第一話 異世界転勤
帆尾円太29歳。独身。
趣味、カプセルトイ集め、もうアラサー。
東京のエンタメ会社で働くごくごく普通の社会人。
今日も満員電車に揺られて出社しています。
「思ってたより、楽しくないな」
就活を思い出す。
「はい! 私が御社を志望する動機は、御社のエンタメで世界中の人を笑顔にしたいからです!!」
「私の強みはアイデア力です! あっと驚かせるアイデアを出すことが得意です!」
就活生の時はあんなにワクワク、キラキラしていた業界。
6年耐えて、憧れのカプセルトイ開発の部署にこれた。
しかし…現実はそう甘くはなかった。
アイデア勝負なんてものはなく、社内政治がものを言っていた。
ある時は
「課長! シリーズものでどんどんカスタマイズできるカプセルトイとか良くないですか?!」
「んー、アイデアは良いんだけどねぇ。おっと! タイドウ部長! 部長の考えた猫ちゃんスタンプ良かったですねぇあれ! カプセルトイにしましょ!」
またある時は
「ジオラマに使えるミニチュア模型のカプセルトイとか良くないですか?!」
「んー、それ、売り上げ出せるのぉ? 無理じゃない?」
「部っ長! 私がね、私が考えたこの案どうです? いいですよね?! ジオラマに使えるカプセルトイ〜!」
これが社会だ。
仕方がないと割り切れるようになったことは成長なのか…諦めなのか…
ライブにゲームにホビーや音楽…etc
この会社で全てのエンタメに触れたけど、どれも万年平社員のアイデアが通った試しがない。
「エンタメ、好きなんだけどなぁ。」
これはいよいよ俺にスキルがないと思われる。
転職を考えていた。
♢
社長室にて
「帆尾君!」
俺
「は、はい!」
部長
「来月から君は埼玉県に出向だ! 我が社のガチャガチャの売り上げを上げてきてくれたまえ!」
出向命令だ。
この時期の出向はほぼほぼ左遷で間違いない。
とほほ、今月までに退職届出すことが現実になりそうだ。
「あー!いっそのこと異世界にでも転勤してぇえええ!」
疲れたままとぼとぼと歩いて駅に向かう。
電車に乗ると、運良く前の座席が空いた。
座ると体から力が抜けていく。
ぷしゅ〜
「次はぁ〜、$|€*、$|€*〜。お出口は右側でぇす」
「はっ?!」
ミスった! 乗り過ごしてしまった!! どこだここは?!
外の景色は暗闇で、周りに乗客は乗っていない。
「え?! おれひとりだけ?!」
地図アプリを開いても位置情報が反応していない。おいおい起こしてくれよ駅員さん。
「夢だとしても怖いな…こんな感じの意味怖あったよなぁ〜」
「$|€*〜$|€*〜」
着いたみたいだ。
発信するまで席に座ったままでいる。
しかし
ドアは開いたまま、なかなか出発しない。
「え、なに…?」
外のホームに誰かいないか確認しにいく。
降りた途端電車は走り出した。
降りた場所にはホームなんてものはなく、目の前には暗闇の中に一本の道が続いている。
その先に部長室のドアがあった。
やっぱこれ夢じゃん。もうトラウマになってるよ。
ドアノブに手をかけて中に入る。
「失礼致します!」
この期に及んで万年平社員の癖がでてしまう。
「はぁい、本日は遠くからお足元の悪い中ご足労いただき、誠にありがとうございますねぇ〜」
羽の生えた麗しい女性が座っている。
「あ、そこの席にお掛けくださーい」
言われるがまま席に着く。
「はいじゃ、本日はね、異世界人事部にお越しいただきありがとうございます。私、担当のヘレスと申します。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします。」
何が何だかわからない。
「えぇ〜帆尾さんはね、異世界への転勤をご希望ということで、まずは簡単な自己紹介からおねがいしまあす。」
訳がわからない。
自己紹介? バカにしてんのか?
しかし、さすがは万年平社員。
挨拶には慣れている。
「しら星エンターテイメント、第2カプセルトイ開発部課長補佐の帆尾円太です! 本日はどうぞよろしくお願いします!」
商談での自己紹介は慣れっこだ。とっさにいつものやつが出る。
「はい、ありがとうございます。それではね、異世界にいく死亡動機を教えてください」
、、、死亡動機? 異世界?
「はい! 私はエンタメで異世界のお客様に笑顔を届けたいです! ですので、異世界転勤を希望します!」
ここまで読んでくださり誠にありがとうございます!
もしよろしければブックマークや★よりも、
どんな「カプセルトイ」が異世界にあったら面白いか、コメントで教えてくださると嬉しいです!!
皆さんのアイデアを色々反映させていきたいです!
好きな世界観をたらたら書いていきますが、応援いただけたら嬉しいです。
何卒宜しくお願い致します。