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ヴォイドアウト SF民が異世界攻略  作者: PonnyApp
8章 湖の街バイユール編
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215 未来への準備


「私は魔物となんか戦えない!! 旅なんかしたこともない! あなたたちみたいに便利な道具なんて持ってないんだから!」


 リサの叫びは、まるで絶望そのものだった。

 震える声には、深い恐怖と不安が滲んでいる。

 彼女の瞳には異世界に放り出された戸惑いが見え隠れしていた。


 ロランはリサの激しい反応に驚き、次いで胸が痛んだ。

 彼女の感情はもっともだ。

 いきなり協力を頼まれた彼女の立場を思えば、その気持ちが理解できないわけではなかった。

 ロランもこの世界に初めて足を踏み入れたとき、似たような恐怖を抱えていたからだ。


 エリクシルは優しい声で語りかける。


{……リサさん、あなたが感じている不安はよくわかります。魔物と戦うことや、旅を続けることは決して簡単なことではありません。それに、私たちが持っているような装備がなければ、恐怖が増すのも当然です}

「だったらなんで……!」


 ロランはリサの不安そうな表情を見つめている。


{でも、リサさん、わたしたちも最初は何もわからなかったんです。この世界に来たとき、私たちは何も知らず、ただ生き延びるために必死でした。でも、少しずつ、ひとつずつ、学んでいきました。そうして得た経験が、今の私たちを支えているんです}


 ロランが深く頷き、リサに優しく語りかけた。


「リサさん、俺たちはこの異世界で様々な困難に直面しました。でも、その過程で協力者や安全な場所を見つけることができたんです」


 エリクシルはロランの言葉を受けて、さらに続けた。


{例えば、シャイアル村もそのひとつです。そこは比較的安全で、わたしたちは数日お世話になりましたし、そこの住民と協力して悪意ある魔物を退けることもありました。今ではわたしたちの第二の故郷と呼べる場所です}


 ロランは、その言葉に思わず微笑みを浮かべた。

 シャイアル村のことを思い出し、彼の胸にも再び帰りたいという想いが広がっていた。


「村ではこの地の情報をもらい、どうにかして生き延びる術を学んだんです」

{村に着いた時には、私たちもあなたのように不安でいっぱいでした。でも、協力し合って困難を乗り越えてきたんですよ? ……それが今の私たちにとって、とても大切な経験になっています!}


 エリクシルの声には優しさで溢れている。

 ロランは再びリサに目を向け、真剣な表情で言った。


「リサさん、俺たちもあなたが一緒にこの地で生き延びるために、できる限りの手伝いをします。そして、その過程であなたもこの地に適応し、強くなって欲しいんです……! 魔物と戦うのは俺達に任せてください。リサさんにしかできないことが、きっとあるはずです……!」


 リサはしばらくの間、黙って考え込んでいた。

 彼女の心には、さまざまな感情が渦巻いているのだろう。

 恐怖、不安、そしてこれからどうすればよいのかという混乱。


 やがて、リサは深く息をつき、ゆっくりと顔を上げた。


「……冷静に考えたらそうですよね。二人がこれほどまでに頑張っているのに、私だけ船で待たせてもらうなんて、無責任すぎますよね……」


 リサは一度深く息をつき、続けた。


「正直に言うと、最初はこの地のことなんて信じられなかったんです。このヴォイド(超空洞)の地が異世界で、裏球面状だとか、天使と呼ばれるイカのエイリアンの存在だとか、全部がただの作り話にしか思えなくて……」


 彼女は言葉を詰まらせ、一瞬だけ瞳を伏せた。

 目の前の現実がどれだけ非現実的に映っていたのかが、彼女の表情から伝わってくる。


「でも、ふたりの真剣な話を聞いて、ようやく嘘なんかじゃないんだろうなって、少しずつ理解できるようになってきたんです……。思えば、この地に来てから出会った知らない種族の人たちもいたし、それに冒険者たち。まるで映画のセットみたいな衣装を着て、本当に戦っているんですよね……」


 リサは遠くを見るような目で、現実を受け入れようとする自分自身を確かめるように続けた。


「魔法も……本当に存在するんですね。正直言って、頭が追い付かなくて。でも、ふたりの言うことを信じるしかないんです。だって、ここは私が知っている世界とは全く違う場所なんですから……」


 リサの声には、驚きと混乱、そして少しの恐怖が混ざっていた。

 しかし、それと同時に彼女の中で何かが変わり始めているのも感じられた。


「……リサさん、信じてくれてありがとうございます。誰でも初めは不安です。でも、あなたが前を向いてくれたこと、それが何よりも大切なんです」

{わたしたちは協力を惜しみません。だから、一緒にこの困難を乗り越えていきましょう}


 リサの言葉に、ロランは優しく頷き、穏やかな表情で彼女を見つめた。

 彼女は少し微笑みを浮かべたが、その表情にはまだ迷いが見えた。

 しかし、それでも彼女の中に新たな決意が芽生え始めていた。


「ありがとう、ロランさん、エリクシルさん。私も……私も精一杯頑張ります。何をすればいいのか、何から始めたらいいのか、わからないことだらけだけど……」

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