①瑠偉斗の秘密
超能力一家について簡単な物語にしてみました。6話完結です。感想聞かせてもらえると嬉しいです。
「瑠偉斗、突然こんな喫茶店に呼び出して、何?」
「ごめん、波留。俺たちって付き合って3か月経つよな。そろそろ本当の自分のこと、話しておかなきゃいけないと思って。」
「本当の自分?深刻そうな顔してどうしたの?」
「俺と付き合ってて、何かおかしいと思ったことないか?波留から見て、俺ってどう見えてる?」
「どう?瑠偉斗はすごくまじめだし、やさしいし、すごくいい感じだと思うよ。」
「そう、まじめな性格で、遅刻はおろか、大きな失敗なんて絶対にしない。いつもクレバーな言動で周囲の人間の尊敬を集め、人のことを怒らせるようなことは絶対にない、そんな素晴らしい人物。そう思っているだろう。」
「いや…、そこまでは正直思ってなかったけど…」
「実はまじめでも優しくもない。そういう人間に見えるところに俺の秘密がある…。」
「……秘密?」
「俺には特別な力があるっ!」
「そんな中二病的な発言を…」
「俺は時間を戻せるんだ。」
「時間を戻す?どういうこと?」
「だから何か失敗しても、俺は全部リセットしてやり直しができる。俺が大きな失敗や人の気に障る発言をしないのは、そのためだ。」
「そんなファミコンのリセットボタン押すようなことできるんだ……」
「朝寝坊して遅刻しそうになったとき、時間を戻してやり直すんだ。だから俺は今まで人生で一度も遅刻をしたことがない。失言して相手を怒らせても、またやり直せるから、人を怒らせるようなことをしたこともない。だから完璧な人間に見える。」
「いや、でもやっぱりちょっと信じられないよ。」
「わかる、普通じゃ考えられないよな。でも本当なんだよ。試験の時だって、何度もリセットして全部覚え直してるんだ。だから、全部満点!」
「え?それってズルくない?」
「何がズルいの?記憶力や理解力も個々に能力差があるだろ?それを駆使してみんな試験を受けるんだ。俺も自分の能力を使って試験を受けてるだけだよ。だいたいどの試験要項見ても、禁止事項に『時間を戻してはいけません』って書いてないよな。」
「……。でもそんな能力持ってるなら、入試で東大にでも入れたんじゃないの?」
「俺も考えたことあるよ。でもな、東大の問題は難しすぎて、まず覚えられない。覚えたとしても、そもそも解けない。その問題の解き方を予備校の先生に訊くわけにもいかないし。」
波留は心の中で思った。もし瑠偉斗が言っていることが本当なら、東大は無理としても、もっと偏差値の高い大学に入れたのではないか。それなのに、自分と同じ大学にいる瑠偉斗は、もしかしてだいぶ馬鹿なんじゃないかと。
でも、それを口にはしなかった。
次回からは超能力一家についての話になります。