18節 いざ、神津島へ(後編)
事実上、存在するのがあり得ない他の人を治療できる神器。その神器が見つかったと聞き、居てもたっても居られず、病院である事を忘れて大声で聞き返す。
「マジか!?」
「お!リアクションいいね!そういうの待ってた〜。」
「…でも、ちょっと待ってくれ。尋問して分かった情報だろ?信用できるのか?」
「それはダイジョーブ!あたしがしっかり尋問してるから!」
リリカが自信満々に胸を叩く。その答えを聞いて更に不安になった。尋問といったら強面のおっさんが高圧的に詰めるイメージだ。その対極にいるリリカが尋問をする姿なんて想像出来ない。
「問題はそこじゃない。その情報を幻神隊が持っているなら、今更行ったところでそいつはもう神器を取られてるだろ。」
「それが、そうとも限らないんだよね〜。」
夜千代の指摘にリリカは指を振って否定する。
「どうやら、見つかったのが昨日らしいの。キミたちと交戦前に連絡が来て、回収予定が2日後の正午。つまり、明日って訳!」
その情報が本当ならまだ回収されてない可能性がある。
「だから、幻神隊が回収しちゃう前にあたしたちが頂いちゃおーって話になったんだけど…タイミング悪いことに、主力陣はみーんな出払ってるんだよね〜…。」
リリカの眉がハの字に下がり、溜息を吐く。サングラス越しでも困っているのが丸わかりだ。
どうやら、盗賊団のメンバー全員が神器を持っている訳ではないらしく、中でも戦闘向けの神器を持った人達は他の任務で忙しいとの事だ。
「そういうわけで…ゴメーン!二人とも手伝って!」
俺と同じ高さにあった頭を下げて、顔の前で手を合わせてお茶目にお願いするリリカ。サングラスの隙間から覗く上目遣いと胸元が空いた服からの双山の谷間のダブルコンボに目が離れなかった。
断る理由どころか月ヶ瀬の怪我を治すチャンスでメリットしかない。リリカ様の頼みに快く承諾しようと口を開いた瞬間、頭から雷撃に打たれたような痛みが走る。
「痛ってぇー!?何すんだ夜千代!」
なんと夜千代が俺の頭を引っ叩いたのだ。しかも、昨日槍の柄で殴った箇所を。
夜千代は、侮蔑の表情を浮かべてフンと鼻を鳴らす。
「梨々香、あまり変な行動はするな。」
「えー?もしかして、心配してるの〜?」
「梨々香。」
「もー、分かったよ〜。」
(コイツ……嫉妬してるのか?)
今のはどう見ても他の男に色目を使った彼女を叱る彼氏の行動だった。
(はは~ん…そういう事ね…。)
夜千代の新しい弱点を見つけて笑みがこぼれる。その顔を見た夜千代は眉間にシワを寄せて俺を睨んだ。
「お前、…何か良くないこと考えてるだろ。」
「えぇー?いいや〜、別に〜?」
「おい…その不気味顔をやめろ…。見てると鳥肌が立つ。」
「誰が不気味顔だ!?」
俺と夜千代の喧嘩が始まりそうになったところで、リリカの仲裁が入る。そして、改めて任務の協力を頼んできた。今度はあざといポーズは無しで。
話が脱線してしまったが俺の答えは変わらない。
「俺は行くぞ。月ヶ瀬の命がかかってるんだ、やるしかねえ。」
月ヶ瀬は命令に逆らってでも俺を助けてくれた。この借りは絶対に返さないといけない。
俺の返答にリリカは喜び、感謝の意を述べる。夜千代も返答こそ無かったが、リリカの頼みに頷いた。
「二人ともありがと~!それじゃあ、早速行こっか!」
「そういや、その人どこにいるんだ?」
「フフン、良くぞ聞いてくれたね…!なんと…この場所で〜す!!」
梨々香がスマホを取り出し、俺たちに見せつける。そこには、満点の星空が写された一枚のポスターが表示されており、『神津島』と書かれていた。
「……マジ?」
こうして、月ヶ瀬を治す旅が始まった。




