表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/21

第十三話 風の呼び名

翌日も、

村は静かだった。

静かすぎて、

昨日の言葉が残っている。

「風だろ」

誰も否定しなかった。

だから、少しだけ形を変える。

「風にしちゃ、

 近くないか」

「遠くから、

 抜けてくる感じだな」

誰かが言う。

「遠い風だ」

その言葉は、

特別な意味を持たなかった。

ただ、言いやすかった。

昼前、

村を通りかかった旅の者が聞く。

「この辺、

 夜が荒れないな」

村の者は答える。

「荒れそうになるが、

 ならん」

「獣か?」

「いや……

 風みたいなもんだ」

旅の者は笑う。

「風にしちゃ、

 仕事が細かいな」

誰かが、

つい口を滑らせる。

「遠風、

 ってやつかもしれん」

その場では、

笑い話で終わる。

名付けるつもりは、

誰にもなかった。

だが、

言葉は残る。

夕方、

別の村から来た荷運びが言った。

「ここ、

 遠風がいるって聞いたぞ」

「誰だ、それ」

「知らん。

 揉め事が、

 風みたいに消えるらしい」

誰も訂正しなかった。

彼女は、

丘の影でそれを聞く。

呼ばれているとは、

思わない。

ただ、

風の向きが変わったと感じる。

その夜、

彼女は位置を変える。

丘の端。

谷筋。

道の曲がり。

名前は、

まだ要らない。

だが、

風は、

もう一段、遠くまで届いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ