第三話 転勤完了!新たなお家!
眠い目を擦る。
どれだけ眠っていたのだろうか。
ふかふかのベッドが気持ちいい。
ふかふかのベッド?? 違う! これ草じゃん!
ふかふかな草原だった。
雲が適度に浮かんだ青空の下、1人寝ていた。
「あれえー、俺落とされてそれから…」
寝転んだ足元にスライムが寄ってきていた。
「どぅわ! きもっ!」
ここが転勤先の異世界なのか??
そんな呑気なことを考えながら小ぶりな木の棒を拾って周りを見渡す。
ん、ちょっと待て、スライムがいるってことはモンスターがいるってことだよな…
獣道を分け合って分け合ってしばらく歩くと街に着いた。
門には通行所と兵士の詰め所らしき場所がある。
「言葉通じるんかな」
そう考えていると遠くから俺を呼ぶ声がする。
『おおおおおおい! ホビさぁぁん!』
小太りのおじさんが走ってくる。
『はぁはぁ、ぜぇぜぇ。いやぁやっと見つけましたよ! あなたがホビさんですね!」
突っ立った俺を見つめる小太りおじさん。
『あ、失礼申し遅れました、私トトラ不動産のトトラと申します』
「こ、こんにちは。しら星エンターテイメント株式会社のホビです」
『いやぁみつかって良かったですよ! さ、早速街の中へ入りましょ! 身分証はお持ちですか?』
言語が通じてる。さすがは異世界転生!
『この街はねガング王国の中でも比較的大きな街なんですよ。だから結構治安もいいし、綺麗な街だと思いますよ! ホビさんはお目が高いですなぁ! はっはっは!』
そういえば事前説明の時に『住宅はこちらがご用意しますっ!』とかなんとか言ってた気がする。
軽い世間話でこの世界のシステムを学んで歩いていると街の中心にある噴水広場についた。
路面店に囲われて賑わっている。
『さ! あと少しですぞ!』
しばらく歩くと二階建ての家についた。
「おおお! なんか、こう、住宅って感じですね」
『私の持つ物件の中でも指折りの物件ですぞ!』
街の中心から程よく近い。
トトラはあらかた説明を終えると帰っていく。
一階は一面木の床で何もない。
「まぁ最初はこんなもんだよな。とりあえず、内見内見」
二階には布団とキッチン、トイレがあった。
キッチンに持ち物を並べる。
スマホ、木の枝、スライム、以上。
うん、なにもない!
この世界の木の棒はゴツゴツしていた。
好奇心に任せて木の枝を握る。
「ヒノキノボウってこれのことだよな」
もっとこう、刺々しくてかっこいい理想の剣が欲しいところだ。
おもちゃで出すならどう出すかな?
俺だったら上司にこう提案する。
「束がドラゴンの顔になっていて、刃の色はブラック。持ち手は束のドラゴンが吐き出した炎をイメージ。その名もドラゴンソード!」
ちょっとありきたりかな。
頭に理想の剣を思い浮かべた。
ーー液体の音
木の棒は液状に変わり、次第に頭に思い描いた理想の剣へ変化していく。
「なんなんだこれ!!」
くる時にもらったスキルを思い出した。
それの影響なのかもしれない。
だとしたら、俺が思い描いたおもちゃが作れるのでは?!
「けどなぁ、なんか思ってたのより微妙だ」
材質や大きさはその物質に依存するらしい、見た目も適当に想像したせいで「ドラゴンソード?」と、よく分からない形になってしまった
なんでも正確に作れたらそれこそ神に近いスキルだからな。
世の中そんな甘くない。
ーーお腹が鳴る音
お腹が空いてきたな、何も食べてないしな。
「あ、でも俺金ないや…」
給料日は20日締。
こっちの世界のお金は来月から支払われると説明を受けた。
初めにもらったお駄賃でなんとかしなくては。
この世界のエンタメ事情も視察するためアルバイトを探しに出かけた。
「お! ここ良さそう」
街のおもちゃ屋なのだろう。
人が賑わう噴水広場の好立地な場所でとてつもなく繁盛している。
お菓子やお人形、木の剣など様々なおもちゃが売られている。
「ママァ! 買って買って! これ買ってよ〜」
「ダメよそんな高いの!」
親子の可愛い会話が聞こえる。
その中でも一際親子連れが集まる場所があった。
「どれどれ、英雄卵? おお、チョコエッグ的なあれか?」
この世界にはチョコがないらしい。
木彫りの卵が並んでいる。
異世界にしてはなかなか現代に近いアイデアじゃん!
そう思いながら英雄卵を手に取る。
「一個、2500z」
さっき広場を歩いていたときに見かけた焼き鳥らしきものが1串50zだった。
焼き鳥50本分?!
いくらなんでも子供向けでこの小ささで焼き鳥50本分は高すぎるだろ!
人気商品なのだろう、英雄卵には長蛇の列ができていた。
明らかに全員貴族の装いだ。
好きじゃないなぁ、このやり口。
この街の玩具相場を知るためにも働くほかない。
あたりを見まわして店員を探す。
「あの、ここってバイト雇ってますか?」
『バイト? よく分かんないけど、とりま店長に聞いてくださぁあい」
後ろのハゲた親父に親指を向ける。
「ご丁寧にありがとうございます!」
こっちは大人、丁寧に返す。
ハゲアタマに話を聞きに行く。
「すみません、こちらで雇っていただきたいのですが…」
『んん? なになにいきなり話しかけてきて。今忙しいの。見てわかんない??』
「すみませんそこをなんとか! 凄く素敵な商品ばかりだったのでここで働けたらな! と」
わかりやすくゴマをする。
『いるんだよねぇ、そういうやつ。人気だからって、僕の店にあやかってモテようとする輩。正直迷惑なんだよねぇ』
黙れよゼニゲバハゲ。
ツッコミたくなる気持ちを抑える。
「すみません、そこをなんとか…!」
持ち前の営業スキルでゴリ押しする。
この世界にこんな分かりやすい営業をするやつがいないのだろう。
周りの視線が店長と俺に突き刺さる。
店長は少し迷惑そうにすると
『あー、もうわかったわかった。わかったから。何かおもちゃ作ってきてみな。それが良かったらうちで採用してやるよ、だからもう今日は帰ってくれ」
そう言い終わるとそのハゲは俺の持っていた先ほど作った剣に目を向けた。
『これ、本当に君が作ったのぉ? なぁんか君、器用そうじゃないけどさぁ。これと同じクオリティのやつ、毎日持ってきてくれるなら1ヶ月だけ雇ってやっても良いけどねぇ』
相変わらず腹の立つ物言いだ。
けどこんなものでいいのか?
「毎日持ってきます!!」
『採用するけど、時給は900zね。はい、じゃとりあえず代金の受け渡しやってきて』
採用後、即出勤。
異世界に雇用契約書などない。すぐさま現場に入る。
ーーーそしてアルバイトをして1ヶ月が経ったーーー
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