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ヴォイドアウト SF民が異世界攻略  作者: PonnyApp
2章 犬耳の少女編
35/238

035 潜む脅威


 ポーーーン

 船内のスピーカーから小気味よい音が鳴り、朝を告げる。


{おはようございます。ロラン・ローグ、定刻になりました。恒星間年月日は統一星暦996年9月12日の午前5時、ニョムさんを保護してから6日目になります。睡眠時間は7時間でした。本日の天気は快晴です。作戦の決行日ですよ}


 ロランは布団を跳ねのけ、いつもより素早くベッドから起き上がった。

 緊張とプレッシャーが頭を巡り、浅い眠りしか取れなかったが、目は冴えている。


「ニョム、起きる時間だ。今日は帰る日だぞ」

「うぅぅん、ニャム……おうちに帰る」


 ロランとニョムは朝の身支度を済ませると、シリアルで軽めの朝食を摂る。

 2人とも緊張しているのか、口数は普段よりも少なめだ。


 朝食を終えたロランはバックパックを食料庫に持っていくと、なにやら収納を漁り始めた。

 それに気が付いたエリクシルが声をかける。


{ロラン・ローグ、食料は十分のはずでは?}

「昨夜考えたんだが、手土産を持って行けば、村人とも打ち解けやすいだろうと思ってさ」

{あぁ、なるほど! それはいい考えですね。ニョムさんを無事に届けるだけでも歓迎されるでしょうが、手土産は喜ばれるでしょうね}


 ロランは収納から数種類の缶詰を取り出し、バッグに詰め込む。

 そしてバッグを肩に掛け、武器の最終点検を行うためにロッカーへ向かった。

 準備を整えタラップへと向かうと、支度を済ませたニョムが待っている。


「バッテリー良し、装備良し……」


 ロランがニョムの前で最終チェックを行う。

 今回の装備は以前コブルを撃退した時と同様、近中距離対応の武器を用意していた。


「……ニョム良し、プニョちゃん良し」


 ロランはプニョちゃんの入った容器を腰のベルトからランタンのように吊り下げている。

 中ではプニョちゃんが「プニョちゃん良し」の掛け声に合わせるように挙手している。


「……よし、ニョムも忘れ物はないか?」

「忘れ物ないよ! プニョちゃん、ニョムはお家に帰るよ! お母さんに会えるの!」


 ニョムが話しかけると、それに応じてプニョちゃんが両手で丸を作る。

 ニョムとプニョちゃんの間に生まれた絆が、ロランを和ませた。


「プニョちゃん可愛い~~~」


 ニョムがロランの腰にへばりつき、プニョちゃんを覗き込む。


「エリクシル、集落のセンサーの反応は?」

{現在、コブルの反応が2体です。チャンスです}

「……よっしゃ、いくか!」


 ロランは自分の頬を両手で叩き、気合を入れる。


{護送作戦開始です!}


 エリクシルも航宙軍士官服で敬礼ポーズを決め、2人とも気持ちを引き締めている。

 ロランはニョムをバイクの荷台に乗せると自分も準備を終えた。


「よーし、ニョム、しっかり掴まってろよ!出発だ!」

「ワウ!しゅっぱーつ!」


 バイクでいつもの道を駆け抜け、丘を目指す。

 冷たい朝の空気が緊張感をさらに高める。


 森を抜け白花の丘に差し掛かると、太陽が白い花々を照らし、いつもと変わらぬ美しさを見せた。

 さらに丘を北上し、集落への獣道に差し掛かるとバイクを止めた。


「もうすぐ集落だ。エリクシル、センサー反応をマークしてもらえるか」

{……マークしました。変わらず2体です。今ならバイクで通り抜けられるでしょう}

「よし。あとは情報収集用のセンサーを砦近くに設置したい。集落を抜けたらそのまま砦付近まで突っ走る」


 ロランはバックパックからセンサーを取り出し、設定を確認する。


{接続を確認しました}

「これを砦の近くか村に置く。センサーの範囲を考えると両方の間に置けるのが一番良いと思うんだが、実際の距離がまだわからないからな」

{そうですね。まずは安全を確保することが先決です}

「ニョム、スピードを出すからしっかり掴まってろ!突っ切るぞ!」

「うん!」


 バイクのエンジンが低く唸りを上げ、一瞬の静寂を破って一気に加速した。


「ニョム、怖かったら目をしっかり閉じてろよ」

「うん!」


 バイクが集落へ突入する。

 コブル2体が驚いて「ゲギャー! ギギャ!!」と叫ぶが、ロランは距離を取りながら通り抜けた。


 タイヤが砂利を蹴り上げ、コブルたちの怒号が背後から聞こえてくる。

 風が顔に当たる感触が、急ぎ足の鼓動と共鳴するかのように強まっていく。


 怒り狂うコブルの声が遠ざかる中、ニョムは息を呑んだ。

 背後から聞こえる叫び声は、耳を突き刺すように響いてくる。

 ロランが小道に入り込むと、ようやくその叫び声が森の木々にかき消され、ニョムは肩の力を抜いた。

 だが、心臓の鼓動はまだ速く、手足に残る緊張の名残を感じていた。


 森の中に入ると、ロランはバイクの速度を落とし、慎重に進む。

 森を抜けると草原が広がり、遠くに砦が見えた。


{ロラン・ローグ、砦から2体の生命反応を確認。うち1体は高濃度のエーテル反応があります。識別、"杖持ち"です! 対象をマークしました}

《無声通信に切り替える、"杖持ち"……昨日来たのに今日は何の用だ……?》

{{承知しました。十分に警戒を}}


 ロランはバイクの速度を緩め、"杖持ち"とその配下の位置を確認する。


《距離100まで接近して、センサーを設置できる場所を探す。慎重にな》

{{承知しました。敵の能力に注意してください}}


 ロランは山側を回り込み、砦へと向かう。


{{センサーの範囲内に砦を捉えました! 検知した生命反応は12体、そのうちの1体は"杖持ち"を上回るエーテル濃度を示しています。警戒してください、何か強力な存在がいるかもしれません!}}

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