27節 vs輝龍(その2)
「俺は、熊坂長助。最強を目指す男を"倒す男"だ。ヨロシクな…!」
「……はっ!言ってくれるじゃねぇか!熊坂長助か……その名前、よぉーく覚えたぜ…!
…ん?待てよ?盗賊団の名前も確か熊坂だったな?……てことは!テメェが親分か!」
「いや、違うけど…。」
「違えのかよ!!」
(いちいち反応がデカいなコイツ…。大きいチワワか。)
触れば音の出るおもちゃとして仲間内でも可愛がられていそうだ。
「つか、神器返せ!」
大きな腕を振り下ろして俺を掴もうとするが、スルスルと間を抜けて回避する。どうせならバカにしてやろう。輝龍に向けてお尻を突き出し、ペンペンと叩く。
「やーい、返してほしければ捕まえてみろ〜!」
「おい!ざっけんなよ!!……けど、まあいいか。どうせオレの神器は誰も使えないし。」
「…どういう意味だ?」
もっと悔しがると思っていたのに、この反応は意外だった。今まで出会った奴らは神器を奪われた、又は奪われそうになった時は必死になって抵抗していた。輝龍なんて特に焦りそうな性格をしていそうだし。
「そのまんまの意味だよ。その神器はオレにしか扱えない特別なもんだからな。」
「へーそれなら、見せてやるよ。俺の力を!」
左手の籠手で手斧を握りしめる。すると、淡い光を放ち、手斧が金龍が入った黒ベストに変形する。
「あ~あ……どうなっても知らねぇぞ…。」
輝龍が何か言っていたが、構わず意識を黒ベストに集中する。
『 』
―――バチッ。
バリバリバリッ!!
「ぐああああ!?」
突然の衝撃に、最初は何が起こったのか分からなかった。火花が散った後、おびただしい量の電流が全身を流れたのだ。
自身が出した電気を消すために無我夢中で黒ベストを解除した。
「はぁ……はぁ……はぁ……。」
四つん這いで倒れる俺の元にゆっくりと近付く足音が聞こえる。
「"洗礼"を喰らった気分はどうだ?」
「せ、洗礼…?」
手放して手斧に戻った神器を輝龍が拾い上げ、コンコンと刃の腹を叩く。
「コイツは自分が認めた奴にしか能力を与えない。だから、試すんだよ。今みたいに雷撃を流してな。」
「……使い手として認めてもらうまで今のを耐え続けろと?」
「ああ、その通りだ…!
でもまあ、落ち込む必要はないぜ?この洗礼で潰された奴らなんてごまんといる。その点、テメェは灼かれて灰になるどころか身体残して意識を保てたんだ、誇っていいぜ。」
(なんてこった…!それじゃあ奪っても使えないって事かよ…!?)
輝龍は神器を解放し、オレの首を掴んで持ち上げる。苦しくて外そうともがいても鋼の肉体に抵抗するほどの力は俺にはなかった。
せっかく奪ったのに今ので全部無駄になった。それどころか、今の状況はかなり詰んでいる。このまま電気を流されたら俺は死ぬ。
「さあ、どうする?あんだけでかい口叩いといて、まさかこのまま終わるなんてことはねぇよなぁ?」
「ぐぐっ……!!」
「チョウスケ!?」
どうする。このままでは死んでしまう。何かないか。この状況を打破できる何か…。
(くそっ…!何もねえ…!!せめて、拘束を抜けられるか、攻撃用の神器があれば……。)
「んだよ…。本当に何もなしか?なら、オレからも"洗礼"をやるよ。オレの雷撃を10秒耐えられたら生け捕りにしてやる。ほら…頑張って、耐えてみなっ!」
——バリバリバリッ!!
「うがああああぁぁ!!!」
「十、九——。」
筋肉が収縮し、全身に痛みが走る。
途中からカウントダウンが聞こえなくなり、残った感覚は細胞が内部から破壊されていく痛覚だけだ。
しかし、痛みすらも希薄になり意識が遠のいていく。そのおかげか最後に考える時間が生まれた。ほんの一瞬。本当に少しだけの余裕が奇跡的に起きた。その奇跡の瞬間に俺は————。
(あ…これ、火炎男と同じ状況だな…。)
そんなくだらないことを考えていた。




