3の秘密 入学式前編
長い机が真ん中にあり、それを挟むように三つずつ椅子がおいてある。
今のところ、女子生徒が一人、男子生徒が一人いる。その人たちについては、全員そろったら説明をしたいと思う。
俺と直人はその男子生徒の隣に二つ開いているので、その人の隣に俺、俺の隣に直人が座った。
「徹ちゃんって彼女いるの?」
「彼女? 居たことないな」
俺は、あんまり女の子と話したことがないから、彼女とか居たことがない。
高校生にもなったんだから、彼女ほしいな……できるかな?
「うんうん。徹ちゃんそれで良いんだよ、俺は昔から決めてたんだ、ギャルゲーで言う、サブキャラのような人になるって。徹ちゃん恋したら俺に言ってね」
ギャルゲーって何だろう、ゲームなのは知ってるんだけどあんまりゲームはやらないからわかんねえ。
「その顔分かってないな。もしかして……徹ちゃんギャルゲー知らない?」
「うん」
「なんてこったぁあああああ。お前は人生の99%損してる! 死ね!」
「お前今死ね言ったな!? そこまで重要なのか?」
直人は、息を切らしながら、言う。
「俺は恋しない、お前は恋をしろ」
直人は自分のと俺を指さしながら言う。
俺は直人に勝手に決められて、恋をすることになった。
恋なんて、自分が気づかないと思うんだよ。
しばらくすると、食堂のドアが開く。
入ってきた人は、開いている椅子へと座る。
直人の目の前の席である。
座った女の人と直人はなぜか見詰め合っている。
「……直人?」
女の人が直人と名前を呼ぶ。
「花音?」
「やっぱり直人だー!」
女の人は席を立ち上がって、大声で言う。
「おぉ、何だよお前もここの学校だったのかよ。徹ちゃん紹介する、こいつは花澤花音花が沢山名前ついてるけど、本人は、ぜんぜんおしとやかじゃないからな。俺とは、幼馴染みたいなもんだ。中学校は違うんだけど、家が近くだから結構会ってたんだよ。それが同じ高校とは――驚いたもんだ」
「あんた、どんな説明してんの!」
花澤さんは、目の前にあった、コップを直人に投げた。
「ぶっはあ!」
もろに直撃した。痛そうにしているが、ほんの数秒で直っていた。
「で、こいつが苗木徹。俺の親友」
「苗木徹です、よろしく」
「こちらこそよろしくね」
俺と花澤さんは、挨拶をかわした。
「でも、花音と同じ学校とは、驚いたな」
直人が花澤さんに話しかける。
「本当よ、なんであんたがいるのよ」
「ひでーな、おい。お前と一緒って分かってたら――グハッ!」
またもや、コップが飛んできて、直人の鼻に当たった。
「一緒って分かったら、何だって?」
「い、一緒でうッうれしいなッ」
花澤さんは、黙って頷く。
この二人の関係って何なんだろう。
直人には、部活やんないっていったけど、どうしようかな。
直人は剣道部、俺は……野球部とか……無理だ、俺四十肩だ。
――なら、サッカー部かな、俺常時捻挫だから――嘘だけどね。
しばらくすると、食堂のドアが開く。
最後の一人が入ってくる。