29節 vs輝龍(その4)
「その力…それが奥の手ってワケか。
あの状況から火ダルマにされるとは予想外だったぜ…!
死に際まで隠し持っとくたぁ、ブッ飛んでんなぁ!」
(いや、違う…。)
そんなはずはない。
何故ここに善治の神器がある?
親父の家での一件後、病院で加賀さんに渡したはずだ。
『お前から喚んだくせに――。』
ふと、善治の姿を借りた謎の男の言葉が脳裏に浮かぶ。
「俺が、喚んだ………まさか、アイツの正体は――。」
「何ゴチャゴチャ言ってんだ!戦いはまだ終わってないぜ!!」
――バリバリッ!!
「電光雷轟!」
輝龍から放たれた雷が、辺りに飛散し、縦横無尽に荒れ狂う。
「ぐっ……!」
避けようと身体を動かそうとするが、
身体が言うことを聞かず、その場に片膝を付く。
全身の筋肉が痺れと痛みを訴えていた。
(無理だ…!避けられねぇ…!)
せっかく反撃のチャンスを得たというのに、何もできないまま終わってしまう――。
「クックック…」
さらにはあの不快な笑い声の幻聴が聞こえ出す始末。俺の身体は既に限界らしい。
「やれやれ…情けない主人の為に、俺が少しだけ力を貸してやる。」
「なっ…身体が勝手に…!?」
頭の中に聞き覚えのある声が聞こえたと思えば、右手の噴射口がひとりでに動き出し、銃口が下に向く。
そして、椿の文様が光りだしたと同時に炎が発射される。
地面に衝突し、行き場を失った炎は地面を沿って、前方へ扇状に広がる。
「火種は撒いてやった。後は、分かるよな?」
「…!」
拡散した雷撃が肌に触れる直前、俺の身体は消失し、すり抜けた。
いや、身体が消えたのではない。
俺は、炎そのものになったのだ。
「消えた…!?いや、違ぇ!!この技は…!」
『焔転』
炎と一体化した俺は火の導線をくぐり、輝龍との距離を一気に詰め、背後を取る。
その瞬間、俺の身体は再び形を取り戻す。
炎になったことで、雷に灼かれた傷は消え、少しだけ身体の自由が効くようになった。
「……っ!うしろ――ブッ!?」
「…ラァァァ!!」
鈍い衝撃音。
拳に宿った焔が、振り返った輝龍の顎を撃ち抜き、その巨体が後方へ弾き飛ばされる。
…が、輝龍は痛みで顔を歪めるどころか、楽しそうにニヤリと笑っていた。
「『焔転』…!善治さんと同じ技を……。
本人と戦った時を思い出すぜ…!」
「……!」
輝龍の纏っている電気がより一層高まり、再び雷龍が顕現する。
雷龍は咆哮を上げ、周囲に無数の落雷を降らせる。
電撃が弾ける重低音が内蔵を揺らし、圧し潰すようなプレッシャーを放っていた。
「面白れぇ!二回戦と洒落込もうじゃねぇか――熊坂長助っ!!」
「上等だ……!今度こそ――決着をつけてやる!!」




