迷いの人々
僕は村長の家へ向かって歩く。村人達はやはり僕と目を合わせようとしない。少し寂しいな。
村長の家についた。どーしたらいいんだろう。ドアを叩けばいいのかな。コンコン。
「こんにちはー」
「あ!話しかけるなと言っただろう!もっと食料を搾り取られたいか!」
「えっと、この村に初めて来たんですけど」
「あ、お客様でしたか。すみませんね。住民達が野蛮なんでこういう言い方をしないと聞かないんですよ」
ドアが開いた。
「うわぁ!魔人だぁ!俺たちを遂に殺しに来たのか!言っただろう!そうしたら娘の命はないと!」
「何も存じ上げておりませんが。僕に娘もいませんし」
「そうか。本当に何も知らないんだな?」
「はい。危害を加える予定はありませんよ」
「ふぅー。驚かせるなよぉー」
「すみません」
「さて、聞きたいことがある。お前は何しにここに来た?」
「ここに住みたいのです」
「わかった。では家を貸そう」
「そこまでされなくても…」
「気にしなくてもいい。村に住むことになった者には家を貸しているからな。先代からの慣習だ」
「では、いいのですか!ありがとうございます!」
「ああ。君と同じ生物がいる家の隣に住め」
「何から何までありがとうございます!」
「おう」
ドアが閉まった。僕は魔人の家へ歩き出す。
甘い話には悪い部分もあるものだ。
僕の予想だと、家を貸す代わりに農作業をしてくれということなのだろう。畑が家の近くにあるからね。
家の中に(ごめん!伝え忘れちゃった!)的な文があるのかな。
野菜を村長の家へ持っていって、村長が村人に肉や魚を等しく分け与えるというのがここの社会なのかな。村人は畑しか持ってないからね。
循環してていい制度だと思う。だけど、その制度は村長が優しくないと成立しない。
村長が独り占めしたり、自分の持っているものを出し渋ってしまうからだ。信頼で成り立っていたため、村長への不満は今最高潮だろう。
そろそろ暴動が起きてもおかしくない。少し疑問に思うんだけど、娘の命はないとはどういうことなんだろう。追放するからなくなる?少し引っかかるな。
予想を頭に並べていたら魔人の家についた。報告しないとね。ドアを叩く。
「こんにちはー」
「あ、さっきの魔人さん」
「これから隣に住むことになりました!」
「あ、よかったですね」
「では、よろしく」
僕は報告を終えた。そして貸してもらった家に入る。ボロボロだな。差別していると丸わかりだ。案の定、家の中には立て札があって、農作業をするように書かれていた。
さて、ここからが僕の作戦だ。とりあえず明日住民の様子を見る。僕の予想が正しければ、野菜を持っていくはずだ。
---次の日---
「おーい!新入り!起きないか!」
家の外で声がする。まだ空が薄暗い。なんだよもう。僕は身なりを整えて家から出る。住民の人が呼びに来てくれていた。
「はーい。起きましたー」
「もうみんな集まってるぞ!」
「どういうことですか?」
「村長が起きたら家の前に村人全員集まってないといけないんだ!早く来い!」
「わ、わかりました!」
僕達は走っていく。
「わ!みんな集まってる!」
「だから言っただろう!やばいぞ!村長が起きてたらやばいぞ!」
少しドキドキしたが、村長の姿は見えない。これなら僕の作戦が伝えられるかも。
「あ、まだ起きていないんですね」
「そうだな。ふぅよかった」
「僕を呼びに来てくれて大丈夫だったんですか?」
「見られてないなら大丈夫だよ」
「そうなんですか。では、ちょっと聞きたいことがあるんですが」
「なんだ?」
「村長に不満はありませんか?」
「あるに決まってるだろう。みんな思ってるぞ」
「僕に作戦があるんですけど」
「作戦?」
「はい。みんな野菜を持ってますよね。野菜を持ってこなかったらどうですか?」
「それだったら俺たちの肉や魚はどうなるんだ?」
「僕があげますよ」
「そうか、ならそれを先にくれたら従ってやるぞ」
「ありがとうございます」
「それじゃあそれはどこにあるんだ?」
「ここにあるんですよ。僕のリュックは魔法のリュックなので」
僕はリュックから出そうと手を入れて収納魔法を使って肉類をリュックから出した。
「おぉぉ!赤身肉じゃないか!美味しそうだ!村人分あるんだろうな?」
「ありますよ!」
「おし!おーい、こいつががっつりするものをくれるそうだぞー!」
隣の人が集まっている人に話しかける。そしたら、続々と人が来た。信頼されているな。
それから僕はみんなに配って作戦を伝えた。みんなはわかってくれた。そして、それぞれ家に戻って行った。さて、どうなるかな。