第六話 アサインとカプセルトイ
スマホのマップを頼りに帰路を急ぐ。
「不思議な地図ですねぇ〜。」
シキはランザンから少し離れた位置を保つ。
『ランザンさん、さっき魔物学者って言ってたよね??』
ランザンは誇らしげに語る。
「そうですよぉ!俺は王国屈指の魔物学者なんですよ!だから仲良くしとくといい事あると思いますよぉ〜??」
シキに近づく。
苦笑いで避けるシキ。
ーーーーガサッ。
「しくった…!」
藍色のモンスターに辺りを包囲されている。
妙な間合いをとるモンスター。シキの棍棒が当たらない間合いだ。
「これは良くないですね。森ゴブリンだから厄介ですよ。彼らこちらの様子を伺ってますね。」
妙な間合いに攻撃ができないシキ。
ランザンがシキの前に出る。
「アサイン!」
ランザンの謎の掛け声と共に樹上にいたドレインスライムが光る。
「スライムシャワー!」
べちゃべちゃべちゃ
樹上のドレインスライムが爆散して、囲んでいた森ゴブリンたちに直撃する。
ーーぐるぎゃあああああぁぁぁ!ゴボゴボ
ゴブリンたちの声がかき消される。
スライムの中でもがいている。
「これで彼らはもう枯れる運命でしょう。」
ランザンは杖をしまう。
「え、ランザン今の何?」
シキもポカーンと突っ立っている。
「これは使役魔法のアサインですよ。モンスターに役割を与えて動いてもらうんですよ。まぁどのモンスターにも使えるわけじゃありませんが。」
やはりここは異世界。ワクワクする魔法があるな、と心躍らせる。
「俺にもできるかな??」
「教えるのは難しいですね…まぁ知り合いに教えるのが上手い奴がいるのはいるんですが、性格に難ありで…」
嫌そうな顔をするランザン。
「アサインって?難しいの??」
「難しいといいますか、ほぼ運みたいなもんですね。魔力や杖の質などにもよりますが、そもそもモンスター側がこちらに協力するつもりがあるか、彼らに最低でも敵ではない認識されないと効きませんので。」
頭に電撃が走る。
「おい!!!!それって形変えさせたりできる?!ドレインスライムとか!」
「教えてくれ!アサイン!」
「わかりました!」
かくかくしかじか、ランザンが教えてくれるーーー
「簡単にまとめるとこうか?モンスターから自分に向けられる意思を感じる。その意思をより大きな意思でのっとる。と。」
人の顔色を伺うのと同じだよね?
「そうですね。」
ランザンが答える。
『シキ、全く理解できない。』
「俺も理解できない。』
顔色を伺うようにスライムへと杖を向ける。
『きゃぁっ!!』
ただのスライムが爆散してシキにまとわりつく。
ランザンは目を丸くしている。
「え…あ、ええぇぇぇえ?!ま、ま、ま、まじですか?!」
「え?これって成功?」
「はい!はいはいはい!成功ですよ!!すごい!!」
正直嬉しい反面気持ちよくない。さすが、元の世界で上司の顔色を伺いまくっていただけはあるな…
『ホビ、最低!!』
シキは怒って帰ってしまった。
さっさとドレインスライムを何匹かアサインしてバッグに詰め込み、シキを追いかける。
「待ってくださいよおおお!」
ランザンもついてくる。
帰宅後、ドレインスライムをカプセルにアサインした。
「もうそろそろ完成するし、明日の朝アイデアの着手に移るか!」
頭を悩ませる。
「んーーーー、やっぱ最初はわかりやすいのがいいよなぁ。スライムキーホルダーとかどうだ??そもそもここってキーホルダーあるのかな。あとスライムってどんな立ち位置なんだろ、俺にとっては可愛いけどな。」
独り言が進む。
「うわぁぁぁ!楽しい!楽しいけどむずい!!何がいいんだろう。英雄卵が流行ってるんだから人形はあるはずだよな…小さい子も楽しめる奴かぁ…」
アイデア探しのため早朝の街に繰り出す。
早朝の冷たい空気が気持ちがいい。普段人が多い広場も数人しかいない。
「んー、気持ちいい!」
背伸びする。
早朝開いてる喫茶店に入る。
こういう時は綺麗なお店でコーヒーを飲みながら一息つくに限る。
「キャハハ!まってー!」
「先行っちゃうからなー!」
子供たちがこの街の学校?に登校してるのだろうか。
「へー、この世界って子供達も剣を持ってるんだな。剣術の練習とかなんかな。」
頬杖をつきながら眺める。
…
ん?!これだ!!
武器に装着できるアクセサリーとかどうか?!
この世界の人にウケるかわからないけどやってみる価値アリだな。
「たしかランザンの杖、こんな感じの綺麗な石使ってたよなー。」
前にシキと外出した時に拾っておいた石を眺める。
「んー、ただこれだけじゃ誰でも手に入るしなー。やっぱ自分も欲しいな!と思うものがいいよな。」
自分が欲しいもの、自分が欲しいもの…宝石とか出てきたら嬉しいけど、高そうだしなぁ。
目の前にあった石をモデリングしてダイヤモンドカットにしてみる。
「お、意外と綺麗じゃん。」
ふと思いつきでその石と木材をさらにモデリングする。
「おおおお!!!めちゃくちゃ綺麗!まるで勇者の剣だな。」
中央に埋め込まれた緋色の石が綺麗に輝いている。木製じゃなければ勇者のそれと見間違えるほどだろう。
「よし!これでいこう!」
お客さんの当てた石をモデリングで埋めてあげることにした。
題して
【英雄の石シリーズ】
うん、かっこいい。のか?
少し自信薄なテーマを紙に書いてカプセルトイマシンに差し込む。
カプセルに石を入れる。
「おおおおお、こりゃまるで緑色のカプセルだ。」
硬さはぷるぷるで、中に指を突っ込んで石を取り出せる。
これならいけるぞ!!!
持っていた綺麗な石をモデリングしまくった。
大体100個を超える数を用意できた。
価格はとりあえず100zだな。石だし。
バズってくれたら嬉しいなぁ!そう思いながらカプセルトイの機会にカプセルスライムたちを移す。
ぽにょんぽにょんぽにょん
中でスライムたちが弾む。
さっそく店頭に置いてみよう!
ーーーしかしーーー
初日の結果といえば、大繁盛。
そんなことにはならなかった。
とほほ、現実は厳しい。
これはこの世界にアクセサリーという文化がないのか、はたまた貴族だけのものなのか。
そもそもカプセルトイというシステム自体を受け入れていない可能性もある。
決心した。ここはセールスマンとして頑張るぞ!
その心ですぐさま冒険者ギルドに赴いた。
「いらっしゃいませぇ!」
受付のサカドが元気に挨拶をする。
「こんちわっす。」
最近外出ばかりしているから結構顔馴染みになっていた。シキは外出中らしいく見当たらない。
「おーい!ホビじゃないかぁ!こんな昼間に珍しいなぁ!今日はシキと遊びいかないんか!」
「遊びじゃねぇよ!!」
ギルドに出張買取に来た材料屋のカゾが絡んでくる。
「おうおう、なんだそれ?そのキラキラした剣は!」
「これ、俺のお店で売ってるんですけどなかなか売れなくて…」
「おおおおお」と、周りの冒険者が集まってきている。やはり装飾品は珍しいのだろうか。
少しこの状況が嬉しくてニヤニヤしてると、最悪なやつがギルドに入ってきた。玩具屋のハゲアタマだ。
「そんなんでどこのガキが喜ぶんだよまったく。ウチの街に変な文化持ってこないでくれよ。それ受けとんねぇからな。」
小声で囁かれた。
「いやぁ、ギルドさん!いつもお世話になっております!ほらこれ、いつもの!皆さんで食べてください!」
わかりやすいゴマスリだな。
こっちも負けじと売りに行く。
「あの!みなさん!こんな感じで石くっつけませんか?!」
さっきまでの反応が嘘のようにだれも声を上げない。
ここは諦めてギルドを後にしようとした。
「おいお前!」
後ろから声をかけられたので振り返ると、青いツンツン頭をした青年に話しかけられた。
顔は綺麗なのだが、柄が悪い。ちょっと怖いなぁと思っていた。
「あのー、その。なんだ、その石、詳しく教えろよ。」
「本当ですか?!」
「おいてめぇ!あんまり大きい声出すんじゃねぇ!」
「す、すみません!え、えっとホビです!よ、よろしくお願いします…!」
「あぁ、名前か。俺はゼビオだ。」
怖い怖い!威圧に押し負けて体がビクついてしまった。だって怖いよこんな柄の悪い兄ちゃんにガン見されてるんだもん!
「早速見せてくれよ、それ、どこにあんだ?」
「こちらです!!」
ゼビオを家まで案内して、カプセルトイの説明をする。
「〜で、そのハンドルを回してもらうと景品が出てきます!」
「あん?こうすんのか??」
ガチャガチャ、ポンっ
説明が終わる前に、もうすでに回していた。
ダイヤモンドカットされた桃色の石が出てきた。
「おおおお!なんか出てきたぞ!!ハハっこれぇ、面白ぇな!お前考えたんか?おおおおお、なんかブニョブニョしてやがるな。おもしろい!この中のやつ取って良いんか?」
先ほどの威圧とは打って変わって子供のような無邪気さを見せるな。
「は、はい!それはゼビオさんのものです!」
「おいおい、ちょっとまて。まじかよてめぇ…」
うわ!なにか怒らせることしたかな?!もしかして「ただの石じゃねぇか?!」とか思われた?!
「これどうやって加工してやがるっ?!これスッゲェな!!!キラキラしてやがるぜ!!!」
ほっ…心臓が止まった気がした。それにしてもゼビオという男、なかなか可愛いな。
「おい、なにニヤニヤしてんだ気持ちわりぃ。早くこれにつけてくれよ。」
腰についた剣を渡される。
「え、これ良いんですか??メイン武器ですよね??」
「あ?当たり前だろ?デコったらモチベ上がんだろ。」
この世にデコとかモチベって概念あったんだー…と思いながら、言われるがまま準備をしに行く。
一応モデリングを使うだけだが、お店の体裁を保つためにカウンターへと持っていく。
「あ、えっと、お好みの仕上がりとかご要望はございますか?」
「ふーん、そんなのもやってくれんのか。おもしれぇじゃん。ここにつけてくれよ。」
剣の中央を指差す。
「わかりました。では早速取り掛かりますね。」
「あ、おい気をつけろよ。それ、ブラックソードっつう高価な武器だから、お前、壊したら分かってんだろうな?」
ひいいいいい!妙な威圧をかけられる。
聞かなかったふり聞かなかったふり!
「モデリング!」
黒く伸びた剣の根本部分にダイヤモンドカットされたピンク色の石が光っている。
「はい、できましたよ。どうですか?」
「おおおおお、こりゃいいぞ!おいおまえ!!」
「ひぃぃい!!」
「これ本当に全部で100円なのか??安すぎじゃねぇのか??」
喜んでいただけたようで何よりだ。
「ふーん、まぁわかったわ。気が向いたらまた来てやるよ。じゃあなー。」
何かわかってくれたらしい。お気に召したようでよかったです。
ぶっきらぼうに店を出て行くゼビオ。
売れたのはひとつ。だけど喜んでもらえて嬉しかった。
ここまで読んでくださり誠にありがとうございます!
もしよろしければブックマークや★よりも、
どんな「カプセルトイ」が異世界にあったら面白いか、コメントで教えてくださると嬉しいです!!
皆さんのアイデアを色々反映させていきたいです!
好きな世界観をたらたら書いていきますが、応援いただけたら嬉しいです。
何卒宜しくお願い致します。