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エボシオリ  作者: 緑兵 鍊
2章

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33/34

30節 vs輝龍(終)

 炎と雷が幾度も衝突し、爆発音が鳴り響く。

 俺と輝龍は互いに背中を見せることなく、超至近距離で殴り合う。


「「ウオオォ!!」」


 輝龍の拳を神器の眼で読み、籠手でいなし、ガラ空きとなった懐に炎の拳を打ち込む。


 神器の三重使用。

 身体能力が向上し、対等に殴り合えるようにはなったが、ものすごく消耗する。

 体力とはまた別の、"気力"のようなものがゴリゴリと削られていく感覚がある。


 あまり長引かせてはいけない。


「グハッ!……オラァァァ!!」


 輝龍の反撃。

 反対の腕で殴りかかってくるが、またも籠手でいなす。その際、纏っていた雷撃に触れ、全身を駆け巡る。


「くっ……!ぐおおお!!」


 痺れる痛みを根性で耐え、お返しの一発を鳩尾に叩き込む。

 綺麗に入り、しんどそうな表情で腹を抑える。


「…電光雷轟でんこうらいごうッ!!」


 空を裂いた無数の雷が、雨のように降り注ぐ。


 一本や二本じゃない。

 木々、地面を穿つ雷撃が、

 逃げ場を塗り潰すように森一帯を覆い尽くした。


(くそっ、数が多い……!焔転えんてんで避けるしかない!)


一瞬の判断の遅れが、そのまま致命傷に繋がる速度だ。


「…っ!」


 左腕にピリッと痛みが走る。

 だが、稲妻が貫く前に俺の身体は炎となって、掠っただけで済んだ。


 炎の道をくぐって輝龍の背後に旋回し、焔転を解除、噴射口を向ける。

 しかし、突然下から強い衝撃が噴射口を襲い、俺の身体は浮上する。


「…ぐっ!?」


(ノールックで踵蹴り上げ……!?)


「焔転後の回り込みなんざ、読めてんだよ!

 …そして、周囲に炎がない空中じゃ焔転を使えねえ事っつー"弱点"も知ってる。

 そうなったら、もう詰みだ!……あばよ!!」


 強い奴と戦いたがる輝龍の性格からして何度も善治と手合わせをしているのだろう。つまり、火炎放射器の神器の使い方や弱点は既に把握しているということだ。


 輝龍は片脚を突き上げた状態から身体を半回転させ、雷を纏った拳を振り上げようとしていた。


(詰み?…いや……。)


 打ち上げられた噴射口から出来うる限り放出範囲を絞って高密度の火炎を噴出させる。

 だが、俺はソレを輝龍とは逆方向に噴射した。


「ヤケになったか!」


 極太のガスバーナーのような炎が俺の身体を押し出し、輝龍の拳が届くよりも速く接近に成功する。

 ジェット噴射の推進力を利用した空中移動だ。


 その勢いのまま、奴の顔面を踏みつけるように蹴りを入れた。


「ゴハッ!!?」


 倒れることは無かったが、後方に数歩よろけ、顔をしかめる輝龍。潰された鼻からは血が垂れていた。


「「ハァ、ハァ…!!」」


 お互いの呼吸が共鳴するように重なる。


「オレに攻撃を与えられてそんなに嬉しいか?」

「…えっ?」

「気づいてないのか?オメェ——」


「——楽しそうに笑ってんぞ。」

「…………は?」


 左手で顔に触れる。

 歪に吊り上がる口角。明らかに笑っている。

 無意識だった。俺は無意識で笑っていたのか。


 今にも倒れそうなボロボロの身体。

 全身からの痛みの警告を受けていながら、それでもこの戦いを辞めることは頭に無かった。

 それはコイツが危険でのさばらせる訳にはいかないからであって、

決して楽しかったからでは——。



 ……本当に?

 本当は、戦いが面白くなってきたんじゃない?



 頭の中に声が聞こえる。ツバキでも火炎放射器の男でもない、捉えどころの無い中性的な声。


(……違う。)



 暴力を振るうのキモチイイもんね。

 …殴るの、楽しいでしょ?



(違う……!)



 だって仕方ないよ……。

 キミはお父さんの…あの熊坂の血が流れているんだから。



(……っ!?ふざけ——)


「チョウスケ!!」


 ツバキの声で我に返る。

 目の前には雷を纏った輝龍が拳を振り下ろしていた。


 咄嗟の事に焔転が使えず、左手の籠手で直撃を防ぐ。

 その破壊力は中まで衝撃が伝わり、骨が軋む。その後、雷撃が全身を走り、激痛が走る。


「うぐぅ……っ!!」


 後方へ勢いよく吹き飛び、樹木に激突する。

 腰を伸ばせず、背中を折り曲げた前屈みの姿勢で、ぎこちなく立ち上がる。


「ボーッとしてんじゃねえ!ブッ殺すぞ!」


 敵に怒られるという稀有けうな状況だが、正論だ。

 今はコイツに勝つことだけを考えないといけない。

 気持ちの整理は後回しだ。


「悪い、おかげで目が覚めた……やろうぜ。」

「……へっ、そうこなくちゃなぁ…!」


 お互い目が合って何となく悟る。

 "次で最後だ"…と。


 輝龍の背後にいた雷龍が激しく吠えると、大きく口が開く。

 その口の中に莫大な雷の塊が集中し、辺りを震わせ、轟かす。

 あの時、森を抉った大技だ。


「逃げ場は潰した…!テメェも…全開で来い!!」


 そこで、初めて気付く。

 この辺一帯燃え盛っていた炎が消えていることに。

 焔転で逃げられないように裏工作を済ませていたとは……見かけによらず頭が回る奴だ。


「はなから、逃げるつもりは無えよ…!!」


 震える右手を反対の手で支え噴射口を向ける。

 キィィ…と内部で駆動音が鳴り、噴射口の奥で炎が唸り声を上げるように渦を巻き、椿の文様がそれに応えるように強く光った瞬間、俺は叫ぶ。


炎葬えんそう!」


撃滅雷震(げきめつライフル)!!」


 ほぼ同時に放たれた巨大な炎と雷が真正面から噛み合った瞬間、轟音と共に衝撃波が弾け、周囲の樹木が根こそぎ吹き飛び、地面は抉れた。


 衝突点が白く潰れ、次の刹那——世界から色と音が消えた。



 ———



 神津島・東の森 跡地


「おい!いたぞ!ここだ!」

「き、輝龍隊員…!?し、死んでるんですか…!?」

「……いや、酷い火傷だが、生きている…!早く手当を…!」


「水主副隊長殿の命令で後を追ってみれば、なんだこの有様は…。燃え尽きた焦土しか残っていない。…ミサイルでも撃ち込まれたのか?」

「…待ってください。輝龍隊員がやられたという事は——、敵がまだ近くに潜んでいるんじゃないですか!?」

「その可能性は否定できないが、輝龍隊員相手に無傷な訳がない。それに、トドメを刺していないのが不自然だ。

 相打ちで木っ端微塵、若しくは瀕死状態で意識不明なのは間違い無いだろう。」

「なるほど…。では我々はどうします?ソイツを探して確実に殺しますか?」


「俺達捜索班は神器の回収がメインだ。わざわざ危険な事に首を突っ込む必要は無い。それに——"あの方"がいる限り、俺たちが負ける事は絶対に無い。」

「…それもそうですね。」

「とりあえず、輝龍隊員を安全な場所に運んだ後、捜索を再開するぞ。」

「了解。」



 長助 vs 輝龍

 勝者 ???

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