第十一話 動機 ~クズで何が悪い!!~
二度目のダンジョン探索の翌日、鍛練が終わり、皆で一緒に食事をしているとき、俺はかねてから、皆に尋ねたかったことを尋ねてみることにした。
「みなさんは何故冒険者になられたんですか?」
皆の食事をする手がぴたりと止まった。ヴィルガさんがにやにや笑いながら言った。
「へえ、ようやくそれを訊く気になったのね。」
ミュレーズさんは、にこにこ笑っている。ナンジョウさんが薄い笑みを浮かべながら、言った。
「面白い」
いや、全然、面白くないです。こちらは一世一代の決心で尋ねたんですよ!
「それじゃあ、まず、私から話すわね」
ヴィルガさんが話し始めた。
「私の父は考古学者でね、その研究テーマはずばりナガ帝国よ。私は子供の頃から、父にナガ帝国について、聞かされて、育った。父の跡を継いで、ナガ帝国の研究に取り組み、その謎と解き明かすことが私の夢。冒険者なったのはね、ナガ帝国が征服地に残した遺跡の中で、跳び抜けて重要な存在である墓所にもっとも身近な職業だからよ」
なるほど、ヴィルガさんにとっては研究のためで、墓所に潜ること自体が目的なのか。お父さんがナガ帝国を研究する考古学者か。ナガ帝国について詳しいわけだ。
「じゃ、フェリシー、次、よろしく」
「私は画家志望なんです。それで絵を描く十分な時間が取れる職業を探した結果、それにもっとも適していたのが冒険者だったんです。ダンジョンに潜って、収穫があれば、それによって、十日から三十日の間は、暮らしていくことができます。危険はありますが、私はこれほど、余暇を多く取れる職業を他に知りません」
むう、一日働いて、十日から三十日の休暇。収穫が死体漁りということを考慮しても、かなり、魅力的に聞こえる。フェリシーさんのマッパーとしての卓越したスキルは、絵描きさんとしての能力に負う所が大きいのかな。画家には非常に込み入った絵を記憶して、すらすら書く人とかいるもんなあ。
「カエデさん、次、お願い致します」
「私の親は武芸者で、子供の頃から武芸を叩き込まれて、育った。武芸で身を立てるには大別して、二つの方法がある。武芸を生かせる仕事に就くか、武芸を教えて、金を取るか。後者はそれなりの武名が必要なので、私には無理だった。武芸を生かせる仕事も大別して、二つに分かれる。武を振るう相手が人間か否かだ。私は人を傷つけることを望まなかった。それで冒険者になることを選んだのだ」
なるほど、子供のころから磨き続けた武術スキルで生計を立てようと思ったが、人を傷つけるのは嫌だから、冒険者となって、魔物と戦うことを選んだと。
俺は三人とも、確固たる意志と動機で冒険者となったことを知り、借金の返済のために、無理やり冒険者にさせられた自分が恥ずかしくてたまらなかった。しかし、ここは恥を忍んで、話さねばなるまい。俺は派遣冒険者として、このパーティーに加わることになった経緯を話した。
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははは」
ヴィルガさんは文字通り、腹を抱えて大爆笑している。そこまで笑わなくてもいいのに。俺は心が折れそうだった。
「いやあ、なんというか、すがすがしいまでのクズっぷりね」
「やかましい!」
そこまで言わなくてもいいじゃないか。ミュレーズさんは困ったような顔をしている。ナンジョウさんは呆れている。やばい!心がやばい!
「まあでも、この仕事はギャンブルのような側面があるから、あなたには向いているかもしれないわね」
「そ、そうですか……」
「でも、あなた、ギャンブル運、全然ないようだし、命を賭けるのはおすすめできないわね」
「……ほめているんですか、けなしているんですか」
「あはははは、ま、今後ともよろしくね」
「よろしくお願いいたします」
「よろしく」
「え、あ……」
俺の過去を知られることで、皆に軽蔑されるのが怖かったが、皆の態度は以前と変わらない。本当にうれしく思った。
「よろしくおねがいします!!!」




