人間の心の香り
よろしくです!
こんにちは。突然だけど自己紹介させてー。
僕は復讐家。名前の通り復讐を生業にしているよ。
僕がやっていることは復讐。復讐と言ってもほとんどの人には関係ないことだ。
だけど、世界には恨みを持った人間がいる。自分の力ではどうしようもできない!あぁもう無理だ!そんな時に僕が手を貸してあげる。復讐の手助けをするんだ。
この仕事は良いものだよ。人がどんなことで妬むかがわかる。人間観察に最適なんだ。気持ちに浸るのが大好きな人におすすめだよ!同業の人は見たことないけどね。
「今日も人が来るかな。暗い目を携えて」
僕は今、山の頂上にいる。標高は7000メートルくらい。
僕が魔法を使っているから、この山は一年中緑に包まれていてぽかぽかしている。木はなくて小さい草が山の肌に生えていて、暖かい空気を風が運んできてくれるんだ。
雰囲気が明るいのが心に刺さるんだよね。こんな長閑な時も僕の人生にあったのかなって。
おっ誰か来た。どんな物語を持ってきたのかな。
「こんにちは。君は誰?」
「なんだろうな。ここに来たかったというか来てしまったというか。暖かいなぁ。お前は俺を救ってくれるのか?」
「内容にもよるけどね。さあはやく!話を聞かせて!」
「どっちから話したらいい」
「もちろん、君がなぜ噂程度にしか広まっていない僕の存在に救いを求めたかだよ」
「そうだなぁ。長くなるがいいか?」
「大歓迎!」
「どこから話したものかな。ここまで落ちぶれてしま
った経緯からにするか。まず、俺は貴族だ」
「おぉーお偉いさんだ!」
「そうだな。追放されたお偉いさんだ」
「ほほぉー。そこに君の物語が詰まってるんだね」
「まぁな。俺たち家族は仲が良かった。本当に愛し合っていたんだ。
だがある日、事件が起こった。民の暴動だ。俺たち貴族に武器の矛先が向けられて、家族は皆死んでいった。なぜ!なぜなんだ!なぜ人間はあそこまで残酷になれるんだ!」
「そこで君はどうしたの?」
「逃げてきた。何もかもを失い、何もかもを見捨ててな。
お前は復讐の手助けをしてくれるんだろ?その噂を思い出してな。
俺はもう顧みるものもないし、やることも何もないからな。どうせならこの世界に爪痕を残していきたいと思ってこの山を登ってきた」
「はぁーすごいよ君の執念。思いつきで山を登っちゃうんだもん。魔法は使った?」
「使ってないぞ。というか、魔法を使えないようになってただろ」
「まぁ、そうだね。頑張った者には平等に助けてあげたいからね。ついでにいうと、この山頂にも結界があるよ」
「その辺の話はいいから、とりあえず復讐してもらいたい者がいる」
「それは誰かな?」
「王だ」
「どこの王かな?」
「ここから北にあるマーマレード国の王だ。オレンジが名産地でオレンジ畑がたくさんあるぞ。建物もオレンジ色だ。小さい国だけどな」
「王様なんて、ねぇ。君が恨む理由は何?」
「王が法律を考案したんだ。亜人撤廃法という残酷な法律をな。
理由はわかる。亜人は魔物と見られることが多いからな。でも、俺の家は亜人を使用人にしているから、この法が成立したら亜人が殺されてしまうんだ。それに、亜人は人間だ。同じ人間なんだ。
亜人を守るために俺の家はこの法が施行されようとしていると民衆に知らせた。紙をばらまいたよ。街全体に」
「ふむふむ。それで王様が民の怒りを買ってしまったと。そういうことだね。そこからどうなったの?」
「俺の家に罪をなすりつけられたんだ。王様が法律を考えたのはこの貴族だ!って言ってな。
そこからは地獄だった。民が俺の家を襲ってきたんだ。俺の父と母は殺され、大切な弟も今どこにいるかわからない。生死もわからない。俺はどうしたら良い?」
「復讐するためにここにきたんじゃないの?」
「そうだな。そうだった」
「今回の復讐は難しそうだね。僕一人でやっても良い?」
「いいぞ。あいつを殺してくれるなら」
「よかった。なら、君の時間を止めるね。君を長く待たせたくないんだ」
「そんな手厚いサービスもあるのか。ありがたく受けさせてもらおう」
「じゃあ、始めるよ」
時間停止魔法 止まる正の流れ
君の体が動かなくなった。さて、王を殺しに行こうか!
僕は光速で動いた。ここかな?
僕は空からその国の近くきた。うわぁ。畑がいっぱいだ。建物もオレンジ色で鮮やかだなぁ。
空から一人見つけた。降りて情報を聞こう!
「こんにちは。この近くに宿はありますか?」
「あるが、あの国は今行かない方がいいぞ」
「なんでですか?」
「お前知らないのか」
「田舎から来たので知らないです!」
「それじゃあ、金と交換だ。この国の情報を教えてやるから、お前の持ってる金と交換だ」
お金いるの?そんな僕弱い見た目してた?今はちょっと諍いを起こしたくないからお金あげるよ。
「わかりました」
僕はリュックから財布を出して相手に投げる。
「お、わかってるじゃねぇか。それじゃあ教えてやろう。
この国の名前はマーマレード。最近暴動が起きたところだ。
王族の親戚の貴族がな、王族に亜人撤廃法をお願いしたんだ。
この法律は国にいる獣人、魔人、魚人その他の亜人を処刑する法だ。
その情報が民衆に漏れてな。もう大騒ぎだ。亜人達は憤慨して、その貴族が住んでいる家や土地を襲撃した。
悪い貴族は亜人達によってなぶり殺しにされたらしいぜ。
あ、そうそう。その貴族の内の一人が逃げたようだからお前も気をつけろよ。背中から刺されるぞぉ」
「王様はその貴族をどんな処遇にしたんですか?」
「貴族の権利の剥奪。財産全没収。そのくらいだ。」
「あれ、思ったより少ないですね」
「亜人達によって殺されてたからな。王様が気づいたときにはな」
「なるほど。情報ありがとうございます」
「いいってことよ」
男から情報を聞き出せた。
これは亜人の姿の方が王族に見つかりやすいかな。今の話題の人だからね!ちょっと姿を変えようか。
変身魔法 心を思い描く体
猫耳がついていて尻尾もある獣人スタイルに変身した。色はどっちも赤色。他のところは人間と同じ肌色だよ。あ、瞳は赤にしたよ。
平凡くらいの見た目だ。
この魔法は完全に体を作り変えることができる使い勝手がいい魔法だよ。
マーマレードの中は暴動が起きたとは思えないほど賑やかだった。王様の手が早かったのかな。
冒険者ギルドに向かうことにする。
冒険者ギルドは一つの国に一個はあって、冒険に関わることを扱っている場所だ。
依頼を達成するか、魔物を倒して素材を売り、お金を稼ぐことができる。
冒険者ギルドの建物は専用の紋章がどこかについているんだ。剣と杖がクロスしているマークが見つけられたらその建物は冒険者ギルドとわかるから便利だ。
昔、緊急依頼を出す時に冒険者ギルドがどこにあるかわからなくてその結果多くの人が死んだ悲惨なことが起きた。それを教訓に冒険者ギルドはマークを作り上げた。
ここにきた理由は、楽しく有名になれるからだ。色々な人がいるし、戦うことも僕は嫌いじゃない。
僕は冒険者ギルドに入った。中は賑やかだった。内装は木でできていて、丸いテーブルと椅子が何個か置かれていた。そこに冒険者が座り、冒険譚を話している。
そこで僕は違和感に気づいた。亜人と人間が別れて話しているのだ。亜人は亜人と、人間は人間と。法律を聞いたからかな。僕にはあまり関係ないことだ。
「どうもー」
「はーい。あっ獣人さん…ですね。読み書きはできますか?」
「できますよー」
「ではこちらへ行ってください」
ギルド員が登録窓口の方に手を向ける。
「わかりました」
この国のギルドは入ってからすぐにギルド員に案内された。いつもなら窓口に並ぶだけなんだけど、この位置にギルド員がいたのは初めてだ。
やっぱり復讐はやめられない。いろんな経験ができるから。
「こちらは亜人用の窓口です」
「なんで窓口が分けられているんですか?」
「今この国ではデリケートな問題があってですね。亜人達を恐れている人間が窓口を分けたいと冒険者ギルドにたくさん言い募られまして。分けてあるということです」
そういうことだったのか。んーでも疑問ができるな。
ここまで仲悪いのは何故なんだ?
「こんなギスギスしてるのってなんでですか」
「先日暴動がありました。亜人達が貴族を倒したんです。その影響で亜人が増長して、何でも自分の思い通りになる!と思っているんですよね」
「なるほど。というかこの僕にその話していいんですか」
「なんか優しそうだったので」
「えぇ〜」
一目で判断してしまうか。僕は優しい人間になったのかな。
「このまま頑張っていってください」
「ありがとうございます。それでは説明をします。あなたはここを利用されたことがありますか?」
「ないです」
本当はあるけど。
「では、ご説明しますね。ここは看板にも書いてあった通り、冒険者ギルドと言います。
冒険者とは魔物と戦って素材を手に入れたり、依頼を達成したりしてお金を稼ぐ職業です。
これが冒険者カードです。ここにランク、得意なことを書きます。ランクとは冒険者の強さを判断するための指標です。Fから始まってAが一番高いです。噂ですとSランクもあるみたいですよ」
へぇ。Sランクは聞いたことなかったな。
「発行したばかりの人はFランクです」
「飛び級とかあるんですか」
「事例はありますね。ドラゴンを狩ってきて、いきなりCランクとかですね」
「ふむふむ。では今からドラゴン狩りに行ってきます!」
「いやいや待ってくださいよ。そんな簡単なことじゃないですし。自殺行為ですよ」
ドラゴン。体長は人間の十倍くらいが平均くらいだと思う。最強のモンスターと知られていて、狩るのにはAランク冒険者が束になっても難しい。
「有名になりたいんです!」
「有名ですかぁ。有名になったら二つの道がありますね。一つは王族の護衛騎士になる。王族直々にスカウトしに来ますよ!二つ目は冒険者のままで生活する。
ほとんどは護衛騎士になりますね。給料が安定して入ります」
僕は前半の目的で来たからな。
「有名になったらの話ですからね。あなたが超強いかもしれないし。もしかしてサイン取っといた方がいいですかね?」
「いや本人に話しても困りますよ」
中々面白い人だな。
「失礼しました。でも、危険だと思ったことはしないでくださいね。これは忠告ですよ」
「わかりました」
「では冒険者カードを作ります。あなたの年齢は何歳ですか」
「何歳に見えますか」
「どう答えても失敗する問題を出すのやめてもらえます?」
「的中したら怒りませんよ!」
「そんなリスク高いことするわけないじゃないですか!」
「ふふふ。わかりました。15歳です」
「聞き取りました、15歳ですね?」
「はい」
「では得意なことはなんですか?」
「王族達はどんな能力が好きなんですかね」
「鮮やかなものが好きなんじゃないでしょうか。王城もキラキラしていますし」
「では鮮やかな能力が得意ってことで」
「んー抽象的ですね。わかりました」
「あ、名前はなんですか」
「秘密です」
「秘密ですか、ではそう書いておきますね」
「あ、秘密でいいんですか」
「隠したい人もいますからね。それに、得意なことがわかればある程度はどこの依頼がやりやすいかわかりますし」
「よかったです」
「では、少々お待ち下さい」
あ、並んでる亜人はいないかなと思って後ろを見てみる。一人も並んでなかった。
亜人達調子乗ってるからなぁ。だから窓口の人も信用してくれたのか。僕はここにいる亜人とはちょっと違うと分かったんだろう。
並んでない亜人は何をしてるのかな。もしかして監視?自分たちの中から人間側につかないように?そうしたら自分たちで人間との隔たりを作ってることになるな。寂しいね。あ、亜人と目線が重なった。
「発行終わりました。はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「依頼掲示板はここから右に行ったところにあります」
「魔物を狩るつもりなので大丈夫ですよ」
「おーけーです。他の亜人達があなたに注目しているので気をつけてください」
「おーけーです」
「真似しないでください」
僕はギルドから出ようとする。予想通り、亜人から話しかけられた。
「おい、お前こっちに来い」
「なんですか、今忙しいんですけど」
「なんでてめぇ冒険者登録をした。なんで人間の下につこうとする」
「下ではないですよ。平等な関係です」
「ふん、いずれ知るようになるだろうよ。人間の残酷さってのをな」
そんなの前から知ってる。嫌と言うほどに。
「そうなんですか。ご忠告ありがとうございますね。では行ってきます」
そう言って僕はギルドから出た。
マーマレードの中から出て黒いドラゴンの住処についた。僕の住んでいる山の近くにいるからね。僕の家畜のようなものだ。ドラゴンは僕の存在知らないけど。
さて、ここで僕の秘密を一つ言いまーす。僕は動物の言っていることがわかるのです!
「やあ」
(なんだお前は、なんで人間がこんなところにいる)
「それは秘密」
(食われるだけの人間なのに愉快なことだ。では、餌になってもらおう)
抹消魔法 記憶の終焉
(む、お前何をした!)
「魔力の流れを感じ取ったんだね。この魔法はみんなから忘れられる、悲しい魔法だよ」
(なんだと!そんなことはない!おい、お前ら餌だぞ!)
「ごめんね。そんなこと言ったって無理なんだ」
他のドラゴンが近づいてきた。ドラゴンは翼で仲間かどうか見分けるんだ。僕にはどの翼も同じに見えるんだけどね。見たことない翼のドラゴンがいたらどうなるかな?
(ドラゴンがいるぞ!)
(なんで、なんでこんなところに知らないやつがいるのよ!)
(仕方ない!戦うぞ!)
ドラゴンは動揺している。
(お前らずっと一緒に暮らしてきたじゃないか!)
(お前みたいな翼なんて見たこともない!大体、なんでここまで侵入できた!ここは俺たちの縄張りだぞ!)
(なんでだ!なんで誰も知らないんだ!俺の艶のある黒い翼だそ!大切な!大切な妻からも忘れられたのか!おのれ人間!よくも!)
「君はこれから仲間だったドラゴンに襲われるかもしれない。どうする?」
(愛し合っていたのに!おのれよくもぉ!よくもおおおおおお!)
「ほぉ、僕に向かってくるか。その選択は恨みから来たものだね。心の叫びが聞こえたよ」
僕は木刀をリュックから取り出す。そして、襲ってきたドラゴンの上に飛び乗って首を叩く。ドラゴンは気絶した。
1日は何が起きても目を覚まさないようにしたからね。君の絶望を聞かせてもらったよ。
やっぱりいいなぁ。悲痛な声は。魔物を狩るときはこれを聞かないと楽しさが半減するよね。
他のドラゴンに見つからないようにこのドラゴンを持って隠れる。僕は力が強いからこんなのへっちゃらさ。
(あれ、あいつどこに行った!)
(襲われなくてよかったわ)
ふふふ。
もう一回同じ魔法を使う。これでこのドラゴンの存在を知っている人は僕しかいなくなった。さて、これをギルドに持っていこう。
収納魔法 なんでも入る不思議な箱
箱と名前についているけど箱が出てくるわけではないからね。なんでも入れられる空間を持っている感じだ。容量はたくさん入るくらい。たぶん無限だよ。
生物無生物どっちでも入る。対象の大きさも制限なしなんだ。便利だね!
僕はドラゴンを空間に入れた。
実を言うと、この住処に来たのはドラゴンを減らすためだ。ドラゴンが増えると人間に住処がバレちゃうからね。討伐されたら、他の家畜を探さなきゃいけなくなる。
さて、ギルドに帰ろう。
ギルドの中に入る。ドラゴンを倒したことを報告するよ。
ギルドを出てから三十分くらいしか過ぎていないから、信じてくれるか心配だ。
「あれ、忘れ物ですか?」
「いえ、魔物を狩ったのでどこに置いたらいいですか」
「え、冗談でしょう」
「本当ですよ。ふふふ」
「いや、私は信じれませんね。一応?解体場に案内するのでついてきてもらっていいですか?本当だったら私が信じないとあなたの評価はされませんからね」
「ありがとうございます」
解体場についた。
「あ、そういえば忘れてました。魔物はどこにあるんですか?」
「それはこのリュックの中に」
「初めてですからね。まぁそのくらいの大きさでしょう。期待なんてしていなかったですよ?」
僕はリュックから何か出す動作をしてドラゴンを持ち上げる。ドラゴンを片手で掴んでそっと床に置いた。
「えええええぇぇ!!」
「これどうしたらいいですか」
「なんでそんなに落ち着いているんですか!」
「そんなこと言われても」
「ドラゴンですよ!ドラゴン!しかもドラゴンの中でも強いブラックドラゴン!これは大ごとになりそうだ!単独で倒したんですか!」
「そうですよ」
「えぇぇぇえええ!凄いですね!」
「そんなに褒められても何も出ませんよ」
「これは今すぐにもAランクにあげたいですね。だけど、倒した証拠がありませんね。ブラックドラゴンなら市場にたまに出ますしね。うーんどうしよう」
「模擬戦とかどうですか?Aランクの人と戦って勝ったら証明できますよ」
「それいいですね!ぜひそうしましょう!」
「僕が聞くのもおかしいですが、なぜそこまで僕を信じてくれるんです?」
「私が信じないとあなたの伝説は始まりませんから」
「なるほど、面白い人ですね」
解体場からギルドに戻る。
「連絡でーす!ここにAランクの人はいますかー!」
3人くらいが返事をした。
「そしてこの人と戦いたい人はいますかー!」
僕を指さした。
二人座って一人だけ残った。僕が亜人だから、何をしでかすかわからないんだろう。Aランクなのに慎重だね。
「報酬は?」
「そうですね。ドラゴンの素材を全部あげますよ」
その条件僕聞いてないんだけど。僕が倒せる前提なのかな?んふふ。やっぱりこの人面白い。
「よしわかった。それでは君!手合わせ願いたい!」
「僕の方から頼んだんです。もちろんいいですよ」
闘技場にやってきた。中央は円形のステージになっていてまわりを階段になっている席がぐるっと囲んでいる。
観客はちらほらいる。みんな闘争が好きなんだな。
「ルールを確認します。制限時間は十分、武器や魔法は何を使ってもいいです。相手が気絶したら勝ちです。この闘技場は結界があります。結界の中にいるときにはどんな攻撃を受けても死ぬことはありません。そして、この結界は破れない設計なので、全力を出していいですよ」
「わかりました」「わかった」
「さて、双方準備はよろしいですか?では、はじめ!」
「ハンデだ。君はFランクなのだろう。一発打ってもいいぞ。俺はドラゴンよりは強い。怖気ずに突っ込んでこい!」
「では、遠慮なく」
控えめにするけど。
「レインボーファイア!」
僕は七色の火を放つ。なんで詠唱したかだって?弱く見せるためだよ。複雑な理由はない。
「おぉ、綺麗じゃないか!でも、僕の剣には敵わないね」
男は剣を縦に一閃する。すると七色の火が消え去る。おぉ。やるね。
「君の攻撃は終わった。次は僕からいくぞ!」
男が駆け出してくる。
うーんどうしようかな。わかりやすくて派手な方がいいと思って七色の火にしたんだけど思ったより相手が強かった。
これは相手Aランクの猛者だな。次はこれを使おうか。
「ライトシュート!」
僕は光の玉を打ち出す。光の玉は相手に当たった。
「綺麗でも、威力がなければそれは魔法ではない!芸術品だ!」
男が剣を突き出してくる。細くて当たったら痛そうだ。
「それは百も承知です」
僕に剣が当たった。しかし、剣は僕を貫かなかった。
「な、なんだこれは!僕の剣が!」
剣が木の棒になっていた。どうなったと思うかな。
実は、細い剣は僕が盗ったんだ。手順は、まず自分の後ろに自分の残像を出す。
そして、ライトシュートを放つと同時に僕は光と同化。細い剣を盗って木の棒を空間から出して持たせた後に僕は残像の位置まで戻ったというわけだ。
「何をした!いや、それを聞くのはだめか。降参だ。剣がなければ俺は何もできない」
「勝者!えーとなんて言いましょうか。Fランクの人!」
観客にざわめきが起こった。
よし、これで僕の噂は広まるだろう。ここからどうなるか楽しみだ!
ーーー三日後ーーー
僕はCランクになった。Aランク相当の力があるのに何故Cランクかというと前例がないかららしい。
このことはギルド員も謝っていた。僕は噂を広めるために頑張ったんだからいいんだけどね。
そして今日、王族の人がギルドに来る。ギルド員が推薦状を書いたらすぐに返事が来たらしい。
いくらなんでも早すぎるんじゃないかな?王族なんて忙しいし。王族は亜人というところに目をつけたんだろうな。
近くに亜人が入れば今の国勢も良くなり、亜人も亜人が護衛だと攻撃しにくいだろう。僕の存在は一石二鳥というわけだ。
ちなみに、ギルド員は推薦状を書いていいか聞いてきたよ。僕は良いよって言っといた。
お、兵士が続々とギルドに入ってくる!きましたきました!
「おい!ここにドラゴンを倒してAランクの者を倒した奴はいるか!」
「僕です」
「そうか。第三王女様がお呼びだ。ついてこい」
「わかりました」
ギルドの外には馬車があった。オレンジ色で中が見えないようにオレンジ色の窓がオレンジ色のカーテンで閉められている。
オレンジずくめだな。
僕は馬車に乗り込む。中には兵士が二人いた。
「王女様に失礼のないようにな」
「はい」
僕は三日間調べ事をして過ごしていた。
この国のことについてだ。中から国の情報を詳しく知りたかったからね。
僕が仕入れた情報によると、王族が亜人支持派と亜人追放派に分かれているらしい。第二王女、第三王女、そして王が亜人支持派。第一王女、第一王子が亜人追放派のようだ。
僕は王が亜人追放派だと思っているけどね。そうじゃないと、あの法律を考えた意味がわからないからだ。
この情報は亜人達から聞いたよ。亜人は王族や貴族の行動を知りたいからね。自分達を殺す法を作らないか逐一観察してると伝えてくれた。
僕が思考に耽っている間に、王城が見えてきた。ギルド員が言っていた通り、オレンジ色にピカピカしている。
僕は門から中に入り、そこで馬車を降りる。兵士について行き、エントランスに入った。巨大なシャンデリアにオレンジ色の火がついている。綺麗だ。
「おい。どうかしたか」
「シャンデリアが綺麗ですね」
「この国の象徴のオレンジ色を使っているからな。さぁ、いくぞ」
「はい」
僕は客室に案内された。そこには亜人支持派の王様と第三王女がいた。うーん僕礼儀作法知らないよ?
「どうも、呼ばれたのでここにきました」
空気が少しピリピリする。あれ、なんか失礼だったかな。
「お前、誰に向かっての物言いだ!あのお方達に謝罪しろ!」
兵士が謝罪を求めてくる。
「よい。下がれ」
王様が発言して、兵士を下がらせる。
「お前がドラゴンを倒した冒険者だな?」
「はい」
「では、お前を護衛として雇いたい。賛成してくれるか?」
「もちろんです!」
「お前が了承してくれてよかった。今我達の国は人間と亜人に大きな隔たりがある。
そこでお前の出番だ。王族には亜人がいないから、亜人と仲良くしようということを我達で体現しようかなと思ってな。
王族は民の先を行く者だ。そう我は思っている。亜人と人間が仲良くしているところを民が見れば、この隔たりもなくなると思案したわけだ」
「なるほど。とても聡明な考えですね!」
「そうだろう。突然のことで申し訳ないが、お前は第三王女の護衛についてもらう。何、深い理由などない。同い年だからだ」
「はい!」
「では、よろしく」
「よろしくお願いしますね!第三王女様」
「よ、よろしくお願いするわ」
「あとは、ルナ、お前に頼みたいことがある」
「なんですか王様?」
「この冒険者と馬車で国を回って欲しいのだ。亜人と人間は仲が良いと知らせるためにな」
「わかりましたわ」
「では、これで会談は終わりとする」
僕は、他の護衛四人とルナ様と一緒に第三王女様の部屋の前に来た。
「失礼のないようにと言っただろう!この馬鹿者が!」
「すいません」
「そんなに怒らないであげて兵士さん達、亜人は私達と同じ人間なんだから」
ルナ様は優しい人だった。王族でここまで優しいのは珍しいな。
「さっそく私は準備するわ。亜人さんも来て?」
「は、はい」
「なりません!そんな野蛮な奴を自分の部屋に入れるなど!」
「なら、貴方達も一緒にどう?」
「むむむ。いいでしょう!」
護衛達と一緒にルナ様の部屋に入る。
「ここなら誰も見ていないから、貴方達も気張らなくて大丈夫よ?」
「いえ、私達は仕事中なので」
「それはわかってーーー」
「ルナ様、貴方を殺す仕事があります」
なるほど。そういうことか。
「な、なんで私が」
「王様のご命令です」
「なんで!なんで私が死ななきゃならないのよ!」
「王様のご命令です」
「いやあああ!!!」
「では、死んでください」
四人の護衛が詠唱を唱える。
え、僕にも打つの?僕に罪をなすりつけようとしてる?いや、ここで死ぬわけにはいかないんでね。この護衛達も殺さないけど。
「「「「ファイア!」」」」
四人同時のファイアが襲ってくる。その刹那、僕は言った。
「ルナ様、あなたは幸運ですね」
「どういうことなの!」
轟々と燃える火球を僕は手刀で消した。そして、護衛達の意識その流れで奪った。ここからだな。
「ルナ様、貴方は僕について行きますか?」
「もう何が何だかわからないわよ!」
「王様はあなたを殺そうとしました。それでも、あなたは王様を信じますか?それとも、同族の僕を信じますか?」
「えっ。それってどういうーーー」
「時間がありません。答えてください。あなたはどっちについて行きたい?」
「わ、私が生き残るには、あ、あ、あなたについていく他ないのね。ならば、あなたについていく」
すごいなぁ。この状況なら誰も信じられなくなってもおかしくないのに。
「承りました」
「では、案内してくれませんか?」
「ど、どこへ?」
「王様の自室まで。ここで決着をつけましょう」
「わ、わかったわ」
僕らはそこまで歩いていく。
「実は、第二王女様もこの状況に陥っています」
「お姉様は大丈夫なの!!!」
「大丈夫です。僕がなんとかしときました」
「姿を見るまで安心できないわ!お姉様はどこなの!」
「自室の前で会えますから」
「本当ね!」
「本当ですよ」
王様の自室についた。ここまでに兵士や使用人とは誰一人会わなかった。王様が人払いしたのだろう。自分の子供の死体が発見されないために。
第二王女と出会った。
「お姉様!よかった!!」
「大丈夫だった?」
「うん。王様が私達を殺そうとしたことが悲しいけれど」
「辛い思いをさせてごめんね。でもここからはあなたも知らないといけないことだから。行こうか」
「わかった」
「あのー僕もついて行きますね」
三人で王様の自室に入る。
王様が僕達の姿を見てびっくりしている。
「な、何故お前達が生きている。あいつらはAランク級の奴らだぞ!」
「僕が全部倒しました。あとはあなただけですよ」
「ぐ、ぐぎぎ」
ぐぎぎって言う人初めて見た。
「お、お前達がいけないのだ!遠征であいつと出会った。行為もした。だけどあいつは亜人だったのだ。俺は気づかなかった」
気づかないことある?耳も尻尾もあるよ?相手がローブで隠してたのかな。
「あいつが亜人だと数年後にわかって、すぐさま現地へ行って殺した!なのに!俺に隠れてお前達双子をもう産んでいた!
俺は!王族としてお前達を迎えないといけなくなったのだ!くそが!」
なるほど。王族の血が混ざったものは王族になる。それが、遠くの地で出会った者だとしても。
「そ、そんな、昨日までの父さんに戻ってよ。ねぇ、ねぇ!」
「お前達が亜人として産まれた!俺は亜人を作ってしまったことが怖かったんだ!だから、お前達の尻尾を切り落とした!」
亜人と人間の子供。どこが引き継がれるか微妙だったが、二人は尻尾を引き継いでいたみたいだ。亜人と人間の子供でも亜人と見られるんだな。
「なんで、なんでそんなことをしたの!」
「俺は亜人が大っ嫌いだからだ!お前らが亜人は魔物だ!魔物なんだ!」
ああ、やっと理解できた。つまり、こういうことだろう。お前は自分が愛していた人が亜人だとわかった。
亜人は魔物と同じだと考えているお前は、愛していた人が魔物と分かって殺した。なかなかいないぞ。こんなクズ。愛していた人の秘密を知って殺すなんてな。
「聞く価値もないな」
「は?」
「お前は、僕の両親と同じような人間だったよ」
ナイフを向ける。
「さよなら」
「お、おい!ちょっと待ーーー」
ザシュ。ナイフが刺さる音。
水魔法 泡沫の歌声
血液の中の水分が無くなっていく。数瞬の後、王様は血が固まって死んだ。
「復讐完了だ」
僕は王様の首を切り取っていく。
そして、二人に話しかけた。
「君達はどうしたい?」
「私達はこの罪を公表して、この国を引っ張っていく」
「そうかぁ。じゃあここでお別れだね」
「「え?」」
「僕の任務は完了したんだ。もう帰還するだけだよ」
「あなたは伝説のーーー」
「そんなところだよ」
「そうなのね」
「では。さよなら」
抹消魔法 記憶の欺瞞
この魔法は僕の存在が相手は思い出せなくなるんだ。
助けてくれたけど、なんかモヤモヤしてわからない。名前も姿形も知っていたのに。そんな忘れてないけど覚えていると言ったら少し違う状態になる。
これで僕の存在が広まることはないね。
僕は山に戻ってきた。
まだ止まっている男の魔法を解く。
「ん、ここはどこだ?」
「寝ぼけているのー?僕だよー?依頼完了したよー」
「え?」
僕は王様の首を見せる。
「こいつだよね?」
「あ、ああ!そうさ!ぎゃはは!いいざまだな!」
「復讐完了だ」
「あれからどれくらい経ったんだ?」
「4日くらいだね」
「体感だとあっという間だな」
「そうでしょ。これで復讐は終わりだ。君はこれから何をしたい」
「この世界にもう望みなんてない。大切な家族はみんな死んだ。俺は家族のところに行くよ」
「弟さんはどうするの?」
「弟も死んでるだろ。きっとな。でも会ったら俺のことを話してくれ」
「わかった。ではいってらっしゃい」
僕は木刀を手にする。
「いってきます」
男の首を切った。
はぁー今回も面白かったね!どろどろだったよ!特に姉妹が絶望するところが僕と重なったなぁ。やっぱり人間はこうでなくっちゃね。
最後になんで依頼者を殺したかというと、気に食わないところがあったからさ。さぁ次は誰と会えるのかな!