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第二十一話 遠風、隊に入る

丘の上、夜風が静かに吹いていた。

彼女は、まだ本当の名を持っている。

だが、隊員たちの間では、もう「遠風」と呼ばれていた。

隊長が、闇を見渡しながら静かに言う。

「ここから先は、私たちの持ち場だ」

その言葉に、何人かが散るように動く。

丘の外れ、村へ続く道、風の通り道。

走る者もいれば、止まって聞く者もいる。

「風走りは、前に出すぎない」

誰かが、小さく言った。

「気配を先に拾って、間に合う位置に立つだけだ」

隊長は振り返らずに、少女に声をかける。

「これから、君も一緒に来るんだな。遠風」

遠風は、小さく頷いた。

名は、ついた。

それは名乗ったものではなく、

夜の中で、自然にそう呼ばれるようになっただけの名だった。

村を守る夜は、ここで終わる。

だが、村が無防備になるわけではない。

丘と外れ道は、これからも見られる。

風を読む者たちが、交代で立つ。

走らず、騒がず、間に合う位置に。

遠風は、隊とともに歩き出す。

まだ知らない夜、まだ知らない戦い。

だが、距離を測り、影を読む力は、すでに身についていた。

やがて、さらに厳しい修練が待っている。

仲間と動く夜も、

ひとりで立つ夜も。

——その先に、どんな戦いがあるのか、

彼女はまだ知らない。

ただ、風の中で立つことだけは、

もう迷わなかった。

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