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ヴォイドアウト SF民が異世界攻略  作者: PonnyApp
6章 タロンの悪魔の木編
149/238

153 『レベル5』後半

 

「ごめんってば。……よし、行くか!」


 真っ暗な入り口に侵入し、光の出口を目指す。

 ボス部屋へと到達し中を覗くと、一同は安堵の表情を浮かべた


 鳴動芋虫(ランブルキャタピラー)が不快な音を立てて中央に座している。


「……元に戻ったってことか?」

「一体なんなんだろうね?」


 エリクシルのコトダマとやらは不発に終わった。


{ボスマラソンを続ければ変化が訪れるかもしれません。気を抜かずに進みましょうね}


 すぐさまエリクシルはによる戦術が展開され、効果的な位置取り、弱点が捕捉される。

 しかしロランはもうARに頼らずとも、このボスの弱点は把握済みだ。有効な位置に真っ直ぐ向かうとショットガン(ベルバリン 888)を構えた。


 *    *    *    *


{……お見事です! 慣れたものですね。行動に迷いがありませんでしたよ}

「行動に迷いがないっていうのはいいことだよ。ロランも成長したなぁ!」

「へへ、伊達にマラソンしてねぇからな!」


 ロランは恥ずかしそうに鼻の下をこすると、ニカッと笑って見せた。


 ボスからのドロップはなし。

 続く2階層への入り口を進み、ボス部屋を後にする。


 *    *    *    *


「うーん、キノコの香り、懐かしさすら覚えるぜ!」

「印象深いもんねえ」

{可愛いキノコさんたち、今日もいっぱい倒されてくださいね!}


 エリクシルが組んだ手を頬の横に当てながらとびきり可愛く言っているが、その言葉の内容は物騒極まりない。


「なんか……恐ろしく聞こえるなぁ」

「うん、確かに」


 道中のキノコを蹴散らし、2階層のボスとご対面。

 (アント)虫草(ちゅうそう)も瞬殺し、これでボスマラソンルートが完成だ。


「あとはいかに早く回るか」

「だね」


 再湧き(リポップ)するまでの30分間をひたすらボスマラソンに充てる。

 1周6分程度なので5回は回せる計算だ。


 *    *    *    *


 ――12時の昼休憩

 一同は糧秣(りょうまつ)のチョコバーや、ラクモお手製の燻製肉を頬張りながら雑談をしている。


「ふぅ、やっと休憩だ。マラソンが走り込みのトレーニングにすらなってるぜ」

「鍛えながら稼げるなんて、一番の理想だよ」

{……ボスだけで50体は倒したでしょうね。強化個体(テンパード)はあれ以来、姿を見せませんでした}


 エリクシルがダンジョンの様々なデータを統計化したグラフを表示させ、今も計算したり考察したりしているようだ。


「なにか強化個体(テンパード)が出る法則でもあるのかと思ったけど、わからなかったね」

「だな。……エリクシル、そこにドロップ品のリストも出せるか?」

{はい、もちろんです。本日分でよろしいですか?}

「頼む」


 ――統一星暦996年9月19日ボスマラソン、午前の部

 虫の翅x2、虫の甲殻x1、絹糸x2

 形の異なる小さなキノコx2、虫草(ちゅうそう)x2

 土の魔石x2(ボスから)


「虫のボスがドロップする魔石はちょっと大きいんだな。それでもゴブリンサイズだけど。石としてはめっちゃ綺麗だよな」

「雑魚は豆粒みたいに小さかったもんね」

「ポートポランで同じ大きさのが投げ売りされてたけど、あれが()石かもな」

「へぇ、()石って呼ぶんだ」


 『サエルミナの魔法雑貨店』では豆粒サイズの魔石がそう呼ばれていたのだ。


{……昨日はボスから魔石のドロップはありませんでしたから、確率は低そうです。ボスからのドロップ率はおよそ10%、一個体から複数のドロップはしないという法則がありそうです。もしそれが真であれば()()()()()()()の法則ということになりそうですね}

「なに、べる、ぬ? なんて?」

{ベルヌーイの試行です。「成功」か「失敗」や、ドロップ「する」か「しない」かなど、特定の事象に対して2種類のみの結果しか得られない試行を示す、確率論の調査・思考方法です}

「ベルヌーイ……試行。魔物一体から複数のドロップはないってことか、なるほど」


 エリクシルの解説に目をぐるぐるさせていたラクモがハッと我に返り、ぶるぶると顔を振る。


「確率って、コスタンさんが言ってた統計?」

{厳密には異なるのですが、確率を導くために統計学を活用していますよ。わたしたちがデータを集めれば集めるほど、より信頼できる値に収束するのです。……もちろん乱数がなければ、ですけど}

「らんすう……?? さっぱりわからねぇ……」

「……うん……」


 ふたりはさっぱりといった表情だが、エリクシルは気にしていないようだ。

 生き生きとした表情で胸をどんと叩く。


{好きで個人的に調べていることなので、わたしにお任せくださいっ! 正直……活用できるとしてもですね、今後特定のドロップ品が欲しいときに、倒すべき魔物の数がわかるようになる程度の成果かと思いますので……}

「へぇ~、でもそれが分かったらおもしろいかも」 

「でもよ~、欲しい物のために虫を1,000体倒す必要があるとか言われたら、マジできつい。知らない方が良かった~ってなるかも……」

{ではやる気をそぐような数値の時は、内緒にしておきますね! ……さぁ、休憩もこれぐらいにして午後も頑張りましょう!  えいえいおー!}


 ロランの「それはそれでどーなのよ!?」というツッコミを笑顔でかわし、エリクシルは楽しそうに午後のマラソン開始の号令をかけた。


 *    *    *    *


「やったー! レベル5だ!」

「おお! やっぱり早いよ……」

{おめでとうございます!}


 19時までマラソンを続けたが、結局強化個体(テンパード)は現れなかった。

 しかし時間ギリギリでロランはレベルアップを達成することができた。目標達成だ。

 彼らは多くのドロップ品を持ち帰りながら嬉々として船へと戻った。


 *    *    *    *


 ――統一星暦996年9月19日ログ:ボスマラソン、結果(リザルト)

 ロランがレベル5になった。

 ボスの討伐数 鳴動芋虫(ランブルキャタピラー)48体 (アント)虫草(ちゅうそう)48体

 虫の翅x7、虫の甲殻x4、絹糸x5

 形の異なる小さなキノコx8、虫草(ちゅうそう)x4

 土の粗石x6、風の粗石x3、闇の粗石x2

 土の魔石x5を入手した。

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