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ヴォイドアウト SF民が異世界攻略  作者: PonnyApp
7章 鉱山甦生編
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169 理外の来訪者


 「……ロランのバッグが光ってるよ」


 「ええっ!? まじ?」


 ラクモが指摘し、ロランがバッグパックを地面に降ろした。

 外ポケットに光るものが見え、それを取り出す。


 { ……それは、『迷宮の精髄』ですね }


 ロランの手に握られた『迷宮の精髄』は、まるで幻想的な宝石のように輝いていた。

 その光は周囲を包み込み、空気までが弾むような躍動感を纏っていた。

 光が彼らの顔を照らし出し、その美しさと力強さに皆が息を呑む。


 「なんでこんなもんが光ってるんだ……。それになんか、引っ張られている気がする……」


 精髄は微かに震え、引き寄せられるような確かな感覚。

 ロランの手の中から《《コアへと戻りたがっている》》ような。


 「……! 今が使い時なのかもしれませんな」


 コスタンは顎髭を撫でながら答える。

 何の変哲もなかったゴルフボールが、今反応しているのにはきっと理由があるはずだ。


 「わけわかんねぇけど、試す価値はある……!」


 ロランは恐る恐るダンジョンコアの上に『迷宮の精髄』を置いた。


 「見てっ!」

 { あぁっ!! }


 『迷宮の精髄』は光り輝きダンジョンコアに溶け込んだ。

 ダンジョンコアは眩しい光を放ち、ずぶずぶとゆっくりと地面に沈み込む。

 まるでヴォイドの地がそれを受け入れるかのように、優しくゆっくりと取り込まれていった。


 「埋まった……」

 「吸収されちゃった」


 『迷宮の精髄』の輝きが消え、廃鉱山には彼らの端末の光だけが残された。

 静寂が一瞬訪れた後、地面が淡く光を帯び始めた。


 ――ドクン……

 その光は血管のように広がり、心臓の鼓動のように脈打ちながら輝いた。


 「な、なんだ……!?」

 「光っていますぞ!」


 突然、地面が微かに震え、次第にその揺れは激しくなっていった。

 周囲の岩壁が共鳴するかのように光を放ち、鉱山全体が生き物のように脈打ち始めた。


 「うわわ、地震だ!」


 あまりの揺れの大きさに、一同はよろめいた。

 その瞬間、エリクシルは確信した。


 { 直ちに脱出してください! ここも崩落します! }


 「またかよっ……!!」


 地面の揺れは増し、岩壁が軋み、崩れ落ちる音が轟いた。

 巨大な崩落が起こり、廃鉱山が激しく震動し始める。


 一行は振り返ることなく脱出を試みた。

 鉱山の形が変わり通路が次々と閉ざされていく中、彼らは必死に出口を目指して走った。

 やっとの思いで鉱山の出口にたどり着いた時、一行の目の前には驚愕の光景が広がっていた。


 巨大な生物が浮遊しながら待ち構えていたのだ。

 その姿はまるで地獄からの使者のように異様で、八本の足が蠢き、長い触腕が宙を舞っている。

 体表は深海のクラゲのように明滅させていた。


 顔はサメのようでありながら、下顎には大きな単眼がぎょろぎょろと動き、一行を睨みつけている。

 体長50メートルはあると思われるその異様な生物の姿は圧倒的な存在感を放ち、一行は立ち尽くしたままその場から動けなかった。


 「な、何、これ……」


 ラクモが驚きの声を上げた。


 (イカ……いや、外宇宙生物か……!?)


 その冷たくも不気味な目をキョロリ、キョロリ動かし、一行の行動を静かに裁いているかのように見える。

 その巨大な目は一行をしばらく観察した後、今は崩落した廃鉱山を一瞥すると、今度は興味を失ったかのように視線を外した。


 (ゴクリ……)


 キヨオオォオォーーーーーーォォオオン……!!

 耳鳴りのような怪音波に一同は思わず耳をふさぎ、エリクシルのホログラムにもノイズが走る。


 異形の巨体がゆっくりと転回し始め、ヒレが翼のように大きく展開される。

 その動きには重厚さと、不思議と優雅さが同居していた。


 触腕が空中で揺れ、強風がその周囲を巻き起こる。

 ゴゥッと風の塊が周囲に押し出され、一行は風圧に耐えながらその場に立ち尽くすしかない。


 生物は空に向かって体を傾け、飛び立つ準備を整えるとジェット機のような轟音が鳴り響く。

 ドッッ!と勢いのある破裂音が起こり、その後にはヒュゴォオーーーー、ギーーーーーンという風切り音と金属音が入り混じった、()()()()()()()()()()が鳴り響いた。

 巨大なイカは一瞬でマッハの速度で飛び去り、ヴェイパーとソニックブームを引き起こしながら空へと消え去った。


 「……わけわかんねぇ……全然わかんねぇ!! こいつあいつか!?」

 { 白花の丘の、ですね…… }


 忘れもしない。

 この地に漂流したその日に遭遇した、未知なる原生生物。

 エリクシルは過去の映像を再生し比較参照、遠すぎて不鮮明であったその姿が、明かされることになる。

 

 「何も起こらなくてよかった……」


 { タロンの主といい、異形の者といい……処理が追いつきません…… }


 一行は驚きとパニックの連続で、この巨大な生物が何か考える気力もなかった。

 巨体が姿を消すと安堵の波が押し寄せ、ロランとラクモはその場にへたり込んだ。


 コスタンだけがその場に立ちすくみ、目を見開いて言った。


 「今の生物が……天使……」

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