裸婦になれたら
とある女子大生の現実視点から見る避難口。
授業が始まるときに鳴るチャイムの音がいつも気になる。
そう、長年聞いてきた音程とは多少どころではなく、かなり違うのである。
機械も音痴なやつはいるんだと、納得せざるを得ないが、心にどうも引っ掛かる。まるで、鍵を閉めたのに何回でも確認しに行きたいが時間に行き先へと背を押されているようだ。
歯痒い。もどかしい。
あたしにはどうしようもないことなのに、いつかの耳に定着した音程どうりのあの音が、メロディが、どうしようもなくあたしに訴えかけているようだ。
むずむずする心も体も、全て脱ぎ捨てて主張したい。
しかし、そんな衝動はお昼に行ったカフェで流れたジャズによって流された。なぜたら、決まらないながらもあたしの心を落ち着かせるその存在に絶対的なものを感じたからである。
チャイムが音痴だろうがあたしは生きていけるじゃないか。勝手にしてくれ。
自分に諭されたあたしは学校に戻り、授業を受けた。午後の昼下がりは日差しが心地良いものである。
そして、夢をみた。
あたしは絵を描いていた。
真っ白な肌をした裸の女子を一生懸命描いている。
そして筆を取りながら、あたしもこんな風に誰かのモデルになりたい、なんて自己陶酔している。
チャイムの音で目が覚めた。
あたしの手にはシャーペンが握られていて、目の前には裸婦でなく、禿げた男性の後ろ姿があった。いや、女性だったかもしれない。
目の前にあるもの全て鞄に突っ込んで教場を出た。
全て。
全てをさらけ出せる体だったら、心だったら、文章だったら、あたしはもっと輝けるのに。
そんな昼下がり。