崩壊
新西暦13年8月
それは突然起こった。
「フェイ起きろ!」
外から大きな声が聞こえる。ドロンだった。
「ドロン、どうしたの?」
フェイは慌てて家の外に飛び出した。
「やばいぞ、防御壁が突破されたらしい。王宮は大混乱しているようだ。」
フェイは上空を見上げた。確かに今まで覆っていた防御壁がなくなっていた。
「どうするの?」
「一旦アジトに集合するぞ。信じられる仲間はそこにしかいない」
「待って、今から準備するから」
「あぁ、早くするんだ」
フェイは着替えを済ませるとドロンと共にアジトに向かった。
・・・・
アジトにはもう全員が集まっていた。
「よし、集まったな。よし始めるぞ!」
そう言うとザッカは話を始めた。
「みんな聴いていると思うが、昨日の夜から今朝にかけて、この国の王であるルリエが討たれた」
みんなはザワザワし始めた。
「最強と言われたスキルがどうやって破られたかは分からん。だが、防御壁は失われた。そこでクランが取ることのできる選択肢は2つだ。1つは他の国へ移動する。もう1つはここに留まる」
カランはザッカが話終わる前に口を挟んだ。
「ここに留まるってことは、夜通し見張りを立てるってことになるわよ」
カランの言う通りだった。防御壁を失った人間は昼夜問わず襲撃される危険性がある。それはモンスターだけでなく人間からもだ。つまり信じられるのは壁外でも協力してきたクランの人間だけと言うことだ。
「ってことはだ、アジトを捨てて故郷を捨てて他国へ行くしかないってことか・・・」
ドロンは気落ちした表情で言葉を絞り出した。
「では、多数決を取るぞ。ここに残りたいものは挙手しろ」
ザッカの声が聞こえていないかのように、全員が微動だにしなかった。
「決まりだな」
フェイ達のクラン『ドラゴネス』は、話し合いの末、隣国のゲーゲン王国を目指すこととなった。
ザッカ「では明日出発することにする。各々出立の準備をした後、家族全員をこのアジトに集めるんだ」
そう言うとみんなは一度家に帰って行った。
そうして、ドタバタの1日は終わりを迎えた。
次の日の朝、皆が出国準備を整えていると、早馬が急報を知らせにやってきた。
その話によると、今回の件が隣国にも伝わり、隣国への国境が閉ざされたというのだ。
どのように防御壁が破られたのか、誰が国王を殺したのか、
何も解決されていない状況では他国としても異国者を受け入れることは出来ないとの判断であった。
各国の門は閉ざされ、フェイ達は行き場を失うのであった。