選択のその先で、問いは静かに待つ
これは現在執筆している作品の一部を短編にして抜粋してます。
「それは、正しかったのか。それとも、間違っていたのか」
「人類は、生き残るために選んだ。だがその選択は、本当に最善だったのか」
問いは、記録されていた。誰に向けられたものでもなく、答えを期待されたものでもない。
それでも、その問いは残った。
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隕石は、突然空から落ちてきた。
爆発はなかった。光も、熱も、衝撃波もない。ただ、空にひびが入り、現実の向こう側から、存在しなかったはずのものが溢れ出した。
後に人類は、それらをユニヴァと呼んだ。
ユニヴァは人類を敵と見なさなかった。征服もしなかった。ただ、捕食した。
銃は弾かれ、爆撃は無視され、街は時間をかけて噛み砕かれていった。
人類は学んだ。――防げないものは、防がない。
代わりに、人類は自分自身を改造した。
人が持つ才能を引き出し、能力として発現させる技術は コード と呼ばれた。人と波長で応える武器は ツール と定義された。
それらを運用するための組織が、対ユニヴァ専門機関――シリアルドである。
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シャロは、その新人だった。
若く、経験は浅い。だが戦場では、誰よりも正確だった。
射撃精度、状況判断、戦場認識。どれを数値化しても、異常な水準を示す。
だから人は彼をこう呼んだ。――天才。
だが、彼には奇妙な問題があった。
専用のツールが、見つからない。
武器屋の職人たちは首を振り、波長計測をやり直し、最後には匙を投げた。
「拒絶されている」
それが、彼らの出した結論だった。
残ったのは、誰にでも使える制式品の二丁拳銃。
それで十分だと、シャロは思っていた。彼は自分の能力を疑っていない。撃てるし、当てられるし、勝てる。
――ただ、自分が“選ばれる存在”だとは思っていなかった。
彼のバディはアンカーという男だった。
五十を過ぎたベテランで、巨大な斧 リベリオン を背負っている。
だがアンカーが前に出ることは、ほとんどない。
彼のコードは 共有同化。ヨセフとカロフェ、二人の命と感覚を常時共有し、その前線を任せる能力だった。
仲間が受ける痛みは、すべて自分にも届く。
それでもアンカーは言う。
「撃てるなら、撃て。 撃てないなら、俺が前に出る」
助言でも叱責でもない。ただの、事実だった。
シャロのコードは ターゲット。標的と定めた対象の攻撃力と防御力を上下させる調整能力。
発動条件は単純だ。「使えると確信していること」。
シャロは、この条件で足を取られたことがない。自分の能力は信用している。数値も、判断も、狂わない。
だからターゲットは常に作動した。彼の戦果は積み重なり、シリアルド内で名が知られていく。
――英雄。
その評価が、彼を救うことはなかった。
ある作戦の最中、政府高官として現れたのは、実の兄であるナイトだった。
「お前は危険だ」
英雄は制御されるべきだ、と兄は言った。表向きは戦死扱い。裏では隔離と管理。
それは救出という名の檻だった。
シャロは銃を構えた。
迷いはなかった。能力も、確信も、条件はすべて揃っていた。
兄が敵かどうかではない。――自分が、ここで選ぶ側に立つかどうか。
二発の銃声が、空気を切り裂いた。
檻は壊れ、兄弟の関係は終わった。
シャロは英雄になった。だが、それは自由の証ではなかった。
選ばれ続ける場所に、立ち続ける資格を得ただけだ。
問いは、まだ誰にも向けられていない。
それでもどこかで、確かに残っていた。
それは、正しかったのか。それとも、間違っていたのか。
これらの行動は正しかったのか、間違っていたのか。貴方ならどう考えますか?




