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エボシオリ  作者: 緑兵 鍊
2章

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36/49

33節 目指せ最強

「先輩……。ちょっと待ってください…。」

「…何だ?まさかもうバテたなんて言わないよな?」

「いやまあ、それもありますけど。

 輝龍隊員重いですし…。

 それよりも、変な匂いしませんか?」

「…匂い?……確かに、何か匂うな。」

「そうなんです!なんか無性に嗅ぎたくなる匂いで……!

 これ何の匂いか分かります?」

「む、この匂い…つい今朝方、嗅いだ気がするが……ああ、確か洗面台で娘とすれ違った時にこれと同じような匂いが――」


「う~ん、それって女の子の匂いってやつ?

 やるねぇ、大正解!」


「…!?しまっ!!?」

「「ウワァーーーーー!!」」



 ———



「これは……何というか……。」


 深い森の中、二人の幻神隊員は地面に膝をつき、目を輝かせていた。


「リリカ様、お疲れではありませんか?

 よければ、ワ、ワタクシが椅子になりましょう!」


「リリカ様、夜風は冷えます。

 どうぞ私の上着をご着用ください……!」


「ありがと〜!

 でも、どっちも大丈夫だから、

 知ってることだけ全部吐いてね♪」


「「はい! 何でも答えます!!」」


「……悲惨だ。」


 二人の大の男が、年下の少女にひざまずいている。

 鼻の下をだらしなく伸ばし、尊厳というものを綺麗さっぱり失った姿。


 これほど惨めな光景は、そうそうお目にかかれないだろう。


 白羽命——通称ミコちゃんを探すため探索を再開した俺達は、爆発跡地の方角から負傷した輝龍を運ぶ幻神隊員二人を発見した。

 リリカが、「どうせなら、話聞くついでに味方に付けよう!」と意気揚々と飛び出し、爪から抽出された洗脳毒を頚動脈に突き刺した結果、こうなった。


(……恐るべし、洗脳神器。)


 彼らの尋問は本職の尋問官に任せるとして、

 俺は地面に仰向けに転がされた男の元へ歩み寄った。


「……よう。思ったより元気そうで安心したぜ。」

「……テメェはピンピンしてんじゃねぇか。

 例の治療神器使いにでも治してもらったか?」

「違うけど、治してもらったのは合ってる。」

「そうか……。

 盗賊団には他にも治療神器使いが居んのか。厄介だな。」

「あ、ああ……まあな。」


(そんな奴、居ないけど。)


「それで?テメェはオレのトドメを刺しに来たのか?」

「んなわけあるか。俺は極力殺したく無いんだ。」

「…ハッ!善治さん殺しといてよく言うぜ!」

「それは………!!

 いや、そうだな……俺が悪かった。」

「…チッ、何で謝んだよ気持ち悪い!

 敵なんだから殺して当たり前だろうが!」

「え……なにお前、励ましてくれてんの?」

「うっせぇ!死ね!!」


 話してみると、意外と素直に応えてくれる。

 …口は悪いが。

 他愛もない話を続けていく内に、何故輝龍が幻神隊に入ったのか気になり尋ねてみると、とんでもない事実が分かった。


「オレはガキの頃から幻神隊にいたからよ。

 学校卒業してすぐに入ったぜ。」

「学校か…。いつの話だ、それ?」

「今年。」

「……は?…てことは、お前……未成年?」

「15だけど?文句あんのか!?」

「はああああぁぁぁ!!?マジかよ!!?」


 まさかの年下だった。

 しかも、中卒。

 俺より5つも下。


 どんな生活を送ってきたら、子供がこんな修羅みたいな組織に入れるというのだろうか。


「親が幻神隊だったとか…?」


「あ?オレは孤児だから親なんていねぇよ。

 拾われて育てられたってだけだ。」


 聞けば、各地の児童養護施設から幻神隊が何人か子供を引き取ることがあるという。

 引き取られた子供達は国が支援する特別な学校に通い、卒業出来れば晴れて幻神隊の一員となるらしい。


 つまり、幼い頃から神器に関する英才教育を叩き込まれたエリート達ということだ。


「普通は18になったら卒業すんだけどよ、

 オレは"優秀だったから"飛び級で卒業したぜ。"優秀だったから"な!」

「へー凄えじゃん。」

「へっへっ!だろ!オレ凄ぇんだ!」


(なるほど……新隊員のくせにやけに強かったのも納得だ。)


 納得してしまった自分が、少しだけ嫌だった。

 それはつまり、コイツが"戦えるように育てられた"ってことだから。

 それしか生き延びる道がなかったからだ。


「なあ、輝龍。」

「あん?」

「幻神隊辞めたいとは思わないのか?」

「思ったことないね!

 オレは幻神隊最強になる男だからな!」

「最強か……なんでそこまで最強にこだわるんだ?」

「なんでって…そりゃあ、強い奴が正しいからな。」

「正しい?」

「じゃんけんとか、ケンカとか…勝った奴が全部選べる。

 この世界にいる偉い奴らは全員、勝った奴らだ。

 負け犬は従うか、消え失せる事しか出来ねえ。」


「オレは、オレが正しいと思った事しかやりたくねぇ!

 だから、最強になるんだ!」


「……!なんだそれ!

 完全に暴君じゃねぇか。ハハハッ!」

「おい、オレは本気だぞ!笑うな!!」


 勝った奴が正義。

 野蛮な考えと思っていたが、案外この世の真理をついているのかもしれない、

 話し合いだって意見が対立してどうしても決まらなければ、最終的に決めるのは多数決という『数の暴力』だ。

 俺達は結局、争いから逃れることは出来ないのだ。

 それなら——。


「俺も目指そうかな——最強。」


 このまま、盗賊団と幻神隊の争いに巻き込まれるくらいなら、いっそ俺が止めてしまえばいい。

 そうすれば、全部解決する。

 そうすれば、母さんや実救、俺の大切な人たち全てを守れる。


「人の夢、パクってんじゃねぇよ!!

 最強になるのはオレだ!」

「お前は幻神隊最強だろ? 俺は、盗賊団最強だから。」

「じゃあ、オレの方が強いか。」

「いいや、俺だね。」

「オレだ!」

「俺!」

「「やんのか〜!!!コラ!!」」


「な〜に子供みたいな喧嘩してんの?」


 少し離れたところから、呆れたような声。

 俺と輝龍が同時に顔を向けると、苦笑しているリリカが後ろにwith Bを引き連れ、歩いてきていた。


「この人たち、全部喋ったよ〜!

 任務内容と編成、持ってる神器の能力、みんなの嫌いな食べ物とか!」

「それ最後いらねぇだろ……。」

「えー?結構重要だよ?アレルギー毒作れるし。」

「怖……。」


 リリカは満足そうに笑って、こちらを見る。


「で、この子どうするの?」

「……どうするって?」

「殺す?それとも〜……味方?」


 その言葉に、輝龍がビクッと反応した。


「は!?味方!?ふざけんな!」

「嫌?」

「当たり前だろ!オレは幻神隊だぞ!」

「ふーん。」


 リリカはしゃがんで、輝龍と目線を合わせる。


「じゃあさ。」

「……な、なんだよ。」

「君も気持ちいーの、いっとく?」

「…!?や、やめろ…!」


 ギラリと光る紫毒しどくの爪を輝龍の頸に振り下ろす。

 輝龍は、抵抗したくとも体が動かないのかピクピクと震えている。

 首筋にまで爪が迫った時、ギュッと目を瞑った。


 だが、その爪が輝龍に届くことは無く、寸前で止まっていた。

 俺がリリカの手首を掴んで止めたからだ。


「ちょっと待ってくれ。」

「…ちょーくん、何のつもり?」

「今の反応を見ただろ?

 コイツはもう戦えない。洗脳するだけ無駄だ。」


 リリカは上目遣いでこちらを見つめる。

 愛嬌のカケラもない冷めた目で。


「敵に感化でもされた?…これは裏切り行為だよ?」

「違う!洗脳しない方がメリットがあるって話だよ。」

「…どういうこと?」


 ひとまず、落ち着かせられた事に安堵し、一息入れてから理由を話す。


「まず、コイツはバカでアホだからすぐ情報吐くし、

 身体も動けないから戦えもしない。

 洗脳するメリットゼロだ。」

「おい。」


「逆に、洗脳しないで捕虜として残せば、戦闘部隊のお仲間に交渉材料として機能するはずだ。輝龍を無事に引き渡す代わりに見逃してもらう…とかさぁ。」

「それなら、洗脳して戦闘部隊もろとも自爆してもらった方が良くない?」

「洗脳しているのがバレたら終わりだぞ。

 洗脳されている味方をわざわざ引き取るのはリスクがある。

 あからさまに洗脳されている奴なんて引き取る訳ない。」

「敵もそんなこと承知の上でしょ。それに、洗脳にかかってない演技フリして貰えば良いじゃん。」

「コイツにそんな高度な事できると思うか?」

「それは……練習させれば良いもん!」

「おい。テメェら、後で絶対ェ殺す。」


 後もう一押し。

 何かないか。コイツに洗脳しない方がいい、もっともらしい理由。


(輝龍…金髪ヤンキー…雷…バカ……新隊員——あ。)


「し、しかもコイツ、まだ15歳の子供だぞ……。」

「……!?ええええぇぇぇ!!?」


 この一言がきっかけで、リリカは洗脳を諦めた。

「…で、いいのか?洗脳しなくて?」

「子供に毒は悪影響だし、

 それに子供相手に洗脳ってなんか犯罪臭するからヤダ…。」

「犯罪って…盗賊団なのに?」

「それとこれとは話が違うの!」


(何が違う…?)

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