105. 新婦の手紙
2話同時投稿しております。
先に【104.春のうらら】をご覧いただければ幸いです
***
お父さん、お母さん。今日までの31年間、本当にありがとうございました。
沢山の人達に祝福され、今日という日を迎えることが出来たのはお父さんとお母さんのおかげです。
泣き虫で、怖がりで。だけれど、ワガママな末っ子の私はお父さんとお母さんに心配と迷惑を迷惑かけっぱなしだった事と思います。
「31年前、あなたが産まれたのも、今日の様によく晴れた、麗らかな日だったのよ」
今朝、1番に交わしたのはそんな言葉でしたね。
小学生の頃、名前の由来を調べてくるという宿題が出た時、「どうして私は麗という名前なのか?」と聞いたら、「とてもよく晴れた麗らかな日に産まれたから」だと言われました。
当時、私が『雨の日に産まれていたら違う名前だったのか?』と尋ねたことを覚えていますか?
私の質問にお父さんは、『確かに「麗らか」という言葉は、「 空が晴れて、日が柔らかくのどかに照っているさま」という意味だ。けれど、雨の日でも柔らかい光で周りを照らして、みんなを笑顔にする様な子になって欲しい。そんな意味を込めたんだよ』と、教えてくれました。
実は、小学生の頃、読み間違われてしまう事の多い自分の名前が、あまり好きではありませんでした。
だから、『雨だったら……』なんてひねくれた質問をしたのです。
けれど、私が思っていた以上に、『麗』という名に込められたお父さんとお母さんの想いを知り、とても温かな気持ちになりました。
今でも私はこの名前が大好きです。
お父さん、お母さん。私は今、二人を笑顔に出来ているでしょうか?
麗という名前に恥じない娘になれているでしょうか?
幼い頃だけではなく、大人になってからもたくさん心配をかけました。
特にお父さんとはお互いにどう接したら良いのか分からなくて、ギクシャクしてしまい、あまりの気まずさに家を出て一人暮らしを始めてしまった事、とても後悔しています。
あの頃、心配かけまいと自分の気持ちを素直に伝えなかった事で、お父さんを余計に心配させていていたのだと思います。
家を出てからも顔を合わせれば、お父さんには素直になれず意地を張ってばかりでした。
お母さん、そんなお父さんと私の板挟みにして、辛い思いをさせてしまってごめんなさい。
お父さんの気持ちを代弁しつつも、お母さんは私の味方でいてくれていたのが、とても嬉しかったし、心強かったです。そんなお母さんと、春太郎さんのお陰で、お父さんとのわだかまりをなくすことが出来ました。
お父さん、お母さん。
意地っ張りな私に愛想をつかす事なく、ずっと見守っていてくれてありがとうございます。
これからも、二人が付けてくれた名前に恥じぬよう、笑顔で春太郎さんを支えていきたいと思います。
最後になりましたが、春太郎さんのお父さん、お母さん。まだ未熟者の私を、温かく受け入れて、実の娘のようにかわいがってくださり、ありがとうございます。
春太郎さんと二人で、春の陽だまりのように温かな家庭を築いていきます。
これからも、どうぞよろしくお願い致します。
麗
***
これにて『はるのひだまり』本編完結となります。
次話からは番外編として二次会についてのお話を色々な人物の目線でお送りいたします。




