人権がない俺が、身長170kmになったらめちゃくちゃ人権が生まれた件
慈愛庵斗 巨人 (じあいあんと なおひと)
本作の主人公。
日本出身で両親も純日本人だがポリコレ配慮のため、黒人である。
神の手違いで死んだためお詫びとして身長が170kmになる。
「ごめんなさい、私身長が低い人とは付き合えないの」
「……」
俺を振ったクラスメイトの高橋さんは俺を振り返りもせず教室へと戻っていった。
「……またか」
また俺は同じ理由で振られてしまった。
いつもそうだった。
身長が低い、ただそれだけの理由で振られる。
身だしなみに気を使い、体づくり、勉強、ボイストレーニング、モテそうなことはなんでもやった。
だがどれだけ努力しようと背の高さだけはどうすることも出来なかった。
現在、俺の身長は160cm。
学年の平均より8cmも低い。
「なんでだよ……身長がそんなに大事なのか……? そんなのどうしようもないじゃないか……竹馬でも乗ろうかな」
つま先から膝にかけて崩れ落ちた俺は深い絶望に落ちていくしかなかった。
ガンッ!!
「うっ!?」
次の瞬間、俺は頭に強い衝撃を受け気を失った。
「力(身長)が欲しいか?」
気づくと俺の前には髭を生やした中年の男が立って俺にそう問いかけてきていた。
同人誌とかで竿役をやっていそうな小汚い男だ。
「あなた誰ですか」
「私は神だ」
「はぁ」
神。
それは全知全能の高次元の存在。
そんな神が一体俺に何の用だというのか。
(それはもう言っただろう、力(身長)が欲しいか? と)
(こいつ直接脳内に!?)
神というのは嘘ではないようだ。
俺はゴクリンコと喉を鳴らし返答する。
「それはあなたが俺に身長をくれるってことですか?」
「うむ、そういうことだ」
でもなんで?
神様ともあろう者が俺にそんなことをするメリットはなんだ?
「それなんだがなー、いやー申し訳ない。実は手違いがあってね」
「手違い?」
あー、これはアレだ。
よくあるやつだ。
間違った人間を異世界に送るために殺しちゃったとかそーゆーやつだ。
「なんか顔がムカつくから殺しちゃった」
「いや手違いじゃないやん」
「まぁ、そーゆーわけだからお詫びに君を生きかえらせるついでに何かあげようかと思ってさ」
なるほど、それで身長か。
「ちなみにどれくらいまで伸びるんですか?」
「170km」
「は?」
「170km! これしか在庫なくてさ、ごめんね! じゃあね!」
「いや、それはちょっ」
そこで俺は目を覚ました。
俺の名前は慈愛庵斗 巨人。
あれから俺の人生は720度変わった。
ただ道を歩いているだけで注目されるのだ。
最初は俺の身長が高すぎる事に対しての奇異の目かと思ったが、全く違った。
「ねぇ、あの人身長めっちゃ高くなーい?♡ 」
「ホントだー♡ 超かっこいいー♡」
「んほぉっ♡ 身長でかすぎだって、やっべ♡」
その場にいる女性全員から好意のようなものを感じるのだ。
「まさか身長が伸びただけでここまで違うとはな……」
俺は前日までとの扱いの違いに驚愕しながら学校に登校した。
「入口ひっく」
俺が校舎を破壊しながら教室に入ると、教室内は黄色い悲鳴で溢れかえった。
「え!? 誰あれ! 身長たっか! イケメン!♡」
「あんな人うちのクラスメイトにいたっけ!♡」
あっという間に周りを女子たちに囲まれ質問責めにされる。
「えぇ!? 巨人くんだったの!? 身長すごい伸びたね!♡」
「私巨人くんのこと前から気になってたんだよね♡」
「ちょっと! 抜けがけ禁止!」
なんだこれは。
これが高身長の世界なのか。
昨日までの俺では考えられないほどのモテ具合。
「巨人くんって身長何cmなの?」
女子の1人がたずねてきたので俺は答える。
「170kmだけど」
「高スギィ!」
すると何人かの女子がそう叫びながら失神してしまった。
全身をビクンビクンと震わせながら白目をむいている。
……俺なんかやっちゃいました?
こうして、俺の身長無双が始まった。
紅楚天 美津茅
本作のヒロイン。
身長170以下に人権はないと主張するフェミニスト。
ポリコレ配慮のためデブスである。
学校で1番モテる。