空の神、天高く才
人を見下すというのは、とても気分のいいことだ
今 私は沢山の人々の中心にいる
誰よりも高く 皆に注目され
今 私は沢山の人々の上にいる
私を照らす灯は煌々と輝き 私を包んだ
生まれたときから 私には人とは違う才能があると気付いていた
燃えろ と願えば火が起きて 凍れと願えば水が凍った
とにかく願えば なんでもその通りになった
ある歳になったとき 学校に通えと言われた お前の歳になれば 子供は皆そこに行くのだと
「嫌よ」
私は拒否した
そんなものは才能のない出来損ないが行くところだと言った
殴られた 何度も 何度も 殴られた
一発殴られるたびに殺してやる ころしてやる と思った
次の日私の親は死んでいた 縄で首をつっていたので自殺という扱いになったが
私だけは気付いていた きっと私の力に違いないと
人も殺せるほど強い才能 能力に私は震えた
親なんていらない 一人でなんだってできる 私は特別な人間だ
「うふ」
学校に行くことを決めた 生徒をみな下僕にしてやろうと思ったからだ
実際 それは難しいことでもなかった
こどもとは単純なものでほんの少し私の力を見せてやると口を揃えて
「すごい!!どうやったのか教えて!」
と言うのだ
「私の僕になったら、いいよ」
私がそう言えば幼稚な奴らだから下僕が何かも知らずに
「いいよ!」
と答えるのだ
そうやって私は順調に下僕を増やしてった
ある日 周りの人間が私を見る目が変わった
誰も私の言うことなど聴かなくなった 私を見つけた奴は皆眼を逸らしどこかへ去っていく
避けられていた
今まで私を慕っていた奴らはいなくなり 一人になった
学校に行かなくなった
「憎い」
願った
「どうして私を嫌うの」
強く願った
「こんなに才能があるのに、私は特別なのに」
あんな奴らは
「死んでしまえばいいんだ…」
泣きながら願った
それから暫くして 私が下僕と呼んでいたそれが皆死んだという噂が飛び交った
私は学校に行かなくなってから毎日を実に適当に生きていた
なんとなく外に出て お腹がすいたら食べ物を食べて 疲れたら家に帰り
殺したい奴はみんな殺した
そんな生活が何年も続いた 世間は奇病が流行っているだとか 魔女がやってきたんだとか
そんなくだらない話で盛り上がっていた
「ちょ…ちょちょっと、いいかしら」
今日 来客があった
変に怯えた婦女がやってきた
来客などこの数年間一度だってありはしなかったから 驚いた
同時にとても 不快だった
こいつは何に怯えているんだ? 私に怯えているのか
何故?
なにをした?私が
あいつらみたいに あのガキのように
こいつも私を避けたがっているのか
憎い 憎い
そう思った 今までで一番強く
死ね 死んでしまえ
「あ…あぁ…ぉ」
婦女は白目を剥き 泡を吹いて 倒れた
気分がよかった これほどまで明確な殺意をもって能力を使ったのは初めてだったから
しかしその余韻に浸る暇も無く我が家に人がなだれ込んだ
あまりに突然の事だったので私はパニックになった
つまりは能力を使いどうにかすることができなかったのだ
「こいつめ、よくも今まで」
とか
「やっぱりこいつが」
とか
「許さない、許さないぞ、魔女め」
とか
そんな言葉だけが聞こえた
さるぐつわに目隠し そして拘束 犯されたりするのだろうか などと考えていた
両の手足に鈍い痛みを感じて眼が覚めた
磔にされ私は高々と掲げられていた
「………?」
何故私は磔に と思ったがその答えはすぐにわかった
沢山の人々が私を見て
「あくま!」「人殺し!「死んでしまえ!」
「早く!火を!」 「焼けろ!苦しめ!」
と叫びながら石を投げていたのだ
悟った あぁ 私は死ぬんだなと
松明を持った男が私を支える十字架に近づき 叫んだ
「お前が魔女ならこの炎を払うことができるだろう、お前が人間なら、そのまま死ぬだろう」
そして男は 火を放った
私はいつものように願った 強く 強く
私は 偉くなるんだ 誰よりも高いところで こいつらを見下して生きるんだ
しかし願えど願えど 何も起こらない 日は勢いを増していた
熱さで意識が遠のく どうして 助からないの?
もう
何も考えれ れ
な
神様 私は ただの人間だったのでしょうか
あなたの元に今行きますから
どうぞ 教えてくださいますか
人を見下すというのは、とても気分のいいことだ
今 私は沢山の人々の中心にいる
誰よりも高く 皆に注目され
今 私は沢山の人々の上にいる
私を照らす灯は煌々と輝き 私を包んだ