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ヴォイドアウト SF民が異世界攻略  作者: PonnyApp
8章 湖の街バイユール編
194/238

198 魔法の衣服


「うーん、どれも良い品ですが……。魔法の効果があるようなケープ、もしくは衣服を取り扱っている店はありますか?」

「えぇ、当店にもいくつかありますよ」

《ここにもあるのか!!》


 店員が奥へと案内すると、格子のついた厳重な棚が目についた。

 内部には小物や靴、チュニックやダブレット、古めかしいローブやケープが数種類展示されている。


「この棚にあるのは、魔法の込められた特別な衣服です」

「そういえば装身具店なのに衣服が多いですよね」

「あぁ、母の代から衣服も取り扱うようになったんです。今では衣服屋としてのほうが有名で、装身具はオマケという感じですね……」


 店員はにっこりと微笑む。

 その微笑には、この店を誇りに思う気持ちが滲んでいる。

 店員は展示された装身具に一瞬視線を留めた。


「伝統を重んじて、今でも装身具の取り扱いは続けています。母の代からの大切な部分ですからね」

「……そうだったんですね」

{{この店に歴史あり、奥まった小道にある名店ですね!!}}

「……では、左から順にご紹介しますね」


 *    *    *    *


『魔法の財布』 ――50,000ルース

{{収納の魔法が込められているというとても小さな財布。金貨が500枚――値段も憎いですね――は入るらしく、本当だとすればとんでもない代物です! 原理を解明したいところ!}}

《これの背嚢(バックパック)があれば欲しいが、とんでもねえ値段だろな……》


『水歩きの靴』 ――9,400ルース

{{水の上を歩かなければならない状況が思いつきませんが、欲しい人は欲しいのかもしれませんね……}}

《翡翠湖を歩いたら楽しそうだぜ?》


『避暑のローブ』 ――7,500ルース

{{サンディナバルの綿で織られた魔法のローブだそうです。高温の環境でも涼しく過ごすことができる魅力的な逸品ですね}}

《その地名には聞き覚えがある。コスタンさんの息子さんが征服したダンジョンのあった場所だ。砂漠とかで使えそうな逸品だよな》


『矢逸らしのワイバーンクローク』 ――23,500ルース

{{これは掘り出し物だそうです。劣等種ではあるものの、飛竜の皮翼を用いた魔法のクローク。もともとの素材が防刃性に優れているそうですが、さらに矢逸らしの魔法が込められているとか。矢傷を受けたくないという執念を感じました。これを作った人は膝に矢でも受けてしまったのでしょうか……?}}

《……冒険者あるあるだな》


『清廉のシャツ』  ――9,500ルース

『清廉のショーツ』 ――7,500ルース

『清廉のパンツ』  ――6,000ルース

『清廉の靴下』   ――4,500ルース

{{ウィルダン産の麻で織られた、汚れを拒絶する衣服。王都より取り寄せた逸品で、洗濯の必要がないため貴族に人気だそうです。……でも冒険には向かないでしょうね}}


 肝心の加工方法を知れればと思ったが、残念なことに厳重に保管されているため手に取ることはできない。

 縫製をその目で見ることは叶わなかったが、簡易スキャンは行えたので充分としよう。

 魔石が取り付けられているという情報しかわからなかったが。


《汚れしらずの靴下いいなぁ! 買えなくはないが……》

{{報奨金はあぶく銭のようなものですが、その半分を失うのはちょっと……}}

《だよなぁ、他にも必要なものはある……》


 どれもこれも高価で手が出せない。

 指をくわえて眺めるしかない状況である。


「……靴下が気になりますが今は買えそうにないですね……」

「それは残念ですね。こちらは人気商品ですが在庫はありますので、ご都合の良いときにいらしてください」

「そうさせていただきます! ……あー、あとそうだ、ドレスとかって置いてます?」

「……えぇと、あいにく当店では取り扱っていません」


 店員は申し訳なさそうに眉を困らせた。


「あー……、どこかに売ってませんか?」

「……えーと、ドレスなどはお客様のお身体の寸法を測りますからオーダーメイドになります。既製品は王都にでも出向かないと手に入らないかもです」

「王都フィラか……。ちなみにオーダーメイドはどこで?」


 オーダーメイド専門店は商店街通りを北に進み、中心街の一角に高級店があるらしい。

 店員さんは俺の全身に視線を走らせると、入店を断られるかもしれないと助言してくれた。


《言いづらそうにしていたのはそういうことか》

{{残念ですが、絹のドレスはまた別の機会にしましょうか……}}

《あぁ、ドレスコードのある店は珍しくねえ、今更驚かねえぜ……》


 ロランは礼を告げると思い出したように手をポンと叩いた。


「すみません、何度も。最後に……頑丈な魔物素材を加工できるようなお店ってありますか?」

「……魔物素材を加工するとなると革鎧などですかね。工房街であればお望みのものがあるかもしれません。この棚の商品も――」


 魔法の付呪は特別な伝手であるため紹介を断られたが、代わりに『夕焔(ダスクファイア)工房』の職人、ニアというクノン族を紹介してくれた。

 クノン族というのは狐のような獣人の種族らしい。

 そう、店員さんもクノン族。


「――彼女は丁寧な仕事で有名です。頑丈な魔物素材もきっと加工できることでしょう」

「ありがとうございます!」

「とんでもありません。この度はお買い上げありがとうございました!」


 ロランは購入した衣服と鞄を預け、古湖装具店を後にした。

 衣服や背嚢(バックパック)はロランの体格に合わせて微調整してくれるらしい。

 

《それ込みの値段だったんだな》

{{いい買い物でしたね}}


 明日の朝までには調整も済むそうだ。

 忘れずに受け取りに行かないとな。


「『夕焔(ダスクファイア)工房』は水車のある所だったな」

{{工房街を北に向かうようですね!}}


 商店街の賑わいを背に、二人は目的地へと歩みを進めた。

 橋を渡り終えると、そこには重厚で威厳ある工房街の光景が広がっていた。

 商店街とは異なる活気さがあり、職人たちが真剣な表情で作業に没頭している姿が見える。

 金属を打つ音や木材を削る音が響き、工房街全体に緊張感が漂っている。


 工房街を歩き続けると、ついに『夕焔(ダスクファイア)工房』と書かれた看板が見えてきた。

 看板は木製で職人の手による繊細な彫刻が品格を漂わせている。

 工房の入口は広く開放的で、中からは温かな光が漏れていた。


「やっと見つけたな」


 ――衣服代 1,200ルース

 ――所持金 8,030ルース


*    *    *    *

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