5の秘密 入学式前編
「自分の部屋には来たけど、何にもすることないな」
現在時刻14時00分、それといってやる事もないので、暇を持て余している。
自己紹介の時、直人には、凄く勘違いされたが、俺はあの二人、櫻井先生と桐島さんを見た瞬間、どっちも好きじゃなくて一人に決まっていた。でも、名前を出すなんて絶対に出来ないから誤魔化したんだよ。
あいつに言うとからかわれそうだよ。
直人の所行こうかな、なんだかんだであいつとなら、暇になりそうにないし。
携帯電話を取り出して、直人に電話する。いつ番号とアドレスを交換したかというと、自己紹介のときにみんなで交換したのである。
桐島さんと櫻井先生のアドレスと携帯番号……グヘヘ。
三回のコールで直人が出た。
「あっ直人、今部屋にいる?」
『今か、今は学校に来てるよ』
「何か用事でもあったのか?」
『ちゃうちゃう、調べ物だよ、徹ちゃんたちのためのね』
「調べものって何だよ」
『知りたいかい、徹?』
いつものしゃべり方ではなく、重く、シリアス調で話す。
――そんなに重要な調べものなのか!?
「う、うん」
『そうか、分かった。特別に徹にだけ教えよう、今俺は――すまん、徹ちゃん、切るわ!』
電話を切られた。
――あいつ調べものってなんだろうな、さらに、最後も変な切り方だったし。
やっぱ、暇なったなー。神谷君に電話してみよ。
「あっ、もしもし、苗木ですけど、今暇かな、暇だったら遊ぼうよ」
『すまんな、俺は今暇じゃないんだ、また今度にしてくれ』
あっさり、切られた。
――なんだよ、みんな忙しいんだな。なんで俺は暇なんだろう。
暇って言ったら、暇を過ごすにみんなは、何をして過ごしているのかな、想像するに直人はゲーム、家でゲームばっかやってて家を出てこないとか……ありえるな。神谷君は、うーん、なんだか怖い人だからな、ゲームセンターとか言いそうだよな、これ言ったら殺されるかな。……まさかね。花澤さんは、あの人は、すごく元気そうだから、スポーツかな、バスケとか似合いそうだよな、俺は、スポーツと言ったら……たぶん物語の要になるからあんまり言えないんだよな。強いて言うなら、あるスポーツをやっていた。桐島さんはどうだろう、文芸部に入っていてそうだよな、もしかしたら、この学校の書道部にはいるのかな――俺も入ろうかな。
――もう、いいや、テレビ見よう。
リモコンに手をかけて、チャンネルを回す。
この時間面白いものがないな、適当な旅行番組を見る。
そういえば、今年から地上は放送なんだよな、このテレビはもうできてるや。さすがやることが早いな、家もリビングのテレビはそうだけど、ほかの部屋はまだだったような、あれって、見れなくなるんだよな、それは困る――てか、俺寮生活じゃないか、関係ないとまではいえないけど、俺がやることではないな。
番組が詰まらなくなったので、ほかの番組が見ようと、リモコンでほかの番組を見ていたら、少し不自然な事を目のあたりにする。
――なんで、ニュース番組がないんだろう。
全チャンネルを回しているが、ニュース番組が一つもやっていない。時間帯かもしれないが、まったくやっていない。
――何だろう、寮だから見れる番組を制限してあるのかな、でもニュース番組が見れないなんて。
いつもは見ないのだが、見れないと思うと非常に見たい気持ちになる、人間の性である。よくあるよな、見るなよといわれたら無性に見たくなるあれだよ。あれって何なんだろうな。
――テレビもいいのやってないなー。外に出るかな。
そう思ったら、即行動だ。
――もう少し、テレビ見たら出ようかな。
それから、俺がこの部屋を出ようと悩んで一時間後に出た。