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ヴォイドアウト SF民が異世界攻略  作者: PonnyApp
1章 未開惑星探索編
6/238

006 ファーストコンタクト(挿絵あり)

 

 イヤーマフを装備したロランは、ハッチを開けるスイッチの横に手をかけた。

 このスイッチを押すことで、緑色の先住民とご対面、初めての接触(ファーストコンタクト)となるわけだ。


「ポチっとな」

{ロラン・ローグ、スキャンが不十分なため、周囲の十分な確認ができていません。対象がひとりとは限らないので、警戒を怠らないでくださいね}


 エリクシルがロランの10歩後ろから警告を発した。

 ロランは左手を上げてOKサインを送る。


 ガガガ、グォォオンオンオンという音と共にハッチが徐々に開き始める。

 隙間から差し込む陽の光と共に、久しぶりに新鮮な外の空気が船内に流れ込む。

 ロランは深く息を吸い込みながら、ショットガン(ベルバリン 888)の銃口をやや下げ、腰を低く構えた戦闘態勢を取った。

 この姿勢は、父親から学んだ戦闘術に基づく、緊張感の中でも自信と準備の良さが感じられる。


()()は最後の手段だ)


 ロランはショットガンを一瞥し、いざという時には撃つことを躊躇わない覚悟を決めた。

 緑色の先住民が音に気付き、好奇心深くハッチの中を覗き込む。

 ハッチが完全に開きロランの姿を認識すると、先住民は舐めるようにロランを観察し始めた。


 この生き物の体色は灰色がかった緑で、体躯(たいく)は痩せ気味だが、筋肉質で、下腹部はやや突出している。

 その姿勢は膝を曲げた円背で、ロランの腰よりも低い位置に頭があった。


(思ったよりも小さいな……80センチくらいか?)


 しかしその小さな背格好に反して、頭部と手足は異様に大きく歪んでいる。その爪は厚く尖り、土で汚れたように見える。

 腰には薄汚れた腰蓑をまとい、首に巻かれた革紐には見たことがあるものが括り付けられていた。


《無声通信、エリクシルッ! こいつ、ヒト(人類種)族の耳を首から下げているぞ! 敵性種族だろ!》

{{……この乾き具合は、切り取られてから時間が経っているようですね……。十分に警戒して下さい!}}


 エリクシルが無声通信で返事をする。

 周囲をピンと張り詰めた空気が(おお)う。


 人の耳を拾ったのでオシャレに着飾ってみました、などという言い訳は通じない。

 先住民からは残忍な、血生臭いものに対する嗜好がうかがえる。


 ロランは異常な趣味を持つ相手をさらに観察する。


 外見は、鉤鼻、手入れされていない肌、尖った耳、歪んだ顎と口元に鋭利な乱杭歯、さながらファンタジーなどの作り物のような特徴的である。

 その大きく開いた眼は黄色の虹彩を持ち、黒々とした横長の楕円形の瞳をしていた。

 ロランはその目に見覚えがあることに気付く。


(元の世界で見た気がする。それも最近……)


 先住民の額には深いシワが刻まれており、頭部には灰色の髪がわずかに生えているだけである。


 ロランはこの先住民をじっくりと観察した後、深呼吸をして自らを落ち着かせる。

 先住民の存在は明らかに脅威であり、冷静に対処する必要がある。


「……こっ、こんちはっ!」

「グギャッーーー! ゲギャゴギャ!」


 ロランの間の抜けた挨拶に、先住民は驚きとともに奇声を発して彼を睨んだ。

 その小さい体躯からは想像もつかないほどの迫力ある表情を見せる。

 ロランに刺すような緊張が走り、ゴクリと唾を飲み込んだ。


(めちゃくちゃ怖っ!)

「……エリクシル、翻訳は?」


 ロランはなにか手はないかと考え、咄嗟(とっさ)にエリクシルを頼る。


「ギャガ、ギョ!ゲッゲーーッ!!」


 高精細なホログラムであるエリクシルがロランの傍にゆっくりと歩き寄ると、先住民は更に驚き叫んだ。

 今度はエリクシルを凝視(ぎょうし)する。


「ギョ■■■■? ■■■リ、ジャッ■■■ーー!」


 先ほどの唸り声とは異なり、何かを言っていそうな言語らしいものが聞き取れる。

 しかしまるで幽霊でも見たかのように先住民は興奮し、こん棒を振り回し威嚇行動をとった。

 こん棒で何度も地面を打つけ、今にも襲いかかってきそうだ。


「お、落ち着け、敵意はないんだ」


 ロランはショットガン(ベルバリン 888)の構えを解き、落ち着かせようと左手をかざす。


{言語プログラムに登録がありません。言語として認識できません}

「ゴギャーーー!!ギャオオォッーーーー!!」


 エリクシルが報告した刹那、痺れを切らした先住民がこん棒を振り回しながら駆けた。

 怒り狂い向かってくる様子はとても自衛のためとは思えず、()()()()()をもってやってくる。


(ひえっ……! こんな第一村人があるかよっ!?)


 腹の底から一気に喉元へ突き上げる、この世のものとは思えない絶叫を発したそれは、見た目からは想像できない威圧感があった。

オマケコーナー

先住民のイメージです。


挿絵(By みてみん)

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