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エボシオリ  作者: 緑兵 鍊
2章

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17節 いざ、神津島へ(前編)

「ちょーくん、大丈夫ー?」

「俺は…もう…駄目かもしれない……。」


 俺は今、海の上にいる。目的は一つ、月ヶ瀬を治すためだ。


 そのために、俺は船で東京から南にある伊豆諸島の一つ、神津島へ旅する事になった。


「オロロロロロロロロ!!」

「あー!?ちょーくんが吐いた〜!」



 ーーー


「月ヶ瀬さんの手術は終了しました。かなりひどい状態でしたが、何とか一命を取り留めました。」


 医者から言われた一言で緊張の糸が一気に切れ、喜びで飛び上がるより先に全身の力が抜けた。


「心臓が止まって30分以上経っていたのに、細胞の死滅が始まっていなかった。まるで……時間が止まっていたようでした。正に奇跡です。」


「ですが…正直、回復は絶望的です。意識が戻るかどうかも不明で…。」

「そうですか……でも、生きてて良かったです。」



 医者との会話を終え、集中治療室で管に繋がれ昏睡状態の月ヶ瀬をガラス越しに眺める。時間を忘れてしばらくボーッと眺めていると、廊下の奥からやって来た夜千代に声を掛けられる。


「長助。」

「おう、夜千代か。もう輝夜の件についての連絡は済んだのか?」

「ああ、とりあえず簡単な報告は済ませて来た。」


 夜千代は今回の件を盗賊団に報告するために、救急車を呼んだ後、別行動をしていた。

 ついさっき輝夜を捕虜として身柄を引き渡してきたらしい。


「月ヶ瀬、生き延びたみたいだな。」

「ああ、…でも意識が戻るかは分からないらしい。」

「そうか。」


 淡白な返事ではあったが、その表情はどこかホッとしているように見えた。


「なあ…盗賊団で怪我を治す神器持っている奴はいないのか?」

「いないな。そもそも、治療系の神器なんて、使用者自身を治す事はあっても、他人を治す事は出来ないものばかりだ。」

「え?そうなのか?」


 ゲームとかだとヒーラーや回復アイテムなんかは定番だから神器にも回復タイプがあると思っていた。


「現実はそんなに甘くない。もし他人を治す神器を持っている奴がいるなら、そいつは人を治すことを生きがいにしている聖人様みたいな人だろう。」

「…割と居そうじゃね?医者とか。」


「本当にそう思うか?神器が生まれるほどの願いが他人の為なんだぞ?」

「うーん…それってそんなにおかしい事なのか?」


 世の中には献身的な人だっている。誰かを助けるために神器が生まれる……何もおかしい話ではない。


「考え方を変えてみろ。医者が治療するのは何の為だ?」

「そりゃ命を救う為だろ。」

「じゃあ、治療しても今後一切、報酬が支払われないとしたら?それでも治療するか?」

「…するんじゃねーの?人の命がかかってるんだし…。」

「まあ、する奴はいるだろうな。」

「おい…結局、何が言いたいんだよ?全然意味分かんねーぞ。」


「今のが答えだよ。報酬が支払われないと聞いて、一瞬、迷っただろ?」

「…ああ。」

「その時点でもう駄目だ。本当に他人を治す事を生きがいにしている奴なら、報酬なんて関係ない。たとえ自分や大切なもの全てを犠牲にしてでも即答する。」

「そんな奴いるか?」

「だから他人を治療する神器が生まれないんだ。」


 夜千代の言葉に納得せざるを得なかった。見ず知らずの他人の為に、自分だけならまだしも家族や友達が犠牲になるというなら俺はやらない。


 向かいにあったソファに溶けるように腰掛け、天井を仰ぐ。

 治療する神器がないのなら、このまま回復を待つことしかできないのだろうか?


「ねえ、なんかここ暗くない?…あ!明かりの話じゃなくて空気の話ね?」


 奥の廊下から場違いな明るい声が響いてきた。

 声の方向に目をやると、金色の長髪にサングラスを掛けた女性が立っていた。



 ーーー


 金髪の女はサングラスを上にあげて、紫の瞳を晒らす。顔は整っていたが外国人のように彫りは深くない。恐らく日本人だ。

 俺と目が合うと、ニっと不敵に笑みを浮かべた。


「へえ…キミが……。」

「…誰だ?」


 即座に立ち上がって警戒態勢をとる。すると、その女は目を丸くし、その後すぐに笑い出す。


「アハハッ!!ごめん、ごめん!あたし、ヤッチーと同業者!ねー?」

「…は?」


 女はヤッチーと呼びながら、俺の後ろの相手に手を振る。

 俺は振り返ると、夜千代が目を逸らし、明後日の方向を見つめていた。


「…まさか、お前がヤッチー?」

「……黙れ…。」




「あたし、吉川梨々香!『吉川家の光属性』といったらあたしのことだからよろしく〜!」

「お…おう。俺は熊坂長助。よろしく…吉川さん。」

「え〜なんか距離遠くない?リリカって呼んでいいよっ!ちょーくん!」


 リリカは、顔の前でOKサインを作ってピースをする。こんな明るい人が盗賊団の一員なんて何かの間違いじゃないのか。


「何の用だ?梨々香。」

「もう〜ヤッチーったら、相変わらずお堅いんだから〜。」


 リリカに肘でつつかれて鬱陶しそうに目を瞑る夜千代。困っている夜千代を見れて俺は満足だ。


「あのね、グーヤ…捕虜のお姉さんの尋問をしたんだけど、面白いことが分かったんだ。」

「面白いこと?」


 リリカは月ヶ瀬を横目で見た後、真剣な表情に変わる。


「他の人を治せる治療系の神器持ちが見つかったらしいんだけど…行く?」

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