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経済不況だから魔王軍で働きます!  作者: ナポリオン


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3/13

人間の手も借りたい

――やはり、間違っていなかった。

 路地裏を後にしながら、私は外套の内で小さく息を吐いた。

 感情を表に出すのは得意ではないが、今だけは、ほんのわずかな安堵を覚えている。

 レイン・クラウス。

 人間界の冒険者ギルドに所属していた、ただの事務員。

 戦えない。

 魔力もない。

 剣を握らせても、おそらく子供にも劣るだろう。

 だが――それが、何だというのだ。

 魔王軍には、強い者なら腐るほどいる。

 血を好み、戦場で名を上げ、破壊の中に快楽を見出す者たち。

 そして、そういう者たちほど、物資を浪費し、部下を使い潰し、戦争を長引かせる。

 愚かな話だ。

 戦争とは、力比べではない。

 持続できた側が、最後に勝つ。

 その事実を理解している者が、この軍にはあまりにも少なかった。

 レインは違う。

 彼の目は、数字を見る者の目だ。

 人の感情と現実の限界を、同時に測れる者の目。

 解雇通知を受け取った直後だというのに、感情に溺れず、条件を確認し、質問を重ねた。

 ――生き延びるために、考えることをやめていない。

 それだけで、十分だった。

 人間界も、結局は同じだ。

 英雄を祭り上げ、その影で組織を支える者を切り捨てる。

 魔王軍と、人間の国。

 敵同士でありながら、抱えている病は驚くほど似通っている。

 だからこそ、彼が必要だった。

 外から来た者。

 どちらの常識にも完全には染まっていない者。

 ――壊すためではなく、回すための人間。

 正直に言えば、危険な賭けだ。

 人間を中枢近くに置くことを、快く思わない者も多いだろう。

 それでも。

 このままでは、魔王軍は内部から崩れる。

 強さだけを信仰し続ければ、いずれ自滅する。

 私はそれを、何度も見てきた。

 レイン・クラウス。

 君はまだ、自分の価値を知らない。

 だが近いうちに、思い知ることになるだろう。

 ――組織という怪物を、生かすも殺すも、人間次第だということを。

 願わくば。

 彼が、人間界で受け取れなかったものを、

 この魔王軍で手に入れられることを。

 それは、彼のためであると同時に――

 この歪んだ戦争を終わらせるための、私自身の希望でもあるのだから。


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