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ヴォイドアウト SF民が異世界攻略  作者: PonnyApp
6章 タロンの悪魔の木編
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120 パーティ分配

 

「あぁ、私としたことが肝心なことを忘れていましたな。パーティ内での分配についての取り決めをせねば」

「ブンパイ……?」


 コスタンが説明するに、ダンジョン内での狩りが終わったらドロップ品はすべて売却し、利益を均等に配分するという話だ。

 ロランは全て売却するという言葉に引っかかる。

 魔法書や『キューデレザル』のような遺品など、価値の高いドロップ品も売却するのか、コスタンに尋ねる。


「わっはっはっは! どちらもそう簡単には出ませんぞ! 銘が付くような遺品であれば一生に一度お目にかかれるかどうか! ……まぁそれらに関しては出た時に考える方がいいでしょう」

「狙って出るもんじゃないし、その時のパーティの方針にもよるだろうからね」


「……方針というと?」

「武器なら仲間内で使い回したりもするだろうし。ロランさんみたいに征服を目指すパーティーなら、戦力増強のために売却して貯蓄にすることもあるだろうし」

「うむうむ、魔法書であればパーティ内で回し読みをしてから売ってもいいでしょうな」

「……エリクシルもそうさせると思います。それにしてもパーティで貯蓄なんかもするんですね」

「堅実なパーティであればリーダーが金銭の管理を行いますな。そこまでやるくらいであれば血盟(クラン)の作成も視野にあるのでしょう」


 クランについてはさておき、基本的には方針がどちらにせよ、リーダーが責任をもって売却するという。

 そしてパーティで使用した道具や装備の修繕費を差し引いたあとに分配するという。

 また年季の入ったパーティであれば、装備などの有用なドロップ品は希望者に譲られることもあると付け加えた。


「……わかりました。もう一つ気になるんですけど、前衛が率先して敵の矢面に立ちますよね? 損害も被りやすく不公平感はないんですか?」


 その質問には、コスタンがパーティの構成を例に説明してくれた。


 理想は戦士2、弓士1、僧侶1、魔法使い1であるが、僧侶や魔法使いなどの人材はそもそも貴重だ。

 ※パーティが前衛に偏ることもあるが、その場合は事前に分配割合について取り決めることになる。


 魔術師は強力な魔法で敵を殲滅する力を持つが、回数に限りがあるため使いどころを選ぶことになる。そして僧侶は有事の際の備えとしての役割が大きく矢面に立つことは少ない。

 しかし、どちらもメンバーとして等しく報酬が分配されるという。


 前衛は僧侶がいるという事実だけで立ち回りが大胆に、多少のケガを承知で動ける。

 そして魔法使いがいることで矢面に立たなくて済む機会も得られるだろう。

 ギブアンドテイクの精神でパーティを運営しているのだという。


 ロランはコスタンの説明に納得すると同時に、宇宙でこの弾薬を購入した時のことを思い出す。


 ……この時ばかりは俺の買いだめ癖に感謝しないとな。

 14ゲージのショットガンシェルは1,000発40,000クレジットで買ったものがそのまま残っている。

 5ミリFMJ弾は箱のケース買いだから3,000発はあるんじゃないか?

 1,000発が50,000クレジットだったから、1発は……。


「船で高価であるという話は聞いていましたが、1ルースで2発ですか……」

「威力を考えれば安いよね、補充するのに動力?が必要ってのが難点だけど」


 LAAR(ヴォーテクス) FMJ弾

 ちなみに岩トロール戦に用いた徹甲弾は、FMJ弾のおよそ10倍の値段もする。

 もっとも徹甲弾は動力を消費し船の外装を一部流用し作り替えて製造したため、ショップで購入したわけではないのだが。


「無駄撃ちができるものではありませんけど、命の危険があれば惜しみません。それに弾の節約と修練を兼ねて槍も持ってきていています。……あ、そうだ、忘れずに弾を回収しないと」


 薬莢はすぐに拾うことができたが、弾芯が見当たらない。


金鎚蜱(ハンマーマイト)を貫通して壁に刺さったか?)


 壁に僅かに黒いシミが残っているため弾は相手を貫通したようだが、穴や弾は見当たらない。

 どこに飛んでいったのかキョロキョロとしていると、ラクモが床からへしゃげた弾芯を拾いあげ手渡ししてくれた。

 壁に傷ひとつついていないことを不思議に思いながら、コスタンの話に耳を傾ける。


「槍の修練にももちろん付き合いますとも。……しかし、リーダーである私が言うのもあれですが、全額をロランくんに渡すのも悪くないと思っていましてなぁ」

「うん、僕らがお金を貰うより有効活用してくれそう」

「えっと……お二人はお金は必要ないんですか?」


「今まで通り村で暮らす分には困りますまい」

「だね、特にほしい物があるわけでもないし。ロランさんはポーションを作るのに動力を使ってくれたんでしょ?」

「うーん、今回は確かに動力を使ったのでそれを補わせてもらえるのは有難いんですけど、これからは素材をこのタロンの原生林で集めればいいから元手はかからなくなるし……。それにここまで指南していただいたのに俺だけ総取りはちょっと気が引けるというか……」


 ロランがウンウン唸っていると、同じように思案していたコスタンが指をパチンと鳴らす。


「……では、ロランくんの収支結果に応じて、余剰金が出れば分配するのはどうでしょうかな?」


 コスタンがラクモに目線を移し、同意を得てからロランに伝えた。


「……それは俺たちとしては一番助かります。お世話になった分は絶対に返しますので!」

「ふはっ、もうご飯もお世話になってるし寝床もこれから。トイレだって、すごい経験だった」

「ラクモさんもハマッたようで……」


 ふたりはカラカラと笑いあい、ロランも肩の力が抜けるのを感じる。

 死と隣り合わせの危険なダンジョンで、気を張り詰め続けるのも大変だ。

 適度に"抜く"ことも大事なんだろうな。


「では次はどちらにしますかな?」


 2匹の金鎚(ハンマー)マイトを倒した小部屋からは、またふたつに道が分かれている。


「『右手の法則』でしたね」

「うむ!」


 右の通路を進み小部屋に近づくと、キューキューと可愛らしい音が聞こえる。

 しかし小部屋の中央に座すは、全長2メートルはありそうな毒々しい巨大芋虫だ。

 緑色の体表に赤い縞模様は毒々しさと威圧感を放ち、刺々しい触覚からは髭のような繊維が不気味に生えている。


「うぅむ……(ポイズン)芋虫(キャタピラー)ですな……」

「うげぇ……」


 なんなんだこのダンジョンは、虫の博物館か?

 悪趣味すぎる!


 ロランの頭に警鐘が鳴り響く。

 こういう毒のある芋虫には昔、痛い目を見た覚えがあるんだよな……。

 その記憶と眼前の巨大毒芋虫を前に、冷汗をかいているのを感じる。


「毒の唾や霧、糸を吐く危険な虫だね。肉が厚いから矢では仕留めきれないし、近くでもなるべく戦いたくない」


 ラクモやコスタンでも手を焼く相手のようだ。


「なら……俺のショットガン(ベルバリン 888)の出番ですかね! 威力ならこっちの銃よりもすごいですよ!」


 ロランはショットガン(ベルバリン 888)をガシャンと構え、勇気を振り絞って志願する。

 この悍ましく身の毛のよだつ芋虫を討ち取り、忌々しい記憶を払拭するのだと。


「ほぉ……」

「お手並み拝見」


 ラクモの言葉通り、ショットガン(ベルバリン 888)の威力を間近で見られることに、期待を隠せない様子のふたりから熱い視線を感じる。

 と同時に(ポイズン)芋虫(キャタピラー)が『ギュワッ!』と短く鳴き、身体をビチビチさせているのがみえた。こちらに気付いているわけではないようだ。

 それを見たロランはやや及び腰になりながら、ふたりを振り返る。


「……ちなみに、狙うならどこですかね? あいつの弱点とか……」

「ふーむ、頭部、ですかな……。しかし私は戦うのを避けていましたので実際には……」

「僕が見たのは火球(ファイアボール)で全身吹き飛ばしているのを見たことあるくらい。ドロップ品の絹糸が高く売れてね」

「ファイアボール……」


 ロランはシャーマンの放ったそれの威力を思い出す。

 石を穿つほどの威力、それならショットガン(ベルバリン 888)も有効であろうと。


 ロランはショットガン(ベルバリン 888)を構え、(ポイズン)芋虫(キャタピラー)の頭部に照準を合わせると、一息ついて心を落ち着かせる。

 ラクモとコスタンはロランのやや後ろで見守っている。


「……行きます!」


 ガウンッ!!バッシャッ!!

 ショットガン(ベルバリン 888)の銃口から無数のペレットが勢いよく飛び出し、噴煙が立ち昇る。

 しかし目標の頭部が爆発四散し青緑の体液と紫の液体をぶちまける様を見たのを最後に、ロランの視界は霞んで暗転した。


(うわ、なんだこれ、眼に何か……急に体に……力が……)


「…………ランくん! ………………!! ロ………………ん!」


(叫んでいるのか……? 良く聞こ、えな、い……)


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