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エボシオリ  作者: 緑兵 鍊
2章

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31節 〇〇再誕の儀式

 暗く掠れた視界。

 水の中にいるかのような耳の詰まり。

 身体の感覚は指先一つない。

 ここはどこで、自分がどんな態勢なのか全くわからない。


 ただ、直感が告げている。

 今この時も、自分は緩やかに()()()()()()()()のだと。


 どうやら輝龍との勝敗はこちらの負けらしい。


 諦観か、もしくは筋肉の限界からか、まぶたがゆっくりと閉じてゆく。

 視界が上から暗くなっていく様は、人生の幕引きを現しているかのようだった。


 完全に視界が塞がると、どこからか声がする。

 鼓膜は破れているはずなのにハッキリと聞こえる、中性的な声。



 このまま死んじゃうの悔しい?



「そりゃあな。でも、全力でやったんだ。それで死ぬなら仕方ないさ。」



 助けてあげようか?



「気持ちはありがたいけど、他人を治せる神器も見つかってない。この傷を治すのは無理だ。」



 出来るよ。



「どうやって?」



 身を任せてくれれば良いよ。

 治療はこっちでする。



「本当に…?アンタまさか、白羽命シラハノミコト様なのか…?」



 違う。でも、似たような存在ものだよ。

 それより、どうする?

 …やる?…やらない?



「まだ生き残れる道があるなら……やる。」



 ありがとう。

 本当に、本当に、君は――。

 昔から純粋ばか良い子(おろか)だね。



 最後に声が重なって、なんと言っていたのか聞き取れなかった。

 受け入れると言った瞬間、身体になにか入り込んでくる感覚があった。

 変な感覚だ。力が漲ってくるのに高揚感などはなく、ただただ空虚で……自分が自分でなくなっていくような。



 あと少し。

 もう少しで君は再誕する。

 大した素質じゃないけど、上手く使ってあげる。



「……ああ。」


(何だか眠くなってきた。全てがどうでもいい……少しだけ休もう。)



 ……おかしい。

 これ以上介入できない。



 中性的な声が、なにやらブツブツと呟いていたその時――。


 バチンッ!!


「痛ってぇ!?」


 不意に背中を叩かれた。

 その痛みで眠気が吹き飛ぶ。

 ヒリヒリと痛むこの感じは、誰かに平手打ちされたのだろう。



 そう……あの男…。

 死してなお、ワタシを阻むか…忌々しい……。

 まあ、いいよ。次こそは必ず――。



 吐き捨てるように呟いた言葉を最後に、中性的な声が聞こえることは無かった。

 その後、自分の中に入ってきた妙な感覚が抜け去っていることに気付き、大きな脱力感がやって来た。


「あ…ダメだ……。また、眠く――……。」


 俺の意識は抵抗虚しく闇の中に落ちていった。



 ―――



 目を覚ますと、満天の星空が俺を出迎える。

 体を起こすと、視界が揺れた。

 そこで、初めて自分がハンモックに寝ていた事に気が付いた。


「あっ…!ちょーくん、元気そうで良かった!」

「リリカ?どうしてここに……というか、これ何だ?」


 俺は自分が寝かせられていた物に指をさす。

 それをリリカは、自慢げに胸を張って堂々と説明する。


「それ?それはねぇ……。あたしお手製のハンモックだよ!寝心地最高だったでしょ?」

「お…おう。確かに気持ちいいけど……。」


(ちょっとネバネバする…。)


「いや!それより…俺の身体、治ってる?」


 輝龍との戦闘でボロボロだったはずの身体が傷一つ見当たらない。


「あたしが見つけた時には特に目立った外傷は無かったよ〜。あ、嘘。一つだけあった。」

「えっ、どこ?」

「ここ。」


 リリカがポケットからスマホを取り出し見せてきたので、そこに表示された画像を覗き込む。そこに映し出されたのは、俺の背中にデカデカと真っ赤な紅葉跡。


「どしたの?これ。誰かに応援でもされた?…な〜んて。」

「夢じゃ、なかったのか……。」

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