7の秘密 入学式前編
「今日のご飯は、カレーですよ。たくさん食べてくださいね」
「いただきまーす!」
みんなが一斉にいただきますと言い、みんな食べ始める。
「うまい! 奈央先生うまいですよ、このカレー美味しすぎです!」
「そんなぁ、普通のカレーですよ」
奈央先生が言いなおす。
「普通じゃないですよ、絶対おいしいですよ!」
奈央先生は押し黙ってしまった。
少し言い過ぎたかな。
「徹ちゃんほめ過ぎだろ、うまいのは事実だけど」
俺と奈央先生の会話を聞いた、直人が入ってくる。
「褒めすぎじゃないぞ、本当にうまい――このピリ辛なのだが野菜の甘さが出ており、マッチしたハーモニー――完璧だ!」
「……徹ちゃん……お前カレー評論家か!」
「カレー評論家といわれたら、このカレー三ツ星です!」
「お前しゃべりながらなのに、何でもう食べ終えてんだよ」
カレーのお皿は、もう無くなっていた。
「あっ奈央先生おかわりもらえもすか?」
待っててくださいねと言い、お皿を持ってキッチンへと行く。
「お前本当に……図太いな。この空気を見てみろ」
直人が周りを見渡すように言う。
「空気って……?」
周りを見回してみた、いや、周りの空気呼んでみた。殺伐とした空気がある、まぁ、考えても見れば、今日始めてあった人だから、何を話していいの分からずに、この空気になってしまったのか。
「分かったようだな、徹ちゃんお前が浮きすぎていた事に」
注意するように言う直人。
うーん、確かに俺奈央先生のカレーが食べれて、テンションあがっていたのは確かだけど。
「そういえば、今日直人何調べてたの?」
「ん~秘密」
「何でだよ!?」
「徹ちゃん――優柔不断だもん」
「ちッちがうよ!」
優柔不断なんかでは、ないと思うけどな。
「うっそだぁ。なら、奈央先生と桐島の作った料理どっちが食べたい?」
「そんなの決まってんだろ……きッいや、なッ……」
「どっちだよ、徹ちゃん」
「そッそんなの決めれるわけ無いだろ!」
ましてや、そのお二人からの料理となれば当たり前だ。
「やっぱり、徹ちゃんは、優柔不断だねー。それが徹ちゃんのいいところなんだけどね。俺が調べた結果をご飯食べてからみんなに教えるつもりだったから、そのときね」
直人は、何面白いことでもいうように言う。
そんなの決めれるわけ無いだろ、食べれるなら二人のを食べたいよ。
「あのさー、唐突なんだけど、いいかな徹ちゃん」
少し、食べていると直人が話しかけてくる。
いいよと、俺は言う。
「大富豪ってあるじゃない、あのトランプのやつ。あれって大富豪とか大貧民とか決められるじゃない、勝負の結果で、あれって差別だよね、いけないよねー」
「でも、そんなこというけどさ、どこの世界にも勝ち負けってあると思うよ、負けるものもいれば勝つものも、いると思うよ」
勝負の世界に勝ち負けはあると思う、戦争だって勝つ国と負ける国があるだろ、それで負けた国がお金や土地を渡したりしてただろ、それと同じだと思う。それは戦争だけではなくて、何事にもあると思うよな。
――剣道の世界だってそうだ。
「それなら、俺はその差別ってやつを無くしてやるよ! 全員貧民にしてやるよ!」
熱く、とても熱く無くすと熱弁している。
――お前のがこの空気読めてねえよ。
「それじゃ、カードゲームとして駄目になるだろ――その差別ってどうやって無くすつもりなの?」
「……大富豪のブログ作るとか」
「大富豪のブログなんて見る人なんていないだろ」
なんだよ、大富豪のブログって。
「例えばブログの名前を有名な芸能人のブログにして、中身を大富豪に付いて語るとかどうだよ?」
「それ、詐欺だよ! なんだよそれ、芸能人だと思ってみたら、大富豪について熱く語られるってなんだよ!」
どんな、詐欺だよ。ワンクリック詐欺みたいだな。
「何で大富豪って2が一番強いんだろうな、それで1だろ――で13だよな。なんで13が一番強く無いんだ、なんで2なんだよ?」
「しらないよ。作った人に聞いてみてよ」
「あのね大富豪は、確かね……」
俺達の大富豪の話題に奈央先生が食いついて来た。いや食いついて来た、と言う言い方は、ものすごい失礼なので言い換えよう、奈央先生が俺達の話に興味を持ってくださったので、話に入ってきたくれた。
「階級闘争という呼び名について、全共闘運動が下火になった頃、運動を離れた学生の間で本ゲームが流行したが、1ゲームでの順位が高いほど後のゲーム展開において優位に立つことができ、階級が固定化されるという特性が、現実の資本主義社会と類似しているとされ、マルクスの提唱した階級闘争の名があてられたらしいんですよ。また今度、皆さんで大富豪しましょうね」
奈央先生は意外と、博学なのかもしれない――先生だからな。
みんなご飯食べ終えて、食器を片付けて、席へと座る。
「えー、皆さん明日はついに入学式ですね、今日は早く寝て、明日に備えてくださいね」
奈央先生がみんなに言う。
「あっ、少しいいですかね?」
直人が席を立ち言う。
今から直人がさっき言ってた調べたことを言うって事か。
「どうしたんでか、直人さん?」
「あのですねー、俺自己紹介終わってから、職員室行ってきたんですよ、そんでこれを見つけてきたんですよ」
そういってみんなに紙を見せる。
「クラス表?」
桐島さんが、答える。
直人が見せたのは明日張り出される、全クラス表である。
「そうなんですよ、桐島さん――これ手に入れるの大変でしたよ、こっそり手に入れて」
「お前それ泥棒じゃないか!?」
俺が席を立って言う。
「大丈夫、盗んだのは奈央先生のやつだから」
直人が安心させるように言う。
いや、奈央先生のでも駄目だろ。
「えっ、私の!? 返してくださいよ」
「あっどうぞ」
先生に大人しく返した。
「先生そんな大事なもの、机の上に置いておくなんて無用心ですよ、それ俺が少し手を加えましたから」
「何をしたんですか!?」
先生が本当に泣きそうなぐらいおどおどしている。
「俺達全員別のクラスだったんですけど、みんな一つのクラスにしておきましたから」
「!?」
直人がした行動にみんなが驚いたと思う。
「本当ですか――本当だ……本物を返してくださいよー」
「大丈夫ですよ先生、ほかの先生も誰も気づいてませんから」
「そういう問題ではありません!」
「うーん、残念ながら、本物はもう廃棄させてもらいました、てへっ」
「てへっ、じゃないです、直人さん!」
「もぉー先生、いいじゃないですか、俺達が同じクラスのが何かと都合いいでしょう」
「……」
奈央先生は押し黙ってしまった。
――あーあ、奈央先生黙っちゃた――直人の勝ちだな。
「そんなに、奈央先生をいじめんなよ、直人」
俺が注意するように言う。
「でも、徹ちゃん、俺達がおんなじクラスなんだぜ、俺や桐島ちゃんとも」
そうか、桐島さんとも同じクラスのなんだな、桐島さんって見ているだけで、嬉しいっていうか――見ているだけでいい、高嶺の花って感じなんだよな。まだ話すらしてないし。
「なッ仲良くなれるかな?」
「もちろんだよ、徹ちゃん! 全力で俺がフォローしてやんよ」
「直人、苗木、私たちもいるんだよ!」
花澤さんが、自分たちもいることをアピールする。
――忘れてた、桐島さんや花澤さん奈央先生もいるんだった。てっきり俺と直人だけで話してるかと思ってしまった。
「さぁ、もおこの話を終わりにしますよ」
奈央先生が言う。
「はーい、じゃ新入生は自分の部屋にと戻るとしますか」
直人が先頭を切って食堂を出て行く。それに続いて俺達が出て行く。
自分の部屋へと着く。
「そう言えば、風呂まだだったな――入りにいくか」
少し、部屋でのんびりしてから、浴場へと向かう。
浴場は男と女と別れて、中はまぁまぁ広い温泉であった。
――すげーな、温泉まで付いてるなんて、本当に城みたいだな。今日は早めに寝るかな。
温泉からはすぐに出て、自分の部屋へと戻る。
――12時か寝るかな。
布団に入り、眠気を来るのを待つ。
ほんの少しで、眠りが来た。
――長かった1日も終わった、明日からこの学園に入学するな、楽しみだな。