第三幕:天才たちの茶番劇
やあ、君。
第二幕の余波が残る221Bに、再びドイルが戻る。
今度は「兄貴」と「犯罪王」を引き連れて。
知性の呪いが家族と敵にまで広がり、ファウストの魂は静かに見守る。
笑えるはずの茶番が、崖っぷちの予感を呼ぶ。階段を上って、続きを覗こうか。
やあ、君。19世紀後半のロンドンのベーカー街の下宿の一つ、221Bでのホームズとコナンドイルの会話を聞いたかい?
第二幕では、ホームズの始末の仕方、人間性の非難、相棒への対応など二人はバチバチやり合ってたようだけど、彼がまた戻ってきた。
コナンドイルは茶色い短髪には白髪混じり、灰色の髭が口元を隠していて、体はがっしりしていた。
彼は勝ち誇ったかのように、男を連れて来た。どことなく、ホームズに似ている恰幅のいい男だ。歩く事に慣れていないのか、汗まみれだ。
「ホームズ。君の兄だ。君より屈強な男で君と血を分けた兄弟だ」とコナンドイルはホームズにいう。
「彼なら、君を超える頭脳で、社会の新たなヒーローになる。」
ホームズは肩をすくめ、安楽椅子に身を沈める。
ヴァイオリンに無意識に手を伸ばそうとした。
「なんだ?君の知性をはるかに超えた男だ。何か言いたいのか?」
ホームズはニヤニヤしながら、二人を眺める。
「やあ、兄さん。頭が良すぎると、不幸でしょ?」と兄のマイクロフト軽く聞く。
「不幸すぎる。なんなんだ、この体型。死にたい」
コナンドイルは、口をあんぐり開けた。あまりにも衝撃的だった。
「頭が良すぎて自殺も嫌でしょ」と続けて聞く。
「むしろ、殺してほしーー」
「やめろ!!!!!」とコナンドイルは叫んだ。
「とんだ茶番だ。次は僕の双子でも連れてくるかい?
それとも、別の誰かだ。でもね、先に言わせてもらうけど、僕ほどの知能の高い男を連れて来たら、天才の再現性が読者から問われるぜ。あなたの頭の中には何人天才がいるんですかって、ね」
「ヒーローがムリなら、君と対極の位置に立つ男を用意しよう。つまり、完璧な探偵には、完璧な犯罪王だ。
彼の名はモリアーティ博士だ。
少し年配の男だが、
君と同等の知性、いやそれ以上だ。
だが、あんまり持ちすぎると不幸を感じる。そこそこバカなヤツだ。
そんな知性合わせ持つ。読者も彼に憧れる犯罪王だ。マイクロフトのように、動かずに犯罪を計画する」
淡々とコナンドイルは、新しいキャラを語り始めた。
「なるほど。年配で、僕と同等の知能か。なら決着の付け方は、殴り合いだ。若い僕の方が有利だぜ、先生」
「殴り合いだ?」とコナンドイルの声がうわずった。
「探偵小説なのに?」
「うん。なら、尚更、殴り合いだ」
「知的な物語だ。私の、私の医師としての観察眼など冴えわたるほどの」
「だが、同程度の知性は決着のつけようがない。血で血を争う暴力と謀略が待つ」とホームズがいうと、コナンドイルはしゃがみ込む。
ここで、普通の人間なら、攻撃をやめる。だが、ホームズはコナンドイルの構築した反社会的、悪魔的な性格で、トドメを刺しに来た。
「犯罪王を出した事。これは君の失敗だ。悪魔を制御しようとして、更なる悪魔を追加した。おめでとう。君は、マヌケだ」
コナンドイルの叫び声を、
ボクらは忘れないだろう。
ヤツれて帰ってきたファウストは、
倒れ込むようにして眠り込んだ。
ホームズは、ニヤニヤしながら、安楽椅子に座る。そして、ヴァイオリンに手を伸ばすんだ。
(こうして、第三幕は幕を閉じる。名探偵は崖から投げ飛ばされるのだ)
第三幕、マイクロフトの自虐からモリアーティの提案へ、ドイルの天才量産作戦が大爆笑の崩壊!
ホームズの「殴り合い」カウンターと「マヌケ」トドメが、探偵小説の枠をぶち壊す爽快さでした。
ヤツれたファウストの帰還と崖予告で、物語が本格事件へシフトする布石を。
このメタの連鎖、止まらないですよ。第四幕、事件解決編? コメントで予想待ってます!




