③超能力一家の秘密~母編~
第三話です。主役は母親です。
「母親も能力者だ。話してもいいか?」
「超能力一家だから母親もだよね…。どうぞ続けて。」
「母さんはテレパシーを使うんだ。どんなに離れた相手にでも、自分の声を脳に直接届けることができる。」
「それ、なんか凄そう…でも、どんな場面でその能力が発揮されるのか、正直ちょっと想像できないな…」
「母さんの能力は世界を救う。波留、最近のトランプ元米大統領が狙撃された事件、知ってるか?」
「耳を銃弾がかすめたやつだよね?狙撃される直前に資料を見るために首を傾げたことで助かったっていう…」
「あれ、母さんがテレパシーで『左下を見て!』って伝えたらしいんだ。母さんがトランプの命を救ったんだよ。」
「お母さんは英語を話せるの?」
「いや、英語は話せない。何で急にそんなこと聞くんだよ?」
「………。いや、トランプの言語認識能力がすごいなと…。」
「あと最近、プーチンに『戦争をやめろ』って毎晩、寝る前に語りかけてるらしい。最近プーチン大統領、ちょっとやつれてきたと思わないか?母さんの地道な声掛けの効果が出ているのかも。」
「…念のため確認だけど、お母さんはロシア語はもちろん話せないよね?」
「英語を話せない人間がロシア語を話せるわけがない。ロシア人以外は。」
「……そうかもね」
「母さんは自分の地道な声かけの手応えを感じているみたい。『ウクライナ戦争もいつかは終わる』って自信満々に話してたよ。」
「まあ、人間は”いつか”は死ぬし、戦争も”いつか”は終わるとは思うけどね…。」
「実生活では母さんの能力はほとんど役に立たないけどな。家の2階にいる俺たちに『ご飯できたよー』ってテレパシーで伝えてくれるのは、ちょっと助かる。」
波留は心の中で思った。そもそもこの超能力は保谷家の遺伝によるものじゃないのか?なぜ母親まで超能力者なのか、理屈が正直よくわからない、と。
でも、それを口にはしなかった。
次回は第四話です。主役は兄です。