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エボシオリ  作者: 緑兵 鍊
2章

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11節 魔法成女

 黒いドレスの女はウェーブのかかった髪を手の甲で掻き上げる。ドレスやステッキといい、見た目は魔法少女なのにその雰囲気は少女とはかけ離れた大人の仕草だ。これでは魔法少女というより魔法成女といったところだろう。


(幻神隊。それが加賀さんが言っていた"奴ら"の名称なのか?)


「夜千代…。」

「お前は関わるな。ここからは僕の仕事だ。」


 夜千代は俺に聞く暇を与えず、槍を構え姿勢を低くすると目にも止まらぬ速さで真っ直ぐに女に突撃する。


「あら怖い…でも私には止まって見えるわ。」


 夜千代の動きが異様に遅くなる。押さえつけられて止められたというより、夜千代だけが時間の流れが遅くなったように見える。


「何だこれ…!身体が…!」

「フフフッ…!不思議でしょ?貴方は今、魔法の力によって自分だけが遅くなっているのよ。」


 魔法がごく普通に存在するかのような発言。遅くする魔法がコイツの能力なのだろうか?しかし、それではブランコをひしゃげたあの力の説明がつかない。


「ツバキ!」


 夜千代を助けるために神器を解放し、敵の神器を奪おうと手を向ける。俺の動きに気付いた女は闇の中に姿を消したかと思えば、一瞬で目の前に現れ、俺の鳩尾にステッキを振り抜く。


「うっ!?ぐおお…!!」


 間一髪で籠手で防御することに成功するが、その威力は籠手ごしでも前腕が痺れるほどの重い衝撃だった。


「へぇ…中々の反射神経ね。結構力使ったんだけど反応されちゃったわ。貴方の能力はちょっと厄介だからここで潰しておきたかったんだけど…。」

「俺の能力を知ってんのか?アンタとは初めて会ったんだけどな。」


 女は口々に手を当ててクスクスと笑い、首を横に傾けながら肩をすくめる。答える気が無さそうな態度にほんの少しカチンと来たが、ここで焦って突っ込んでは相手の思うツボだ。冷静に能力の分析をするべく、足元に落ちていた手頃な小石を素早く拾い、奴に投げつけた。


 すると、黒いドレスの女はハートを描くようにステッキを振り回す。その瞬間、鋭い角度で向かって行った小石の動きが止まる。…いや、止まったかと思うほど鈍い動きで進んでいた。驚きなのはそれだけ遅く進んでいるというのに物理法則を無視し、宙に留まり続けていたことだ。夜千代の時と同じく、本当に時間だけが遅くなっているように。


「魔法使いに飛び道具は無意味よ。信じられないなら何度でも付き合ってあげる…!」


 得意気な顔をして極限に遅くなった小石を片手で掴むとノールックで後ろに放り投げる。投げられた小石は先程までの不可解な動きが嘘のように綺麗な弧を描いて地面へ落ちていった。



 俺は手頃な石がないか辺りを見渡しながら公園を駆ける。見つけるたび、止まらず身体をひねり、地面に手を伸ばして拾い続けていく。片手に収まりきらないほど集めると、ピッチングマシンのように上から振りかぶって思いっ切り投げ飛ばした。小石の散弾銃が降りかかり、ステッキを上げるのを見た瞬間、俺は左手の籠手を向ける。女は俺が何をしようとしているのか気付いたのか目を丸く見開いた。


「これも防げるか?」


 遅くする魔法と高速移動の魔法。どっちも強力なものではあるが、はたして同時発動は可能なのか?試してみる価値はある。


「奪え!ツバ…」

「残念…!出来ちゃうのよね…同時発動…!」

「…っ!?」


 右耳から女の声が聞こえる。咄嗟に防御しようと身体を向き直そうとするが、こめかみから耐え難い衝撃が走る。身体が浮いて飛ばされる感覚がした後、背中にチクチクとする硬いクッションが当たる。どうやら公園を囲っている生垣までふっ飛ばされたようだ。意識が朦朧とし、倒れた身体を起こそうとするが力が上手く入らない。


(ヤベェな…。勝負を焦りすぎた……。)


 強過ぎる。ここまで視て始めに抱いた感想がそれだった。攻守ともに隙がない能力、それもデメリット無しときた。俺の神器も相手の神器を奪う反則技ではあるが、対象に左手を向けないといけないという条件がある。だから奴の場合、ステッキを振り回す事が条件だと思っていた。


 砂利を踏む足音が聞こえる。誰かが近づいてきている。ボンヤリとかすむ視界が捉えたのは白いスニーカーに上下とも黒のジーパンとパーカーを着た小柄な青年の姿だった。


「つ…き…がせ……?」


 敢え無く俺の意識はそこで落ちた。

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