほぼ貴子のリクエスト。メインはスモークサーモンとほうれん草のキッシュ。それに、カプレーゼ、シーフードとオリーブのサラダ、アボカドとフルーツのサラダ、ニンジンのマリネに、カマンベールチーズのフライ。生ハムグリッシーニとか、ブルスケッタはバケットと具を別々で持ってきたりして…。


「麗、リクエスト通り作ってくれてありがとー!嬉しいー!けどこんなにおつまみ充実してたら飲みすぎそうで怖いわ…。」

「麗ちゃんの、美味しそう!!」

「相変わらずオシャレだね〜。ところで、浅井くんの分取っておかなくて大丈夫?なくなっちゃうよ?」

「ありがとね。春ちゃんのはあらかじめ別にしてあるから大丈夫。キッシュも小さく作ったのが入ってるし。」

「そういうわけで春太郎は気にせず食おうぜ?」

「そうだそうだ。というわけで、いっただきまーす!」


 春ちゃんが間に合わないのは残念だけど、みんなで一緒に飲んだり食べたりするのは楽しい。舞ちゃんとゆかりちゃんは子どもが一緒だからと飲まない。春ちゃんは車だし、昨日嫌という程飲んでいる筈で、今日は間違いなく飲まないと思われるので私も飲まない。


「なぁ、麗。春太郎最近土日忙しそうだけどなんかあるのか?俺、何回か誘って断られてるんだよ。」

「えっと…実はね…。」


 岡崎くんにそう聞かれ、実は私はお見合いをする予定だったが、それをどうにか断った事、前回山内家にお邪魔する前に私の母と姉夫婦に春ちゃんを紹介した事、その翌週から春ちゃんと一緒に3回父を訪ねたが話を聞いてもらえなかったこと、その翌週に春ちゃんが1人で行って追い返されたものの、先週からお酒を飲みながら話を聞いてもらえるようになり、昨日も夕方から父の所へ行き、結婚を前提にお付き合いする事を認めてもらえるようお願いしているが認めてもらえず、記憶がなくなるまで飲まされた事を話した。


「マジか…確か麗の父ってすげぇ酒強いんだよな…。」

「経験者であるお義兄さんの話だと、酔わせて本性を暴いてやろうという父の魂胆らしいんだけど…。」

「春太郎気の毒過ぎ…。博之の事があったからきっとお義兄さんの時よりも厳しいんだろうな…。」

「春太郎…あいつ尊敬するわ…。今まで散々『残念!』だってネタにしてきて申し訳ないな…。」

「つうか本当に残念な奴に『残念!』なんて言えねぇよ…。すげぇいい奴だからこそネタに出来るんだもんな…。」

「浅井くん、本当に見直したよ…。早く許してもらえると良いね。それなのに、この前結婚の事聞いてごめんね。」


 その時、春ちゃんからの着信があった。公園の駐車場に停めたけれどどこに行けば良いのかとの事だった。


「春ちゃん着いたって。ここ分かりにくいから私、駐車場まで迎えに行ってくるね。」

「しゅんちゃんくるの?あやもいっしょにおむかえいきたい〜!」

「麗ちゃんがすぐ連れてきてくれるから彩は待ってなさい。彩がいたらお邪魔だしね。」

「え〜?あやはおじゃまじゃないもん!あやもいくの〜!」

「舞ちゃんさえ良ければ私は構わないよ?多分春ちゃんも喜ぶし。」

「本当?ごめんね。彩、絶対麗ちゃんの言う事聞くのよ?」

「は〜い!うららちゃん、おむかえいこう!」


 私は彩ちゃんと手をつないで駐車場に向かった。彩ちゃんはすごくご機嫌で、春ちゃんはまだ?どこ?を連発していた。


「あ、しゅんちゃんだぁ〜!」

「春ちゃん、お疲れ様。」

「麗、ただいま。彩ちゃんも俺の事迎えに来てくれたのか?」

「うん!あやね〜、はやくあいたかったの!」


 春ちゃんはそんな彩ちゃんを嬉しそうに眺め、「肩車してやろうか?」と聞いた。もちろん彩ちゃんは大喜び。春ちゃんの頭上で上機嫌だ。桜の花に手が届くと嬉しそうに話している。




 それは、3人で歩いてみんなの所に向かっている途中のことだった。


「あれ?浅井さんじゃないっすか?奥さんと子どもがいるとか初耳ですよー?」

「あ、土屋じゃん?お疲れー。そうそう、うちの妻と娘。……だったら良いなとは思うけど、残念ながら友人の娘と彼女。数年後は妻になってる予定だけどな!」

「…今、一瞬信じちゃいましたよ…。先約があって花見来れないって聞いてたんすけど、デートだったんですか?」

「いやぁ…残念ながらデートでは無いよな…。他の用事済ませて、今やっと来たとこだし…。高校時代の友人とみんなで集まってんの。ちなみに高校の時の同級生で今は俺の自慢の彼女、麗。」

「初めまして…。いつもお世話になっております…。」

「麗、こいつが例の…上司に間違えられる土屋と…ごめん、名前なんだっけ?」


 春ちゃんが声をかけられたのは、春ちゃんの部下だった。私が頭を下げたらやめて下さいよ〜と言われ、何故だろう?と思っていたら、よく一緒に仕事をしていて、春ちゃんが部下に間違えられるという、噂の老け顔の土屋さんだった。本当に見た目は春ちゃんの方がずっと若く見える。見た目年齢35歳は堅い。40歳と言われたらそうなんだ…と納得してしまいそうな位。

 それと、土屋さんの少し後ろにいる私達と同年代らしき小柄な女性。何処かで会ったことがある?ううん、違う。…誰かに似ている?…けれどそれが誰だか思い出せない。


「…野沢です。」

「そうだった、野沢さんだ…悪りぃ、ど忘れしちゃってさ…。」


 野沢さんと名乗った彼女はなんだかすごく悲しそうな顔をしていた。


 もしかして………。

 瀬田さんが言っていた…春ちゃんの事が好きであろう女の子のうちの1人なのかもしれない…。


 それに気付いた瞬間、何故かわからないけれど、あの時の事を思い出してしまった。

何故、今ここで…もう平気になったはずなのに…忘れたはずなのに…。


「ね〜、しゅんちゃん、うららちゃん。あやつまんない!はやくいこう〜!みどりちゃんもまってるよ!」

「ごめんごめん、そういうわけでまた明日な!」


「じゃあな」と手を振り歩き出した春ちゃん。私も2人に慌てて頭を下げて、春ちゃんを追いかけ、みんなの待つ場所へ向かった。




 彩ちゃんに本当に助けられた。今もなんだか苦しいけれど、少し落ち着いた。


 冷静になった私は、彼女が誰に似ているのか…気付いてしまった。

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