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わな

第三層では警戒するパーティAの想いとは裏腹に、敵が現れることなくスタンプの置かれている祭壇にまで辿り着いた。

バッハ「あ、祭壇だ」

ドロン「結局、第三層には敵がいなかったな」

カラン「んー、そんな情報はなかったけどね」

フェイ「まぁこれで楽々クリアだからいいんじゃない」

ドロン「カラン、たのむ」

カラン「はいはい」


カランは祭壇の前に行きスタンプを押した。

その時、一本の矢がカランを貫いた。


フェイ「カラン!」

フェイは急いでカランの元に駆け寄った。

カランはなんとか一命を取り留めていた。

カランは意識はあるが体が硬直して動かない。


フェイ「<麻痺付与>スキルか!」


???「御名答。せいぜい30分は動くことが出来まい」

黒マントに包まれた怪しい男が姿を見せた。

黒マント「待ってたぜ」


ドロン「何者だ、きさま」

黒マント「さぁな」

ドロン「何の用だ?」

黒マント「きさまらの雑魚なんかには用はねぇよ」

黒マント「俺はその女のスキルに興味があるんだよ」

ドロン「なんだと?」

黒マント「俺には鑑定能力はないが、人の噂ってのはすぐ広まるんだぜ」

黒マント「高ランクの回復系スキルなんだろ?」

黒マント「こんな弱小クランにいるなんて好都合だぜ」

ドロン「くっ」

黒マント「まさか本当に来るとは思わなかったがな」

黒マント「その女を渡すなら、お前ら雑魚は見逃してやってもいいぜ」

ドロン「ふざけるな」


ドロンは黒マントに切りかかったが、瞬時に距離をとられた。

ドロン「くそ、<瞬足>スキルかよ」

ドロン「距離をとって弓で射抜くスタイル、しかも麻痺のおまけつきか」

フェイ「ドロン、気をつけて、そいつランクBだ」

ドロン「・・・ってことは奥の手がまだあるってことかよ」

黒マント「ほぉ、<能力色鑑定>持ちか。こいつはラッキーだな」

黒マント「気が変わった。全員あの世行きだ」


ドロン「フェイ、カランを頼む」

ドロン「バッハ、こいつに距離をとらせてはダメだ、一気に行くぞ」

バッハ「分かった」


ドロンとバッハは一斉に切り掛かった。しかし黒マントには当たらない。

黒マントはドロンとバッハに矢を次々に放っていく。

ドロンとバッハは徐々に体力を奪われていった。


バッハ「ぐはぁ」

バッハの左足に矢が刺さる。

フェイ「バッハ!」

フェイはバッハに駆け寄った。

バッハ「フェイ来ちゃダメだ、カランが!」


その一瞬のスキを黒マントは見逃さなかった。

黒マント「もらった!」

黒マントの放った矢はカランに突き刺さった、と思いきやカランはそこにはいなかった。


黒マント「転移魔法!?」

矢が到着する直前にバッハが転移魔法でカランを転移させていたのだ。

バッハ「カランはアジトまで転移させた」

ドロン「ナイスだ、バッハ」


黒マント「ふざけるなー」

黒マントはバッハに照準を定める。ドロンはスタン攻撃を発動し黒マントに襲いかかった。

黒マントはドロンの動きに気付き、照準を変える。

ドロンの攻撃は黒マントに直撃しスタン状態になったと同時に、黒マントの指から矢が放たれた。

ドロンは脇腹を射抜かれ麻痺状態となった。


スタンは5〜10秒程度なのに対し、麻痺は30分程度と差が激しい。

フェイが考えるよりも前にバッハは行動していた。

バッハ「転移!」

バッハはドロンを転移させていたのだ。


バッハ「これで魔力は尽きちゃった、ははは・・・」

フェイ「そっか、残念だけどここで終わりかな」

バッハ「フェイ・・・君だけでも逃げてほしい」

フェイ「無理だよ、もう逃げる体力は残ってないし」

バッハ「フェイ、僕を殺せ」

フェイ「なに言ってんだよ」

バッハ「僕を殺して転移魔法で逃げるんだ」

バッハ「フェイなら転移できる魔力は残っているだろ」

フェイ「そんなの、無理だよ」

バッハ「よく聞くんだ。このままだとあいつにスキルを奪われてしまう」

バッハ「だったら僕のスキルを奪って逃げてくれ」

バッハ「そしてかたきをとってほしい」

バッハ「最後のお願いだ・・・・頼む」

バッハ「もうスタンが切れる。早くっ!」

フェイ「分かった。ごめんバッハ」

バッハ「いいんだ・・・」

フェイの剣はバッハを貫いた。

バッハ「ありがとう・・・」


黒マント「クソガキどもめ、許さんぞ!」

フェイ「転移!」


残されたのは黒マントと息たえたバッハだけであった。

このエピソードは、「〜奴隷からの成り上がり〜」編とリンクしています。

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