23節 雷龍襲来
俺達は休憩後、車で次の作戦を考えていた。
しかし、何やらツバキの様子がおかしい。さっきから妙にソワソワしている。
「どうした?ツバキ。」
「チョウスケ、ジンギのはんのう、あった。」
「なっ!?どこに!?」
「あっち。」
手ぬぐいがもぞもぞ動いて方向を示す。西の方向。そこに神器があるというのだ。
「でも、ひとつじゃない。おおきいの、よっつ。ちいさいの、ごこ。」
「…幻神隊か?」
俺はその内容を夜千代たちへ伝えると、二人も同じ結論に至り、捜索方針を変更することになった。
夜千代とリリカが幻神隊の牽制と撃退、俺が捜索に専念するという役割分担だ。
「そういえば聞いてなかったけど、リリカも神器持ちか。戦えんの?」
「もちろん!しかも、吉川家相伝のすっごいやつだから期待していいよ〜!」
「何それ!見たい!!見せてくれよ!」
「ふふん…!そう簡単には見せられないな〜。…でも、体験させてあげるなら——。」
「梨々香。」
ピシャリと夜千代が遮った。
抑えた声に、うっすらと怒気を感じる。
リリカは肩をすくめ、舌をちょこんと出すだけで何も言わなかった。
突然訪れる重いの空気に、俺も面食らう。何が夜千代の機嫌を損ねたのかよくわからなかった。これ以上リリカの神器には触れない方が良さそうだ。
「あー…とりあえず、リリカも戦えるって事は分かったからそれで充分だ。後は——…。」
集合地点、合図、撤退経路を確認していく。
作戦会議は問題なく終わり、いよいよ動き出そうとした時だった。
「……ニャー」
愛くるしい鳴き声。
膝元にあの白い猫が擦り寄ってきた。
「そうだったな。そろそろ帰してやらないと。」
撫でると、猫は喉を心地よさそうに鳴らす。
念のためツバキに神器反応を確認してもらったが、やはり何も持っていなかった。
元気も戻ったし、村で放せば家に戻れるだろう。
少し名残惜しく感じながら車のドアを開ける。
放たれた白い小さな影は、何度もこちらを振り返りながら闇の中へ消えていった。
「…さて、俺たちも行こうぜ。」
俺の言葉に二人は頷き、幻神隊がいると思われる西側へ駆けていく。
俺も神器を解放し、まだ見ていない東の森へ走り出した。
———
東の森は、人が住んでいない原生の地。そのため、人工物は少なく、辺りも真っ暗だった。普通なら捜索なんて行えないレベルだ。
しかし、俺には月ヶ瀬の神器がある。
そのおかげで視界は昼間と変わらない。俺が捜索係に選ばれたのはこの理由が大きい。
「ツバキ、まだ神器の反応は無いのか?」
「……ない。」
かなり奥まで進んだが、ツバキの感知に何も引っかからない。ここまで来ると本当にあるのかすら疑わしくなる。
その時、後方から強烈な光が打ち上がった。
夜なのに島が照明に照らされたように明るくなる。やがて一筋の光は雲を突き抜け、また暗闇に戻る。
「何だ…?今の…。」
夜千代達の方で何かあったのだろうか。そんなことを考えていると——。
——バチッ。
ドガァァァン!!
内臓まで震わせるほどの重低音が響き渡る。俺の目の前で、さっきの閃光…雷が降ってきた。
雷が落ちた場所はクレーター状に抉れていた。クレーターの中心では砂煙の奥で電光が弾け続けている。
あと数歩位置が違っていたら——間違いなく炭だった。
その事実にゾッとし、冷や汗が噴き出る。
「自然災害…な訳ねえよな。」
「ああ、オレの力だ。」
「!?」
クレーターの中から大柄の男が現れる。
逆立った金髪に盛り上がった筋肉。それだけ見れば、どこぞの戦闘民族みたいな特徴だが、金色の龍がデザインされた黒いベストを着ていたのでどちらかというと極道とか筋者に近い。
「幻神隊だな。どうして俺の位置が分かった?」
「あ?知らねぇよ。適当に降りたら、そこにテメェがいたんだろ」
「……ただの偶然かよ……!?」
いくら何でも悪運過ぎる。
だが、感知能力が無いと分かっただけありがたい。
「オレからも聞きたい事があるぜ盗賊団。善治さんを殺ったのはテメエか?」
(善治…?)
「そんな奴知らねぇよ。」
「火炎放射してくる前屈みのおっさんだよ。」
「アイツか…!」
親父の実家で俺と夜千代を苦しめたイカれ放火魔。まさかこんな所で名前を知ることになるとは。
「ハッ!その反応、どうやら今日のオレはマジでついてるみてーだな!」
「何だ?敵討ちでもしようってか?」
「バーカ、そんなつまんねー理由じゃねぇよ。」
「オレは強ぇ奴と戦いたいだけだ——!」
バリバリバリッ!!
男の周囲に電撃が迸り、細長いソレは木々の間をうねる。
「龍……!!」
「オレの名は輝龍。いずれ幻神隊最強となる男だ!ヨロシクなぁ…!!」




