26節 vs輝龍(その1)
「オラオラッ!!こんなもんか?テメェの実力はよ!!」
輝龍の戦闘スタイルは電撃をまとった拳で殴ってくる近接戦闘型。スピードもかなり速いが、夜千代や輝夜ほどでは無い。眼を使えば簡単に避けられる。
だが、問題はそこじゃない。
俺は奴の振るった拳を避け、完璧な左カウンターを顔面に決める。頑丈な籠手で殴りつけた手痛い一撃。……のはずなのに。
「っ硬過ぎんだろ……!その皮膚、鋼鉄でできてんのか!?」
「……ぬりぃなあ…。全然痛くねぇぞ!オラァァ!」
「おわっ!!?…あっぶねー…。放電で灼かれるところだった…。」
問題その1。
戦闘が始まってから何度も攻撃を与えているが、びくともしない。
試してないが、刃物でも折れるんじゃないかというくらい奴の身体はガチガチに硬い。
——バチバチッ!
「…!!」
俺が後ろに飛び退いて着地する瞬間、狙いすましたかのように球体の電気玉が飛んできた。その出処は輝龍の後ろにいる雷龍。アイツが口からエネルギー弾を放ってきているのだ。
迫る光弾を、紙一重の軌道で次々とかわし、地面を転がって木の裏に飛び込む。
これが問題その2。
後ろにいるオマケが輝龍の単調な攻撃の穴を埋めてくる。そのため中々隙ができず、攻めるのが難しい。
そっと覗き込むと、輝龍は首を左右に倒し、ポキポキと音を鳴らしていた。そして不満げな顔で面白くなさそうにチッと舌打ちをした。
「早く出てこいよ。俺の雷撃はそいつごとぶっ飛ばすぜ?」
挑発めいた脅しをかける輝龍。
当然その言葉には乗らない。
俺は黙って奴がしびれを切らす瞬間を待つ。
「……ああ、そうかい。楽しめる相手だと思ったけど期待外れだったな。」
輝龍の後ろにいる雷龍の口が開く。
エネルギーが集中してゴロゴロ…!と雷雲に轟く雷のような音を立てる。
その矛先は、俺が隠れていた方向へと向けられる。
「撃滅雷震!!」
一瞬、木々の影が白く浮かぶ。
それほどの光度を持つ巨大な電気エネルギーが雷龍の口から発射され、螺旋を描きながら草木を跡形もなく灼き尽くす。
大きなミミズが這ったような深く抉れた地面が焦土と化していた。
「……あ"~〜!!つまんねぇ!!イライラするぜ!!」
「善治さん倒した奴って聞いてたから期待してたのに、この程度かよ。
こんな奴にやられるなんてあの人も落ちたな。」
輝龍は神器を解除し、背を向けて歩き出す。
―――闇の中に己を狙う影がいる事に気付かずに。
輝龍の背後から淡い光が溢れる。
「…!!?なん―――」
輝龍がすぐに反応を示し、振り返りつつも自身の神器を解放させようとする。
しかし、遅い。
奴が手に持っていた古びた手斧は消失し、いつの間にか影の手の中に収まっていた。
黒い影が徐々に溶け、その正体が露わになる。
暗闇の中でも金色に光るひび割れた目が異彩を放っていた。
「…!その目……いや、それはいい……テメェ、名は?」
その質問に、俺は待ってましたと言わんばかりに口角を吊り上げ、不敵に笑う。
「俺は、熊坂長助。最強を目指す男を"倒す男"だ。ヨロシクな…!」




