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第十七話 線を引く夜

夜は、四度目だった。

数は、減っていた。

二人。

増えるより、減る方が、厄介だと

彼女は知っている。

散ったのか、

様子を変えたのか、

それとも——

考える時間は、ない。

距離が、近い。

弓を使う距離では、なかった。

引けば、

間に合わない。

放てば、

音が残る。

矢は、残り少ない。

外せば、終わる夜だ。

彼女は、弦に触れない。

代わりに、

槍を持つ。

振り回さない。

構えすぎない。

ただ、

一歩、引いた場所に立つ。

線を引くためだ。

それ以上、来れば、

刺さる距離。

だが、

来なければ、

何も起きない。

二人は、止まる。

互いに、位置を測る。

言葉はない。

彼女は、動かない。

夜は、張りつめたまま、

長く、伸びる。

やがて、

足音が、遠ざかる。

追わない。

追う理由が、ない。

夜が、終わる。

村では、

何も起きなかった。

犬は、吠えなかった。

灯りは、消えたままだ。

見回りの男が、呟く。

「……今夜も、風か」

別の男が、肩をすくめる。

「風に助けられたな」

彼女は、

村に戻らない。

戻れば、

次の夜に、間に合わなくなる。

それだけのことだった。

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