表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悦楽共犯者  作者: 八車 雀兄


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/3

朝倉零

「零は、ずっとバージンみたいだ……」



 篠宮は行為が終わった後も、私から体を離さずに呟いた。



「上手く出来てなかった?」



「そういう意味じゃなくて……。ぎこちないのが、可愛いよ」



 そうして、肩に何度もキスを落とされた。



「それは、惚れた欲目だと思うけど……」



「いつも、反応が新鮮だし。俺には、もったいないくらいの良い嫁だよ」



「私でも、満足できてるんだ。……良かったよ」



「そりゃもう。……堪能させてもらいました。へへへ」



 なんて返事をすれば良いのか困っていると、



「そういう顔するのが、良い」



「……シャワー行こうよ」



 さっきから、二人でずっと、とりとめの無い話ばかりしている。時計を見たら、零時過ぎだった。



「Happy Birthday」



「ありがとう。でも、そろそろ眠らないと……」



「それじゃ、汗流して寝るかぁ」



 あくびをしながら、彼が立ち上がった。私に手を差し出す。その手を取りながら立ち上がると、抱き締められた。



「産まれてくれて、ありがとう」



 毎年言われているのに、照れくさい。



「今年も描いてくれたの?」



「もちろん」



 彼が毎年、色紙に私の絵を描いて渡すのだ。



 付き合う前から、もらってるので今年で21枚目になる。同じ家で暮らしてるのに、描いているところを一度も見たことがない。



 多分、私が眠っているうちにコッソリ描いているのだろう。



 嬉しい習慣だが、今年はもらえるとは思わなかった。



 シャワーを浴びる彼の背中を見ながら、



「あんなに忙しそうだったのに、いつ描いてたの?」



「企業秘密」



「背中流すよ」



「俺が流す。誕生日だし。おいで」



 首筋に温かい湯がかかると、ホッとした。



 彼は手にボディーソープを取ると泡立て始めた。指が背中を滑らかに動いていく。



「気持ち良い……」



「首、凝ってるな」



 彼の口調が神妙だったので、思わず吹き出した。



「それは、お互い様」



「まぁ、仕事頑張ったって、ことで。骨休めには、良いタイミングだったよ。今夜は一緒に寝よう?」



「うん……」



 彼の笑い皺のできる笑顔と、前向きな言葉にいつも私は安心する。



 風呂からあがって、髪を乾かしていると、



「はい。今年の新作」



 彼が色紙を見せてきた。



「ありがとう」



 眼鏡をかけた、私のイラストだった。



「毎年ハンサムに描いてくれるから、嬉しいよ」



「絵より、実物のが良いよ。零の美しさの十分の一だって描けてない」



――褒め殺しだな。



 苦笑いしながら、毎年ファイルしてるフォルダにしまう。



 なんとなく、一番最初の色紙を見返した。



 一枚目の色紙には、眠っている若い頃の私がいる。



 誕生日ということで、学食を当時の仲間に奢ってもらった。



 その中で、篠宮がこれを差し出してきたのだ。



「お誕生日おめでとう」



 その時は、ただの先輩だった。



 教室で昼寝していた寝顔を描かれたのに、不快感はなかった。

 その頃から篠宮は茶目っ気があって、こういうイタズラも許されていたからだ。



――色紙の線に迷いが無い。学生の頃から、上手いなぁ。



「もしかしてさ、この頃から、私のこと気に入ってた?」



 篠宮は、呆れたように笑った。



「それに気がついてなかったの、零だけだったよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ