誤った村長
村長が出てきた。僕と僕を起こしにきてくれた人は残っている。あれ、村長の隣に二人女の人がいるぞ。
「あの二人は誰でしょうか」
「村長の妻と娘だ」
「毎朝一緒に来るんですね」
「そうだな」
「関係はいいのですか」
「見た限りだと、良さそうだぞ。けれど、この時は村長しか話さない」
ほぉ、それは意外だ。
「あ!なんで二人しかいねぇんだ!」
村長が叫ぶ。
「僕が帰っていいって言ったからです」
「お前を信じるわけがねぇ!お前は昨日きたばっかだろう!」
「初めに僕の隣の人が僕の作戦を聞いてくれました。そしたら、村人の皆さんも従ってくれたんです」
「は!村人だけじゃ野菜しか食べれないくせに!また俺に従うようになるだろうな!」
「僕が肉と魚を配りました。数日間村長の前に姿を見せることはありません」
「な、なんだと!」
「村人達の評判を悪くしすぎましたね。今の状況がわかりませんか?これは暴動ですよ」
「ぼ、暴動だと!」
「はい。では、またいつか」
「おい!まだ話は終わってないぞ!」
僕は村長の話を聞かずに自分の家へ向かって走る。
もちろん隣の人も一緒だ。
「おい、ここからどうするんだ」
「村長は僕の家へ来るでしょう」
「そうなるな」
「そこで、村人達全員で村長を追放します。村の中に入れないようにするのです。
僕が村長を拘束して柵の外に追い出します。あなたは村人達を呼んできて村長が拘束を抜け出して村の中に入るのを防いでください」
「今の生活は変わるのか?」
「村長も村人達の苦労がわかったら変わると思います。村長が村の外で野宿できるかわかりませんけど。その時はその時考えましょう」
「わかった。お前にかかっている。失敗したら俺達みんな追放だ。だから頑張ってくれよ」
「わかってますよ」
僕達は二手に分かれる。
さて、これで僕の独壇場の完成だ。
僕は自分の家ではなく魔人の家に入っていた。魔人も朝の集まりに来ていたから、僕の作戦は知っている。
「ちょっと嘘ついちゃいましたね」
「なんの嘘ですか?」
「人気者になるという嘘です。僕は人徳のある人を利用しただけですからね」
「そんなに自分を卑下しないでください。それで、村長が私達の家に来るとはどういうことですか?」
「村長は魔人を嫌っています。さらに、暴動を起こしたのも僕、魔人です。村長は魔人を追放しようとするでしょう」
「そんな。追放はダメなんです!娘がいます!魔人は人間より圧倒的に強いです。でも、食べ物がないと生きていけないんです!あなたを信頼した私が馬鹿でした!」
「まだ話は終わっていません」
「なんですか!」
「村長を追放するのです」
「え?」
「村長が肉や魚の取引の権利を握っているなら、村長を追放すれば肉や魚をうばえるんじゃないですか?」
「でも、村長が追放されたら取引先に疑われます」
「村長が変わったと伝えれば良いでしょう」
「なるほど。作戦はおおよそわかりました」
その時、村長の声がした。
「おい魔人!お前らが暴動を起こしたせいで、村人達が言う事を聞いてくれなくなったじゃねえか!どうしてくれんだ!表でろ!」
「もう、話してる時間はないですね。では行ってきます。」
僕は家から出た。
「お前!どうしてくれんだよ!お前!」
「落ち着いてくだ---」
村長が何かかけて来た。村長との距離は三メートルくらい。避ける事もできたけど、避けなかった。
ジュウ。焼ける音がする。これは、聖水か?
「お前の天敵の聖水だ!これを受ければ魔人の体は溶けるんだろう!」
右腕で防いだから、右腕がドロドロになって溶け落ちた。
「ははは!醜いな!その姿が魔人にはお似合いだ!」
「そうですか。では、拘束させてもらいます」
生物魔法 蜘蛛の糸
僕は体中から蜘蛛の糸を出して、相手に巻きつけた。
「な、なんだこれは!」
「村長さん、あなたを追放します」
僕は村長を担いで村の外へ走る。
村の外に出た。村長が喚くから持っていくのが大変だった。今片腕だし。
「今からあなたの娘と妻を連れてきます」
「俺達家族全員追放するつもりか!この魔人め!」
「そんなわけないでしょう。追放するのはあなただけです」
「そうか!お前の言いなりにはならない!早くこの拘
束を外せ!」
「いえ、それはできませんね。二人を連れて来てから解放しましょう」
「おい!」
僕は村の中にまた入って、村長の娘と妻を連れてきた。腕の事を聞かれたが、村長にやられたと言われたら怒涛の勢いで謝られた。
「連れてきましたー」
「父さん!何をやってるの!この人は同じ村人だよ?」
「だからなんだというんだ!こいつは魔人なんだ!」
「あなた、もうやめて!この人は腕を失ったのよ!」
「魔人だからいいだろ!」
「聞いて呆れますね。あなた、今どういう状況かわかってますか?」
「お前が暴動を起こしたところだろ!」
「ふふふ。もう次の段階へ行ってますよ。最後に言い残すことはありますか?」
「どういうことだ!」
「先程その発言を聞きましたが、それが最後の言葉になるんです。とても滑稽ですね」
斬撃魔法 空気の調理師
僕は村長を調理するように切断した。四肢を同時に。
「ぎゃあああぁあぁ!!!」
「断末魔が聞けて良かったです」
最後に頭を落とす。
「村長を殺しました!」
僕は惨劇を目の当たりにした二人に話しかける。
「いゃぁぁぁあぁ!あなた!あなた!」
「お、おまえええぇぇええぇ!!!」
村長の妻は村長のところへ行き、娘は僕へ向かってくる。
「僕の腕を奪っておいて無事で済まされると思っていたんですかね。僕の腕を溶かした時から戦闘は始まっていたんですよ」
僕は二人に話しかけた。二人の動きが止まった。
「で、でも殺すことなかったじゃない!」
「腕を奪われたんですよ?まぁあなた達は巻き込まれただけですからね。復讐も終わったし、あなたを殺してあげてもいいですよ」
「なんで私が!」
「夫を愛していたのでしょう?死んだ瞬間に寄りかかったところでわかりました」
「そ、そうよ!私は愛していた!」
「あの人のところへ行きたくないですか?」
「そうね。ここで嫌と言っても選択肢はないのでしょう?なら殺されます。だけど、娘だけは殺さないで!」
「そんなの嫌だよ。お母さ---」
「わかりました。では、いってらっしゃい」
僕は村長の妻を殺した。今度は首だけ落としたよ。苦痛がないようにね。
「お母さん!おまえぇぇえぇえ!!!」
娘がこっちに走ってくる。腕を振りかぶって殴ろうとしているな。
「なんでお母さんを殺した!お母さんにはお前に何もやってない!なんで!」
「なんとなく寂しそうだったからですよ。そして、あなたは生かします」
「くそがぁあぁぁあ!!!お前なんか殺してやる!!!」
「ああ、いいですね。あなたの殺意の目。大好物です。あ、そうそう僕の腕のダメージは気にしないでくださいね。すぐ治せるので」
僕は敢えて詠唱して唱える。
「復元魔法 自由自在なおもちゃ」
僕の腕が元通りに治った。
「お前!!!すぐ治るじゃないか!!!なんで父さんも殺したんだ!」
「気に入らなかったからですよ。ああいう性格の人は一度信じてもまた裏切る。そして、もう一つ魔法を唱えます」
「抹消魔法 記憶の終焉」
「な、なにをした!!!」
「あなたの父親と母親の存在がみんなの記憶から消え
ました。あなたには魔法をかけませんでしたけどね」
「どういうことだ!!!」
「そこは親子で似ているんですね。記憶の終焉は人々の記憶からその人物の存在が消えます。そうですね。あなたは前の村長の養子。あなたは拾われた存在になったはずです。今はあなたが村長だ。評判を良くしときましたよ」
「は?」
「あ、魔人を差別しないでくださいね。攻撃したら攻撃が返ってきますよ。魔人は元々人間より圧倒的に強いのです。子どもが僕の山に登れるほどに」
「山?ま、まさかお前は!」
「復讐するなら僕にしてくださいね。待ってますよ」
僕は光と同化して自分の山に戻った。
いぇーい!僕への復讐心を燃やしてくる人が作れた!これで僕の人生ももっともっと面白くなる!嬉しいなぁ!
あの子は殺さない約束なんでね。たとえ、村に住んでいる魔人を殺しても殺さないよ!だってねぇ、お気に入りは壊したくないじゃん!ふふふ。これから楽しみだ!