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2話

 約一か月後。

 いつもは気が重いお茶会の日を、珍しくエレノアは楽しみに迎えた。


 ドレスはブライアンに、「この前買った紺色にしたら?」と言われていたけど、ほんの少しの変化を付けて灰がかった青を自分で選んだ。


 迎えにきたブライアンになんとなく不機嫌そうに上から下まで舐めるように見つめられた気がしたが、気が付かないフリをする。




 侯爵家の大規模なお茶会に到着すると、ブライアンは早速友人を見つけたようだった。

 エレノアが一緒に付いてくるのが当然と思っているのだろう。

 相談もなくそちらの方向へと連れて行かれる。


「ブライアンじゃないか!すごいな。また呼ばれたのか。」

「まあね。前回のお茶会の後すぐに、招待状が届いたんだ。僕宛にね。まあ大したことじゃないさ。」


 一瞬皆の前でブライアンが買った以外のドレスを着たことの不満を言われるかと思って身構えたが、その前に友人に褒められて上機嫌になる。


 侯爵家で定期的に開催されるお茶会に招待されることは下位貴族にとってはものすごいステータスだ。

 前回はエレノアの両親に届いた招待状だったが、どうしても両親が出られない事情があり、娘のエレノアとそのパートナーのブライアンで参加したものだった。



 今回も両親に代わってもらえないか頼もうか、その理由は何て言おうと迷っていたが、何とブライアン宛に招待状が届いたため、必然的にエレノアもすんなり参加することが決定した。


 前回出席したから、きっと招待者名簿に名前が載ったのだろう。

 子爵家の次男宛に侯爵家から招待状が届く。

 嫡男にすら届かないのに。


 招待状をエレノアに見せにきたブライアンはとても誇らしげだった。




「あれ、エレノアちゃんちょっとだけ雰囲気変わった?ドレスシンプルだけど、なかなか可愛いじゃない。」

「あ、ありがとうございます。」


 ブライアンの友人の一人、伯爵家の令息がドレスを褒めてくれた。


 このドレスは、珍しくエレノアが自分で買ったものだ。

 色は地味だし、シンプルで露出もないけれど、デザインが可愛い。

 スカートの生地が何重にも重なっていて、動くたびにさらりと広がるその様子が好きだった。

 ウエストのラインも、エレノアの体形に合っているのか、いつもよりも姿勢が良く、背を高く見せてくれる。


 この一見地味なドレスなら、ブライアンにも文句は言わないかもしれない。


 そう思って随分前に買ったけれど、勇気がなくて今まで着たことがなかった。

 今日はなんとなく、このドレスを着れそうな、そんな気がしたのだ。


「本当だ。デザインが凝っている。可愛いな!ブライアン。」

「あ、ああ。そうだな。でも、僕の好みではないかな。」



 僕の好みではないかな。


 ブライアンのこの言葉と視線に、エレノアはゾクゾクとした寒気を感じる。


 他の誰も気が付かないだろうけど、これはブライアンのとても不機嫌な時の声だ。

 エレノアには分かる。


 僕の好みではない。分かっているね?


 もう着るなと言われたわけじゃない。

 決して言われてない。

 でももう着れない。


 ブライアンが着るなと言ったわけじゃなくて、エレノアが勝手に着なくなるだけ。

 いつもそう。今回もきっとそう。




「さあ、エレノアもお友達のところへ行って来たら?」


 今日は来て早々に追い出されてしまうようだ。

 ブライアンの友人たちがエレノアの事を褒めるのが気に入らないのかもしれない。


 エレノアに友達などいないことは、ブライアンが一番良く分かっているだろうに何でこんな言い方をするんだろう。


 あれ、おかしいな。


 エレノアはこのことに、初めて疑問を持った。





「エレノア様!お待ちしておりましたわ。」


 まあ良いか。今日は適当なところで、またあの場所へ行ってみる気だったから。

 青年に会ったあの場所に。


 そんな事を考えた時だった。

 可愛らしい声がエレノアの名を呼んだ。


 この方は・・・・確か。

「ソフィア・・・様。」


 なんと、このお茶会の主催である、侯爵家の令嬢のソフィア・リッベン様だった。

 前回突然刺繍を見せに行ったとき、一番最初に声を掛けてくれた優しそうな令嬢だ。


 ソフィア様は、明るいレモン色のセンスの良い可愛らしいドレスを着ていた。

 温かい雰囲気のドレスはフワリと笑うこの少女にとても似合っていた。


 エレノアの住む灰色の世界とは、全く違う世界に住んでいる少女。



「前回は素敵な刺繍を見せていただいてありがとうございます。」


 なるほど、ホスト家の娘として、前回大恥をかいたエレノアのフォローをしに来てくれたのかもしれない。


「よろしければ、私の作品も見ていただけません?ちょうどご婚約者様に離席の許可もいただいたようですし。」

「は、はい!」


 少女との差に少し卑屈になりかけていたが、誘ってもらって、エレノアは一気に舞い上がった。


 やっぱり令嬢の友人がいないことに、寂しさを感じていたのだ。

 声を掛けられて嬉しくないわけがない。

 今ならちょうど、ブライアンにも「友達のところへ行ったら」と言われたところだ。

 引き止められないだろう。



 ブライアンの方をチラリと見ると、エレノアの事をものすごい顔で睨みつけていた。



 でもその冷たい視線の意味を考える事を、エレノアは止めた。

 静かにじっと見つめ返す。


 止めたいなら、ハッキリと自分の口でそう言って。


 そんな気持ちを込めて、見つめ返す。


 ほんのしばらく待ったけど、特に何も言われなかったので、エレノアはソフィアに付いて、その場を離れた。







「あの、どちらに行かれるのですか?」


 てっきり令嬢たちの集まるテーブルへ行くのかと思っていたが、ソフィアは屋敷の中へと入って行った。


 部屋にある刺繍の作品を見せてくれるのだろうか。

 じゃあ他の令嬢は既に部屋で待っているのかな。



 木の下で会う約束をした青年の事が頭をよぎるが、侯爵家の令嬢に誘われたのではこちらを優先しても仕方がないだろう。

 ・・・・後で少しだけでも、寄れたら良いのだけど。



 そうこうしているうちに付いたのは、妙に扉の分厚そうな部屋だった。

 よく音楽の練習などに使用されるものだ。



「やあ、君。来たね。」

「あなたは!!」



 そこにいたのは、前回のお茶会で会った青年だった。

 前回と同じように、動きやすい仕事着を着て部屋でお茶など飲んでくつろいでいる。


 この屋敷の使用人だったのか。

 じゃあエレノアと会ったあの時は、サボっていたのではなく休憩時間だったのかもしれない。



「クリス。エレノアさんを音楽室なんかに連れてきてどうするの?」

 ソフィア様は、クリスと呼ばれたこの青年に頼まれて、エレノアをここまで連れてきてくれたらしい。

 随分気安い関係みたいだ。

 きっと乳兄弟か何かなのだろう。



「とりあえず扉閉めて。極秘の計画だから。」


 言われてソフィアが重い扉を閉めようとするのを、慌ててエレノアが代わる。

 侯爵令嬢に扉を閉めさせるなんてとんでもないと思ったのだが、慣れない扉に閉め方が分からなくて、結局ソフィアが手伝ってくれた。




「さあ、とにかくまずは何か歌ってくれ。ソフィア、伴奏を頼める?」

「歌。・・・エレノアさんが歌うのですか?ええ、伴奏は構いませんけれど。」



 音楽室に置いてある見事なグランドピアノに向かうソフィア様。


「そんな・・・とてもソフィア様にお聞かせできるようなものでは。」


「この前みたいなので大丈夫だから。何でも良い。君の好きな歌で。」

「で・・・ではおやすみくまさんの歌をお願いいたします。」


 仕方なく、有名な子守唄を指定する。

 そうは言われても、使用人の前で歌うのとはわけが違う。

 エレノアは緊張した。



 優しいピアノの音色が聞こえ始めた。



 それに合わせて歌い始めるが、緊張から声が掠れて、喉も狭まって高音がでない。


 どうしよう、せっかく侯爵令嬢様が伴奏してくれているのに。どうしよう。どうしよう。


 焦れば焦るほどでなくなる声。


 その時。


 クリスが、大きな声で一緒に歌い始めたではないか。


 その歌声は・・・・とても下手だった。

 大きな声で自信満々に楽しそうに歌っているけれど、調子も音程も外れている。


 ・・・発声は良いかもしれない。

 お腹からしっかりと声が出ている。



 そんな事を考えているうちに、エレノアは自分がいつのまにか普段通りに歌えている事に気が付いた。

 いいや、普段よりも調子が良いかもしれない。


「つ、次は森の小鳥たちのワルツでお願いします!」


 大好きな小鳥たちの楽しそうに歌うようなワルツ曲を選ぶ。

 ふざけた調子で歌うクリスの様子に、思わず笑ってしまいたくなるエレノア。

 段々楽しくなってきた。


 ソフィア様のピアノに合わせて、クリスと一緒に歌う。

 誰かと一緒に歌う喜びがエレノアの身体を駆け巡っていた。


 ワルツのリズムに合わせて、今にも踊り出しそうに少し体が揺れてしまう。



「次は雪の精霊で。」


 この歌は今までの曲とは少し違って、人間の青年に恋をした雪の精が、精霊である事を隠して会っているうちに、季節が暖かくなって融けて消えてしまうちょっと悲しい歌だ。


 精霊の切ない気持ちを語る部分の高音が、エレノアのお気に入りだった。


 高音に付いてこれないのか、クリスはこの歌が始まると、大人しくなってエレノアとソフィアの演奏を聴いていた。




 パチパチパチパチパチパチ



 切ない歌を、万感の思いで夢中で歌い終えると、クリスとソフィアが興奮したように立ち上がり、拍手をしてくれた。



「すばらしいわエレノアさん!こんなに素敵な雪の精霊、初めて聞きました。」



「決まりだな。王妃様の音楽サロンで披露する歌。」


 クリスが何かを企むように、ニヤリと笑った。









 *****







 いつの間にか、三か月後の王妃様の音楽サロンに出席することが、決定していた。

 なんと音楽サロン当日もソフィア様が伴奏をしてくれることになった。


 エレノアの名前は出さず、ソフィア様の名前で参加の表明をしてくれているらしい。



 ピアノと歌を合わせて練習するために、定期的にリッベン侯爵家へと通うことになる。

 ソフィア様がエレノアの事を気に入って、プライベートのお茶会に呼んでくれているという建前にして。


 ブライアンも、侯爵家相手に文句はないようで、ニコニコと物わかり良く「良かったね、行っておいでよ。」などと言ってくれた。



 ―――やっぱり、ブライアンは良い人なんだわ。


 もしソフィア様と会うことも反対されたらどうしようと心配していたエレノアは、ホッとした。


 私が友人を作るのを邪魔しているなんて考えてたりして、申し訳なかったわ。

 きっと本当にエレノアの事を本心から心配して、派手な令嬢を遠ざけてくれていたのだろう。

 ソフィア様なら派手でもないし、立派な淑女だから友人付き合いして良いのだわ。


 そう思った。





「すばらしいわエレノア!どんどん上手くなるみたい。」


 ソフィア様がそう褒めてくれる。


「本当に。話には聞いていたけれどすばらしいわエレノアさん。まるで天使の歌声のよう。今まで外で歌わなかったのは損失だわ。」


 極秘の練習会は、人前で緊張するエレノアの為に、いつも口の堅い侯爵家の使用人を何人かを観客役に呼んで行われていた。


 そうして徐々に人前で歌うことに慣れてきたころ、一人の優しそうなご婦人が観客に加わった。


 品の良さげなその婦人の事が少し気になったエレノアだが、その穏やかな雰囲気に安心していつも通りに歌うことができた。


「ありがとうございます。」


 エレノアの事を「エレノアさん」と呼ぶということは、それなりの地位の女性なのだろう。

 貴族出身の侍女だろうか。


「ね、話していた通りでしょう?お母様。」


「お、お母様!?」


 ソフィア様のお母様と言えば、侯爵夫人ではないか。


「失礼いたしました!!そうとは知らずお耳汚しを。・・・ああ、私ったら。何かご無礼なことしていないかしら。」

「いいえ、とんでもない。いつもソフィアとクリスと仲良くしてくれてありがとうね。2人ともあなたがくる日をワクワクとして待っているのよ。ソフィアはピアノの練習にとても熱心になったし。素晴らしい歌をありがとう。」


「だって、本当に素晴らしい歌声なんですもの。一緒に演奏するのが楽しくて。」


 ・・・ソフィアとクリスと仲良くしてくれてありがとう・・・・?


 エレノアはその言い方が少し気になったが、きっとエレノアの乳兄弟の青年を、自分の子どもの様に可愛がっているのだろう。

 そう思うことにした。


 侯爵夫人に質問をする度胸などエレノアにはない。





「今日は演奏会で着るドレスを選びに行きましょう。お揃いとまではいかないけれど、雰囲気を合わせるのは大切だわ。ね、お母様。」

「ええ、私も一緒に付いて行っても良いかしらエレノアさん。娘が二人になったようで嬉しいわ。」



「そんな!恐れ多いです。」


 一瞬ドレスの値段のことが気になったが、侯爵夫人が子爵家令嬢にお金を払わせるわけはないと思いなおす。

 それならそれで、侯爵夫人にドレスを買ってもらうなど恐れ多すぎてそっちの方が心臓に悪い。



「良いから良いから。ね、クリス?」

「・・・・・はあ。まあ付き合ってあげなよ。お揃いとかそういうの大好きだからこの人たち。」


 黙って事の成り行きを見守っていたクリスだが、侯爵夫人に同意を求められてそんな無責任な事をいう。


「クリス、困るわそんな事。なんとかお二人を説得してちょうだい。」


 最後の頼みの綱とばかりに、小声でクリスにとりなしてもらうように頼む。


「あらあらあらー。まあ。」


 なぜかその様子を見た侯爵夫人が、嬉しそうに感嘆の声を上げている。


「あの二人、とっても仲が良いのね。」

「そうなのよ、お母様。」


 ソフィア様と楽しそうにしている。


 ・・・・・そうかしら?別に、普通の使用人に接する態度とそう変わらないと思うのだけど。


 確かにクリスは貴族令嬢に対して随分気安い態度かもしれない。

 でもソフィア嬢どころか侯爵夫人にだって物怖じしていないようだし。



「さあ、決まり!さっそく行きましょう。」


 そんな事を考えているうちに、すでにドレスを買いに行くことが決定してしまっていたようだ。


 しまった。ここまでくると、逆に断る方が失礼になってしまう。


 エレノアは仕方なく、先に歩き始めた夫人について行く。



「・・・・・?クリスは一緒に行かないの?」

「ん?ああ。ちょっと別の用事があるから。」


 動く気配のないクリスに、荷物持ちに付いてこないのかと不思議に思ったのだが、なるほど。他の仕事があるらしい。


「そうなの。ではまたね。」


「あら、クリスも一緒に来ても良いのよ?」

「遠慮します。」


 夫人が面白そうに誘うが、クリスは肩を竦めて断っていた。







 *****




 そうやって忙しい日々を過ごすうち、気が付けばブライアンになんと三週間も会っていなかった。


 普通なら友人が多くて予定の詰まっているブライアンにエレノアが何度も打診して、時には決まっていた予定を動かすなどして週に一度は会っていたのだけど、楽しく練習をしているうちにいつの間にか期間が空いてしまったのだ。


 気が付いた次の日がたまたま予定がなかったのでブライアンに手紙で会えないか打診すると、珍しくすぐに会えるという返事がきた。



 ブライアンが買ってくれたドレスに久しぶりに袖を通す。


 最近は。

 特に侯爵家へと行くときは、自分で選んだドレスを着るようになっていた。

 考えてみれば常にブライアンに監視されているわけじゃないのだし。

 侯爵家へと馬車に乗って行くのだから何を着ていてもバレないだろう。


 どうして以前はブライアンがいないところでも、馬鹿正直に紺の服ばかりを選んでいたんだろう。


 そんな事を考える余裕すらできてきた。



 紺色のドレスを着て鏡の前に立つ。


「ふふふ。地味ねー。」

 確かに清楚で品があるけど、礼拝に行くおばあちゃんみたいだ。


 あれだけ気が重かったドレスのことを、笑ってしまえる自分にエレノアは驚いた。




「ブライアン!久しぶりね。」

「やあエレノア。会いたかったよ。」


 先にカフェの席で座って待っているブライアンに声を掛けると、爽やかな笑顔で迎えてくれる。

 ―――私はなんで、この人の事を怖いだなんて思っていたんだろう。


 不思議で仕方なかった。

 なかなかのハンサムだし、いつも穏やかだし。

 たまに不機嫌になることもあるけど。そんなの誰にだってある事だわ。


 こんなに素敵な婚約者がいて私って幸せね。



 その日のお茶はとても楽しかった。

 ブライアンはいつになく優しかったし、ずっと上機嫌だった。

 エレノアも心が軽くて、びっくりするぐらい楽しい時間を過ごすことができた。


「ブライアン。私実はね―――。」


 楽しくお喋りしているうちに、秘密で音楽サロンに出る練習をしているのがなんだか申し訳なくなってしまって、もう話してしまおうかと思った。


 きっと反対なんてされない。

 喜んでくれるはず。



「うん、なんだい?」


 その時、ブライアンの目が昏く光った気がした。

 ゾクリとエレノアの背にイヤなものが走る。


 ドクドクドクドク


 早鐘のように心臓が脈打つ。


「えーっと、そう。先日、なんと侯爵夫人にもご挨拶してしまったわ。」

「すごいじゃないかエレノア!」


 どうしてとっさに音楽サロンのことを言うのを止めたのか。

 エレノアは自分で自分の事が良く分からなかった。





 ・・・そんな事はあったけど、最後まで楽しい時間を過ごすことができた。

 ブライアンは、しっかりとエレノアを家まで送り届けてくれた。



「エレノア。来週の火曜日にまた会えるかい?」

「・・・ごめんなさい。その日はソフィア様とお約束があるの。水曜日はどうかしら。」



「・・・・・・・そう、水曜日は無理だな。また連絡するよ。」

「ごめんなさいね、ブライアン。こちらからも連絡するわ。」



 本当に残念そうにするブライアンに、少し悪い気がしたけれど。

 ブライアンだって今まで何度も友人との先約を理由にエレノアの誘いを断ってきたのだし、大丈夫だろう。


 何の心配もなく、晴れやかな気分でその日はブライアンと別れた。

 まるで何もかもが上手く回っているようだった。


 いつの間にか、エレノアは灰色の世界から抜け出していた。


 憧れていた色とりどりの輝いた世界が、目の前に広がっていた。









 火曜日。



「やあエレノア。迎えに来たよ。」

 爽やかな笑顔のブライアンがそう言ってエレノアを迎えに来るまでは。








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